第1話「始まりの日」
それを地球が感知したのは突然だった。
突如地球圏内に現れたその未確認飛行物体は物凄いスピードで地球に降下。
それを追い掛けるように複数の反応が降下して来た。
地球の衛星を人がいようがいまいが問答無用で破壊して同じく地球に降下する。
更に大多数の反応が月へと向かった。
これが地球にとって、試練の時の幕開けでもあった。
☆
とある県の地方都市「神月(しんげつ)町」。
田舎でもなく、大都会でもない。
何処にでもある普通の街。
そんな代わり映えしない日常を何だかんだで楽しく過ごしていた自分達。
しかしそんなある日も崩れ去ってしまう。
キッカケは銀色の巨大宇宙船が学校の裏山に不時着した事から全てが始まる。
念の為書き記しておくがこの世界は21世紀初頭。
宇宙船どころか宇宙進出も地球の衛星軌道上に行くのも多額の金を掛けて成功するかどうかと言う科学技術の水準の世界だ。
突然空から全長1キロメートルオーバーの宇宙船が墜落など非常識過ぎる。
銀色の長い楔形で尖ってる方が船の先端、底辺付近に艦橋らしき構造物がが聳え立っている。まるでSF映画の世界から飛び出た様なデザインだ。
もしこれが人類の手で作られた物ならばそんな技術があればとっくの昔に宇宙進出しているだろう。
それ以前に船体の彼方此方から煙を噴き出していてあまりのインパクトに一見すると墜落したように見えたが実は墜落だろう。
と言うかこんな質量の物が大気圏から勢いよく墜落したらちょっとした戦略兵器と同じぐらいの被害を周辺にもたらすだろう。
スグ近くにある歴史だけが取り柄のボロい神月高校など原型止めずにバラバラに吹き飛ぶ。
自分――秋月 怜治は腕を組みながらレンズ越しに呆然と学園から巨大戦艦を眺めていた。
上空では自衛隊の戦闘機が飛び回っており、校内放送では避難指示の呼びかけが行われていた。
この先どうなるのやらと思いつつも怜治達は避難指示に従い一旦運動場に避難する筈だった。
轟音。
閃光が自衛隊機を貫いた。
同時に如何にも悪そうな――昔のセンスの一つ目の赤いモノアイの悪役ロボットメカが降り立って来た。
手には閃光――恐らくビーム兵器だがレーザー兵器を発射する物を持っている。
それも複数。
量産機だろうか?
続いて戦艦から巨大ロボットや銀色の円盤が出て来た。
円盤はともかく巨大ロボットのデザインも洗練されたデザインで純白、女性的なフォルムのツインアイ、腰まで伸びた髪の毛までついている。放熱様の物だろうか?
大きなビームの大剣を持っていてとても格好いい。
『聞こえますか地球人の皆さん! 今すぐこの艦に避難してください!』
白い機体から女性の声が響いた。
いや、突然そんな事言われてもどうしていいか困るのだがと怜治は思っていたら追ってきた白い機体の敵らしい赤いモノアイメカが校舎や街に無差別攻撃を始めて来た。
「どうやら選択肢はないみたいだな――」
「あっちょっと怜治!」
どう言う訳か自分は落ち着いている。
自分と親しい中の友人達が一緒に付いて来た。
校舎を出て、裏門に出て校舎の裏山へと出る。そこに巨大なハッチが開いていて宇宙服なのだろうか? 白い宇宙服を着たゆるキャラぽい二頭身の丸っこい頭のクマ?が「こっちだ!」と誘導して来た。手には古典的なSF銃を持っている。ビームでも発射出来るのだろうか。
「他にもまだ人が残っているのか?」
と艦に入る直前に尋ねて来た。
「ああ。まだ沢山いる」
「どうして来ないのだ?」
「どうしていいか分からないんだ」(日本語通じるんだ・・・・・・)
釣られるように大勢人が来ていて避難作業はよくも無く、悪くもなくと言う状況だ。
突然の事でどうして良いのか分からないのだろうと思った。
上空での戦いの方は劣勢だった。
現在進行形で街も破壊されている。
これを見て何とも思わない程怜治は冷めた人間では無かった。
「ちょっと付いて来てほしいのだ!」
「あっちょっと!!」
何だかトントン拍子で壮大な何かに巻き込まれて行っているのを感じながら怜治は宇宙服を着たクマ達に案内された。
☆
一キロメートル近くの船内だ。
移動には時間が掛かるため、電車の様な交通機関が内部にあった。
そこは例え様のない広さを持つ場所だった。
居住区らしき場所やら動物達が放牧されていたり、作物が植えられている場所もあった。
そしてロボット達や宇宙円盤が置かれている格納庫をも通り過ぎた。
何が何だか怜治には分からなかった。
「凄い・・・・・・」
「これが宇宙船の中・・・・・・」
一緒に紛れ込んで付いて来た怜治の友人達も言葉を失っている。
だが爆発音やら何やらが聞こえている辺り、この船は戦場の真っ直中にいるんだなと嫌が上でも思い知らされる。
そうしてやっと目的地に辿り着く。
「ここは何なんだ?」
宇宙服を着たクマに尋ねる。
巨大なガラス窓の向こう側には大きな空間が広がっている。
「兵器製造工房なのだ! 今から突貫でロボットを製造するのだ!」
「ツッコミどころ満載だなおい!」
プラモ感覚で作れと言うのかこのクマは?
流石の怜治も他の面々も呆れた。
だがクマは真剣なようでコンソールを叩く、そして座席に誘導してチューブが付いたヘッドギアを持って来た。
「僕達では強力なロボットは作れないのだ。だが地球人の君達ならきっと協力なロボットを作れると思うのだ」
「はあ――どうすれば?」
「これを被ってイメージするのだ。そうすれば勝手にやってくれるのだ!」
「デタラメにも程があるんですけど!?」
「そう言う物なのだ。出来上がった完成図のデーターにこのパネルへデーター入力すれば更なる改良も出来るんだけど今はそんな時間ないのだ。早速始めるのだ」
「戦闘に巻き込んで置いてその現地の住民を戦いに参加させるとかどう言う神経してんだおのれら・・・・・・」
「言いたい事は分かるのだ・・・・・・だけど頭の悪い僕達にはそれしか方法が思いつかないのだ」
「うっ」
このクマ意外と可愛い。泣かれると中々心に来る物がある。
取り合えずは物は試しと言う事で作ってみた。
本当にロボットが出来るのだろうか。
おそるおそるヘッドギアを被る。
そして――
(何だこの感覚は?)
不思議な感覚だった。
安らぎすら感じる。
白い空間にいた。
――聞こえますか地球の子よ。私は光の御巫。
脳内に温かな女性の声が聞こえる。
(光りの御巫?)
――ロボットを作り、この船の動力源となっている存在です。
(は、はあ・・・・・・)
とんでも展開が続いて頭がショートしそうになる。
――大体の事情は分かりました。もし戦う勇気があるのならば・・・・・・この船の子達を守って欲しいのです。
(て、言われてもなぁ・・・・・・)
んな覚悟、一介の高校性にあるわきゃない。
即決出来るとしたら逆に胡散臭いと言わざる終えないだろう。
――分かっております。今ならばまだ・・・・・・
(だけど乗りかかった船だ)
しかし怜治は断った。
(それにこのまま訳も分からずヤラレっぱなしで殺されるのも嫌だしな。分かった。その頼み受け容れるよ)
――そうですか・・・・・・では最後に一つだけ。例えどんなに強大な力でも、それが世界を滅ぼす力であってもどう使うかは最後は人の意志が決めるのです。
それを忘れないでください。
(分かった――)
そうして目覚める。
どれぐらいあの白い空間にいたのだろう。
目覚めるとガラス越しの眼前には巨大ロボットが一体建造されていた。
俗に言うスーパー系だ。
黄色いV字のアンテナ。やや顔からはみ出るぐらいの大きなゴーグルマスク。
胴体には緑のラインに球体のデッパリ。
円形の大きな方に腕の円筒系のアームカバー。
下半身と足の接続部はアーマースカートで覆っている。
青、白、赤のトリコロールカラー。
足は円筒タイプ、昭和のロボットとかによくあるタイプだ。
近接格闘型のスーパーロボット。
名前はバクファイガ―。
大きさは二十mぐらい。
こうして見ると、とても恥ずかしい。
何しろ小学生の頃に考えたロボットなのだから。
そして自分はこれに乗って戦えと言うのだ。
頭の中には操縦方法から戦い方までハッキリと分かる。
これが異星人脅威のテクノロジーと言う奴だろうか。
だが頼み事を引き受けた手前、それを反故にするのは義理じゃない。
どうせならもっと違うロボットがよかったなとか思いつつもバクファイガーに乗った。
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