第11話「日本の狼狽」


 その知らせが届いたのはつい先程だった。

 ブリッジに息を切らせながらユーイチを除いた、怜治達学生組は駆け付けている。

 

「ドーマ艦隊が集結しているだって!?」

 

「はい、集結地点はこの国の首都上空です! 物量も前回とは桁違いの数です!」


「つまり東京の真上か!」

 

 攻撃態勢が整い次第東京を火の海にするつもりなのだろう。

 桁違いと言う言葉も本当で軍艦らしき反応は五百隻以上ある。

 アームド・セイバーの数になるとどれだけの数になるのだろうか想像も出来ない。四桁は超えるだろうか? 


「リミルさん! ドーマ艦隊から地球のネットワークを通して世界中に通信回線が開いています」


「繋いで!」


 そしてスクリーンにドーマ艦隊の司令官、ケントニスの顔が映し出された。

 まだ年若い黒い軍服の男がいる。まだ若い青年実業家と言った風貌だ。

 これがドーマ人なのか? と初めて見る敵の顔に困惑した。


『私はケントニス。今この地球に来ているドーマ軍の地球方面軍最高司令官だ』


「こいつが月に居る連中の親玉かよ!?」


 万城が睨み付けるように言う。


『先ずはこの惑星に逃げ込んだセイン人と地球人の諸君の健闘を讃えよう。先遣隊とは言え、我々を相手によく戦った』

 

 そしてワザとらしく拍手をする。


『そこで我々から提案だ。日本人の諸君は我々の提案を受け入れれば平和的な交渉に応じよう』


「提案だって?」


「大抵こう言うのってロクなのじゃないのよね」

 

 ハジメは驚くもレイカは冷静になってそう予感した。

 そしてその彼女の予感は正しかった。


『まず日本にいるセイン人諸君、もしも少しでも地球人に迷惑を掛けたくないのなら直ぐさま地球から出ていくべきだ。そして日本を含めた地球人はそれを邪魔しなければ手を出すつもりはない』


 それには皆シーンとなった。

 考え得る限りで最悪の事態だ。

 そして怜治達は間違いなくこの要求を政府が飲む事も予測できた。

 ユーイチも分かっているだろう。



 ユーイチとマコットも聞いていた。


「つ、つまりどう言う事なのだ?」

 

「セイン人を見捨てれば俺達地球人は助けるから大人しく言う事聞けって意味だ」


「ユーイチ、見捨てないで欲しいのだ!」


「俺だって同じ気持ちだ・・・・・・」

 

 そう言って通信をブリッジに繋いだ。


『ユーイチか? 何処に居るんだ?』

 

 怜治達をハジメとして主立ったメンバーが集まっていた。


「ロボットの工作室。敵は考えられる限りで最良とも言える手を打ってきたな」


『最良ってお前、敵を褒めるのかよ!? てか想像してたのか!?』


 スキンヘッドの万城がそう叫ぶ。

 たぶん近場にいたら掴み掛かってきただろう。


「最悪のケースの一つとしてね。こんなのアメリカでも要求に屈すると思うよ。ましてや今の日本なんか間違いなく屈すると思うね」

 

 認めたくはないがそう言われると怜治達は納得せざるおえない。

 日本政府の初期対応のせいで認識がおかしくなっているが、セイン人は異邦人であり、今回の戦いのキッカケを作った張本人であり、敵の言い分も最もである。

 また敵も残虐性も身に染みている。

 約束を破れば平然と都市の一つや二つ焼け野原にするだろう。

 相手が地球上の国家ならともかく異星人であるのなら尚更だ。


『で、俺達はどうすればいい?』


 怜治は皆の気持ちを代表するように尋ねる。


「賭けになるけど、手はあるよ」

 

 ユーイチは即答した。


『ホントか?』


 意外な返答に皆意外そうな顔をする。それが面白くてユーイチは笑ってしまいそうになった。

 マコットもポカーンとなっている。



 自衛隊達もあまりの急展開に言葉を失った。

 被災者達も戸惑いの声をあげる。


 自衛隊の仮説本部でも議論が重ねられていた。


「佐竹二佐? 敵をどう見るかね?」


「武力をちらつかせた脅迫行為ですが、敵ながら上手い手を考えたと思います」


「ふむ、では奴達は要求通りにしてくれると思うかね?」


「難しいと思います。まだセインとドーマの戦争の話も何処まで信じて良いかどうか分かりませんが――奴達(ドーマ)は二度もこの町に宣戦布告もせずに攻撃し、民間人に対する虐殺行為まで行ったのは事実です。恐らく相手の想像以上にあの宇宙船が脅威なのだからこう言う形で交渉して来たのだろうと思います」


「私も同じ考えだ――だが今の政治家連中は分かるまい。いや、どうでも良いのだろう――結局、我々は何の為に存在しているのだ」


「・・・・・・」


 角谷陸将の発言に返す言葉は見つからなかった。


☆ 

 

 左田総理はアッサリとこの承諾に乗った。

 面子もプライドも投げ捨ててモニター越しの会談に挑んだ。

 左田総理の周りには閣僚や官僚が立ち並んでいる。 


『では我々の要求を飲んでくれると言う事だな』


「その通りだ。あの巨大な移民船とやらをさっさと引き取って欲しい」


『そうか・・・・・・では引き取りが完了次第、再度平和的な交渉を行おう』

 

 そうして一方的に通信回線を切った。

 それを合図に周りの官僚などから左田総理は質問攻めに遭う。

 その一方では官僚同士で激しい意見のぶつけ合いをしている。


「総理!! 本当に良いんですか!? 相手が約束を守るとは到底思えません!」


「だがあんな戦力で攻め込まれたら一溜まりも無いぞ! どう責任を取る気だ!?」


「だけど相手は目的の為なら町一つを焼け野原にする連中だぞ!? 我々の思う通りに対等な関係を築くのは不可能だ!」


「大体対等な関係を築いたとして世界各国が黙ってはいないぞ!」


「元々あの船がこの国に来たから悪いんだ! 全部セイン人に押し付ければいいだろ!」

 

 などと醜くも不毛な言い争いを続ける大人達。

 これでも皆普通の国民よりかは賢い筈の大の大人達である。

 にも関わらずこの体たらくだ。


 左田総理達の閣僚達はとにかく全責任をあの宇宙船に押し付けて知らぬ存ぜぬを貫く気満々だった。例え国民が奴隷扱いされても亡命すればいいとも考えている。

 ようするに自己の保身しか考えてなかった。



 その後、政府は記者会見を行って発表した。


 セイン人やドーマ人の事なども含めて。

 そして会談の内容も自分達の都合の良いように脚色して「平和的交渉の為に重要な事」と言ってのけた。

 国民の安全のためにあの宇宙船を追放し、平和的に解決したいと言う発言をしたのだ。

 その為にちゃんとセイン人の移民船が脱出するように自衛隊を使って監視すると言う物である。

 

 今の時代、国民もテレビの情報を鵜呑みにするバカばかりではない。

 当然反感や疑問を持つ物は大勢居た。

 

 そもそもドーマ人の戦闘行為はネットにアップロードされており、二回目の戦闘では航空自衛隊の停戦勧告を無視して撃墜している。

 この質問に関して政府は「不幸な行き違い」と言い切ったせいでより国会のデモがヒートアップした。


 更にはセイン人と接触したい大国などの思惑やどうにか技術を手に入れて軍事的に国家戦略で優位に立ちたいと言う国々が日本に強行的な態度を取ってまたしても政府機能が麻痺状態になった。


 更に悪い事は起きた。


 国会議事堂のデモもヒートアップし、東京から避難する住民が大勢出で交通機関が麻痺し、世界各国の外務省は日本からの緊急避難勧告や国外退去命令、渡航禁止命令を出し、株価なども暴落を始め、政府機能だけで無く国家機能も麻痺し、戦わずして政府は空中分解をし始める事になった。


 日本だけでもこの有様なのだ。

 世界各国もその間に中国は尖閣諸島に上陸したり、ロシアは軍用機を防空網に突っ込ませたり、韓国は反日デモを行ったり、北朝鮮はミサイルの発射実験を行ったり、米軍は引き上げ準備を始めたり、ヨーロッパは外交ルートで圧力を強めたりともう地球全体もカオスな状況だった。


 そして日本のマスコミはと言うと、平常運転で視聴率を稼ぐために煽るだけ煽って更にパニックを拡大させていた。


「これもそれも全部あのセインとか言う訳の分からない異星人が悪いんだ!」


 左田総理は現実逃避するかの様に事態の収拾を図るため、地球からセイン人の移民船を追い出す決意をより強くした。



 昼間になった頃には神月町と戦果に巻き込まれた市民との間で再び一触即発の空気に突入していた。

 海上にはイージス艦、空には戦闘機や戦闘ヘリ、地上を戦車などの機甲兵器が並んでいる。

 そして神月高校に次々と被災者が押し寄せ、その様子をマスコミが生中継していた。


 こうなった理由は簡単で「お前達は一体どっちの味方だ!?」と言う事である。

 

 しかも運悪く怜治達は拘束される事になった。

 自衛隊の仮説本部でご丁寧に監視付きである。

 その事が知れ渡って更にヒートアップし、暴動になりつつあった。 


 佐竹二佐が代表して監視に付くが市民達は平然と本部に詰め寄り、自衛隊に詰め寄っていた。

 相手は口先だけがご立派な何時もの市民団体ではなく、普通の一般市民である。

 対応を間違えれば冗談抜きで国際問題になるので下手に出なければならなかった。


 そう言う光景は神月町の彼方此方で起きている。


「お、落ち着いて下さい!」


 と、自衛官は言うが――


「お前達は自衛隊として恥ずかしくないのか!」


「守るべき国民を監禁(怜治達の事)するのがお前達のやり方か!」


「見損なったぞ!」


「ですからこれは――」 


「ですから何だ! お前達本物の税金ドロボーだ!」


「戦う気が無いなら武器を寄越せ! 変わりに俺達が戦ってやる!」


 と、こんな具合のやり取りが彼方此方で行われている。

 自衛隊も二度目の、鬼気迫る市民達の怒りを前にどうすれば良いのか分からなかった。

 

 一応公安や特殊作戦群(自衛隊の特殊部隊)なども駆け付けてはいるが、ぶっちゃけ何も出きなかった。

 と言うか何かしたら間違いなく日本政府のせい=自分達のせいと判断される状況であり、対応を誤れば冗談抜きで紛争が勃発しかねないので現状ヘタに動けなかった。


「大丈夫ですかこれ?」


 この状況にマスコミも唖然となっていた。

 基本彼達は視聴率さえ稼げれば人を間接的に大量殺人しても屁でも無い連中だがこの時ばかりは危機感の様な物を持った。


「上はなんて言っている?」


「現地に留まって取材続行しろって・・・・・・」

  

「危なくなったらずらかるぞ。幾ら何でも今回ばかりはヤバすぎる。戦場だ」


 そんな話を取材陣はしていた矢先、遂に銃声が起きる。


 

 仮説本部にて。

 五十嵐一佐から角谷陸将に報告が行き届く。


 角谷陸将の傍のテレビには神月町で暴動発生、市民に自衛官発砲と言う大きな見出しで報道されて騒ぎになっていた。

 何処も同じ内容だった。


「死人が出たのか・・・・・・」

 

 まるで世界の終わりを見たかのように絶望的な表情をしていた。

 顔が真っ青で汗を大量に流し、目と口を大きく開いていて体を震わせている。

 

「はい、市民に。即死です。それを発端に彼方此方で暴動が発生し、自衛官や市民に怪我人が・・・・・・今も鎮圧に当たっていますが一時凌ぎでしょう。この状況が続けばもっと増えます」


 五十嵐一佐も辛い気持ちを押し殺して自衛官としての務めを果たす。


「市民を撃った自衛官は?」


「拘束しようとしたところ、自殺しました」


「何と言うことだ・・・・・・」


 そう言って角谷陸将はテーブルをバンと叩く。


「私も――心の何処かで震災と戦争被害を混同していたのだな・・・・・・その甘い認識のツケをこんな形で支払わされるとは――」


 ヨロヨロと席に座り、頭を抱える。


「私は――自衛隊はどう言う組織なのか分かっていた筈だった。だが本当は理解などこれっぽっちもしていなかった。何故戦うべき時に戦えない。何故、守るべき時に国民を守れない。何故守るべき国民を死に追いやらねばならんのだ――」

 

 自衛隊は死んだ。

 今迄先人が苦労して築いて来た地位も名誉も全て失った。

 政府も国民も国際社会は自衛隊を糾弾するだろう。

 同時に一生自衛隊の恥として名を残す事になった自衛官の事が哀れでならなかった。



 神月町の暴動。

 そして自衛官の発砲騒ぎは怜治達にも耳が届いていた。


「どうしてこうなってんだよ!? 俺達が戦うべき敵はドーマじゃないのかよ!? 何で自衛隊と市民が争わなきゃなんねーんだよ!?」


 東 万城は皆の気持ちを代弁していた。

 気の弱いハジメは引き気味になっている。

 しかしユーイチはとても落ち着いた様子だった。


「ユーイチ、お前もう本当に自衛隊の事――」


「ああ、落ち着いている。まだ憎しみはあるけどね」


「またリミルさんに頼んで説得させるか?」


「止めといた方がいいよ。前回と今回とでは争う理由が違うから。火に油注ぐようなもんだよ」


「そうだな・・・・・・」


 前回も今回も共通しているのが政府の対応が後手に回り、自衛隊が戦いが終わった後にノコノコとやって来たのが原因だ。

 これは戦いの発端を作ったリミルが決死の説得でどうにか収まった。


 しかし今回はドーマが政治的に揺さぶりを掛けて、この後に及んで政府は未だに前回の戦闘で航空自衛隊を使って停戦を無視されたにも関わらずドーマとの和平交渉を望んでおり、そしてリミル達の船を監視するために重武装の援軍まで寄越したのが原因で、神月町に置いてその政府の怒りを自衛隊が受け止めなければならなくなっていると言うのが今の状況だ。

 

 リミルが説得すればユーイチの言う通り火に油を注ぐような物だ。

 既にもう暴動が発生している上に自分達も自衛隊に拘束されている以上、沈静化を待つしか無い。

 

「なあ、この国はここまでおかしかったのか?」


「何だ今更?」


 怜治の一言にユーイチが反応する。


「万城の言う通りだ。何で侵略者の眼前で争いあってんだ・・・・・・」


「戦後のツケって奴じゃないのか? 幾らでも時間はあった。だけど変えようとせずに放置して、その現実に直面したのが今の結果だろうに」


「けど」


「なあ、俺達はロボットアニメの主人公になったわけじゃないんだぜ。本来ならば自衛隊がやるべき仕事だ。だけど馬鹿な政治家を当選させた国民のせいで自衛隊はただの武装したレスキュー隊としか動けない。ただそれだけの話だ」


「だけど」


「だけど何だ? スーパロボットに乗って神だか悪魔だかになったつもりか? 俺達は政治家とか大財閥の御曹司とか軍を動かす将軍でも地球を防衛するための組織に所属しているわけでもない。あくまで学生なんだ・・・・・・」


 諭すようにそうまで言われたらもう何も言えなかった。


「それよりも僕達移民船に乗らなくて良いんですか?」


 と、ハジメが言った。


「ご丁寧に自衛隊の監視付きだ。リミルさん達に任せるしかないだろ」


 ヤレヤレと言った感じでユーイチは首を振る。

 そこでふと傍観していた佐竹二佐が口を挟んだ。


「君達はセイン人が何をするつもりなのか知っているのか?」


「まあ一応ユーイチの作戦なんですけど――」


「本当は色々と準備したかったんだけど、突然拘束されたからこうして無駄に時間潰しているわけ」


「つまり、あの大艦隊を倒す方法があるのか?」


 佐竹二佐も今地球がどう言う状況に置かれているのかは理解している。

 軍人として敵対戦力の把握は基本中の基本だ。

 現在東京都を眼下に五百隻近くの大艦隊がいるのは理解していた。

 今の地球を数回滅ぼせる戦力だ。

 核兵器を使っても勝利は難しいだろう。


「前置きしとくけど、これは戦いに勝利する作戦じゃなくて、大手を振って戦う為の作戦ですからね。敵を目の前にしてその段階から頭を働かせないといけない時点で本来ならこの国は滅亡してもおかしくないですよ。てか今迄よく滅びませんでしたねこの国」

 

 ユーイチは苛つきながらそう言った。

 その不機嫌そうな態度と最も過ぎる意見に佐竹二佐は「そうか・・・・・・」としか返せなかった。


 次に口を開いたのはエリカだった。


「ユーイチも言い方は悪いけど、的を得ているわ。それに貴方達もドーマ軍が要求通りに従うとは思ってないでしょ? 仮に事が上手く進んでも絶対に対等な関係はありえない。最悪奴隷日本はドーマの奴隷として不平等な条約を結ばれてしまう。そうなったらもう日本は侵略者に尻尾を振った国として永遠に世界から孤立するわ」


 と、厳しい意見をレイカが述べる。

 続いて東 万城が後頭部を掻きながら言った。


「俺もそう思うぜ。俺見た目通りバカだから上手く言えないんだが・・・・・・このままだと俺達、一生負け犬として惨めな人生を送るぜ。確かに戦争したくねえって気持ちは分かる。敵も圧倒的だし、大勢人が死ぬのはバカの俺でも分かる。でも俺はこの町で何が起きたのかこの目でハッキリと見た。アイツらの目的が本当に移民船だったら移民船だけを狙えばいいのにアイツらは人殺しをまるでゲームの様に楽しんでいた。自衛隊が戦いを止めろって言っても聞かなかった。アイツらペガスを手に入れたら手の平を返して俺達を虫の様に殺してくるぜ」


 万城の意見は最もであり、そしてマトモな国民全員が考えている事だ。

  

「だが勝ち目は――」


「だったらよー戦わずに黙って死ねって言うのか?」 


 意外にも万城が言葉を返した。


「そ、それは」


「それにお前達自衛隊はアホばっかりの政府の指示が無いと戦えないんだろ? ユーイチによれば自衛隊ってのは敵から攻撃を受けなければ反撃したらダメなんだろ? その最初の攻撃が核攻撃とかだったらどうするつもりだったんだ?」

 

 万城が言ってるのはよく自衛隊を語る上で避けては通れない議論だ。

 ある程度改正は進んではいるがそれでも現状、ミサイルが飛来した場合、撃墜せずに着弾場所が例え領海内であっても黙認しなければならないのが現状である。

   

「しかし君達はまだ子供だ。それに民間人が戦うのは――」


「さっきからケチ付けてばっかりいないで他に良い考えを出せよ! そうすりゃ大人しく従ってやる!」


 その万城の一言がトドメだった。

 ガックリと項垂れて佐竹二佐は「戻れるように手配する」と言った。


「だが変わりに必ず生きて帰れ。もしそうなった場合の残された物の悲しみを想像してくれ――自分が言えるのはこれだけだ」


「俺がこう言うのも何だけど良いのか?」

 

 万城が不安そうに尋ねる。

 幾ら自称馬鹿でも眼前の大人が、人生を左右する程いけない事をしているのを理解してるからだ。


「自衛官として最善だと思った判断をしたまでだ。それにもう自衛隊の評価は地に落ちている。これ以上何かあっても対して変わらないだろう」


「そうか・・・・・・」


 流石の万城も申し訳なさそうな顔をした。

 自衛隊嫌いになっていたユーイチですら悲しそうな顔をしている。

 そして怜治達は解放され、別れ際に佐竹二佐から敬礼と一緒に

 

「この国と、この世界の命運を頼む――」


 と――日本と、そして地球の命運を託された。  

 同伴した他の自衛隊の隊員も同じく敬礼している。

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