第22話「愚か者達」
安藤 ユーイチはマジ切れ寸前だった。
三百隻の敵はもう眼前にまで迫っている。
新しいメンバーの教育とかは仕方ないとして問題は日本政府だった。
日本の政治家連中は碌に判断も下さないまま、自衛隊を使ってペガスの周辺を取り囲んでいた。
神月町の住民は怒りを通り越して呆れ果て、世界中はこの政府の奇行に愕然としたが、日本の政治家と言うのはぶっちゃけ選挙で勝って某国のご機嫌さえ取れれば暮らしが保証される職業であり、日本のマスコミを上手く使って批判繰り返していれば選挙に勝てる(と思っている)ため、政治家達は気にはしなかった。
表向きはペガスの警護と言っているがようは監視である。
船体の上空をマスコミのヘリや自衛隊のヘリなどが飛び交っている。もしも変な動きをすれば自衛隊のパイロットや民間人に衝突して被害が出る配置だ。
何かあれば罪をペガスと自衛隊に被せる気満々だった。
中には我が物顔で乗り込んで来た議員先生達まで来て、どうにか曖昧な表現を使って代表者であるリミルに「和平交渉出来ないか?」、「我々の言う事を聞いてくれれば支援してやるから技術提供して欲しい」と持ち掛ける始末だ。
もうすっかり前回の戦いで危うく大量虐殺or植民地化されかけた事を忘れているらしい。
リミルはぶち切れていいとユーイチは思っている。
今もリミルは馴れない外交交渉に悪戦苦闘していた。
リミルも正直外交関係を他の人間とかに任せようかなと思ったが、セイン人の大半は元々荒事には向かないタイプの気性であり、中々これと言った人材がいない。
セイン人の事情で地球人に任せるのも筋違いだし、それに安藤 ユーイチとかに任せると間違いなく日本との関係が悪化する。
だが最近リミルも無理して日本と言う「国」と友好関係を築かなくても良いんじゃないかと思い始めていた。
何度も語った通り、セイン人とドーマ人の争いに巻き込んだのは自分達である。
だがその後の対応は幾ら何でも非常識過ぎるからだ。
指導者達から自分達の国のために戦おうと言う気概が感じられないのだ。
その辺りツッコンで指導すると慌てて話題を切り替えてシロモドロになるため、最近ではそう言う「交渉云々以前の問題」の政治家さんは適当にあしらっている。安藤 ユーイチの入れ知恵でちゃんと会話の内容を全て録音した。
(本当はこんな事している暇なんて無いのに・・・・・・)
本当なら既に迎撃態勢を整えなければならない。
にも関わらず日本政府は全力で邪魔してくる。
このままではこの星に初めて来た時の悲劇が繰り返される。
一方で日本政府は全容解明出来ているのが本当にいるのかと言うぐらいに勢力図が入り乱れていた。
前政権の与党やその支持政党は基本和平交渉派。
野党は徹底抗戦派が主流であり、支持率は野党のが上だ。ちなみに野党の中にはマスコミの偏向報道や執拗な批判で与党の座を引き摺り降ろされた政党も混じっている。
前政権、旧左田内閣は日本国内だけでなく世界から批判を浴びており、政治活動云々以前に物理的に生命が危うい立場にすらなっていた。
理由は様々だが一番の理由は衛星軌道上での決戦前のペガスの追放、ドーマの真意を世界中に生配信により、危うく人類はドーマと言う強大な侵略者の手で有効な対抗手段を失うだけでなく、植民地化を招く所だったのだ。
これにより本来仕えている某国達からも見放され、更にはとある世界的な政界の重要人物に命を狙われると言う事態を招いた。
この現実で左田政権は正気を失い、ドーマとの和平を実現すると言うとんでもない公約をかがげて実現に移そうとした。
馬鹿げているが頭の配線やネジが緩んだ政治家の脳内では正しい事なのである。
また、重ね重ね語るが日本の有権者と呼ばれる連中は基本老人であり、選挙に行く奴も大概は平日からデモに参加している暇な年寄りばかりだ。
まあちゃんと選挙行って公約で「消費税は上げない」と言っておきながら、そこに投票したら、恩を仇で返すかの如く消費税を上げればそりゃ若者も選挙に行かなくなり、政治に嫌悪を示して若者の選挙離れは進むと言うものだ。
話を戻そう。
そうして彼達はマスコミに働きかけて、反戦運動を続けた。
日本のマスコミは狂信的な反戦団体みたいなもんであり、当然これに同調した。
具体的には第二次世界大戦やらで日本で起きた悲劇やら戦争になったらどうなるか? とかそう言うのを延々と垂れ流すのである。
ネットではこう言う偏向報道が騒がれているが、先も語ったとおり選挙に行くのはテレビの言う事が絶対だと信じる老人(老害)達である。
ネットの力は影響力を増しているが2010年終わりに差し掛かった今ですらも日本におけるネット社会ではネットが国家を揺るがす力は持ってない。
ネットの力で三十万票集めた議員もいたが、日本の人口は一億以上。それに比べれば三十万はとても少ない数字だ。残念ながら。
ついでに付け加えるなら日本は超少子高齢化社会であり、どうしても選挙に勝つには老人ファーストの政権運営をしなければならないのだ。
そしてだめ押しとばかりに会談を実現するためにペガスに乗り込んだ。
だがここで問題が発生した。
昔から日本と言うのは外交音痴である。これは日本の国民性にも影響がある。
左田内閣など某大国の宣伝スピーカーみたいな政権だったのでその伝統は十分に発揮され、惑星セインの人間達から猛反発を食らった。
防衛省も、またしてもキチ○イの様な命令を受けて、ドーマの襲来に備える事も出来なかった。
理由はドーマ側を刺激する事になるかららしい。
こうしてドーマサイドは何の反撃がないことに不審に思いながらも地球の衛星軌道上に辿り着く事が出来たのであった。
☆
当然であるがどんな国にも愚かな人間と言う奴はいる。
民度が高い国とそうでない国の違いと言うのはそう言う愚かな人間はどれだけ少ないかで判断される。
ドーマはどちらかと言うと多い部類だ。
地球占領艦隊
先遣艦隊司令「アドリュー」
長身で銀髪の狡猾な男。
動物に例えるなら狐だろうか。
彼は地球の動きを不審に思いながら敵国の大都市の一つを焼け野原にする事を考えていた。
あの巨大な移民船の拿捕、(最悪動力部だけでも奪取)するのが最重要任務であるが、地球を占領する為に軍を動かすのも重要な任務である。
そのため、先ず日本を占拠する事にした。
これにはちゃんとした理由がある。
ロシア、イギリス、EU諸国、アメリカ、中国、アフリカや南米なども候補に挙がってはいた。
だがディーナは日本にいるし、この星は地域国家の集まりである。
それに以前の艦隊が残した調査データーと自分達で調べたデーターによると日本はかなり複雑怪奇な国らしく、それを裏付けるデーターも残っている。
もう既に宣戦布告は正式になされたも同然であり、迎撃態勢は整えているだろう。だが政治体制や軍備を整えるのを短期間で行うのは不可能だと考えていた。
つまり日本軍の攻撃はあったとしても現場の独断とかであり、散発的な物になるだろうと思った。
だから日本の大都市、東京を見せしめに攻撃する事にした。
またペガスの機動兵器は強力であるが数は少ないし守るべき人々や建造物に被害を与えないように戦うのに労力を裂く事は出来ないと考えていた。
月の砲台を叩き潰した主砲も都市やそこに住まう人々を盾にすれば撃つ事は出来ない。
後は物量戦に持ち込めば勝てる。
アドリューはそう考えた。
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