第2話「バクファイガー発進」


 リミル・アントンはどうにか白い人型機同兵器アームドセイバー「リリィ」で頑張っていた。

 同じくベアル人(地球で言うならクマ型異星人)達が円盤「ベアルファイター」で頑張ってくれている。

 

 リミル・アントンは地球で言うところの人型の生命体。

 白く長い髪の毛、青い瞳に豊満なボディ。

 彼女やベアル人がいた母星「セイン」は敵の手に落ち、どうにか避難した少数の人々と共にこの巨大な移民船で脱出した。

 

 だが侵略者「ドーマ」はその追撃の手を緩めず、この地球にまで来てしまった。

 もともとアームドセイバーと言うのはドーマ人が惑星セインに攻め込む際に使った兵器の名前であり、リリィはそれを参考にして産み出されたセイン製のアームドセイバーだ。

 この移民船の中には「ドーマ」人が喉から手が出る程に秘密が隠されている。


 それは無限力とも、事象の改変すら可能とも言える禁断のテクノロジーであり、惑星セインの中でも極僅かの人間しか知らないテクノロジーだった。


 それをドーマ人達に明け渡す事も考えたが平然と侵略の魔の手を伸ばす連中だ。更なる戦いの火種を、不幸が不幸を呼び寄せかねないためにこの移民船に積み込んで惑星セインから脱出した。 


 そして移民船「ペガス」と共に、そしてペガスに積み込まれ、ドーマが欲する意志を持つエネルギーの結晶体「ディーナ」は地球を指し示した。

 行く宛が無かったベガスは進路を地球に向けた。

 

 だがドーマの艦隊が追跡して来て――そして地球に逃げ込み、今に至る。

 ドーマは同じ人型の異星人でありながら想像以上に卑劣な異星人だった。


 無関係な地球人を巻き込んだのは確かに自分達にも責任はある。

 だがそれを逆手にとって破壊活動を行っていた。

   

 この星を惑星セインの二の舞にしないためにも、リミル・アントンはリリィを動かす。ディーナで誕生させたマシンなので性能は此方が上だが敵の数が多い。


『おいおい相手は女だぜ?』


『性能は確かだが肝心の腕がなぁ~』


『モタモタしてると街が灰になっちまうぞ~!』


『投降すれば命だけは助けてやらなくもないぜ』


 音声で下品な声が聞こえる。

 こいつらは人のを命を奪う事に対して何とも思ってない。

 こんな奴達に負けたくない。


 力が欲しい

 こいつらに勝てる力が――


『きゃぁ!!』


 またビーム兵器が直撃する。

 搭乗機体であるリリィがまた損傷する。


 やはり数の差はなんとも覆しがたい。

 ペガスは移民船の為に、武装はほぼ皆無である。 

  

 ベアル族も基本温厚な性格なので進んで戦えるベアル族は少ない。

 

『ははは!! ちゃんとしないと死んじまうぞ~!』


『もしも生き残ったらたっぷり可愛がってやるからな』


『そろそろ遊びにも飽きたから終わらせてもいいんじゃねえか?』


(私こんな奴達に負けるの?)


 リリィが破損していく。

 戦う力がどんどん失っていく。


 負けたくない。


 負けたくない。


 こんな奴達に負けたくない。


 誰か――


 助けて――


『人型機同兵器の操縦って凄いGが掛かると思ったんだけどそうでも無いのか? 重力制御システム搭載してんのかなこの機体?』


 間の抜けた少年の声が聞こえた。 

 構わず敵のアームドセイバーが躊躇いなく攻撃を仕掛ける。


『なんだあの機体?』


『素手で勝てるのかよ?』


『あんな派手な機体で戦場に出て来るとは舐められたもんだな――』


 口々に敵から侮蔑の言葉が出る。

 敵のアームドセイバーやリミルのアームド・セイバーのそうだが全体に細心的なフォルムであんなマッシブな形状なのはどう考えてもアームド・セイバーの基本設計から外れている。


 まさか――


「まさか地球人にディーナを使わせたの!?」


 何となくだがそう思った。 

 ベアル人達の中にそう決断した人がいたとしてもおかしい話ではない。

 出なければあんな人型機動兵器が誕生するとは考えられない。


『さて、一丁やってみますか――』

 

 そう言って腰を振り、拳を引いて、勢いよく突きだした。


『ロケットパンチ!!』


「え?」


 リミル・アントンは一瞬惚けた。

 地球人が作ったと思われる人型機同兵器の、太い豪腕が勢いよく飛んだのだ。

 敵の機体がコクピット諸とも真っ二つにちぎれ飛ぶ。


『初めての人殺しだがあんまり嫌悪感は感じないな・・・・・・後で来る感じなのか? まあいいか・・・・・・』


『な、なんだあの機体!?』


『何をボサッとしている! 攻撃しろ! 攻撃だ!!』


『ファイガー!! ビーム!!』


 今度は額から勢いよくビームが飛び出る。

 またしても空中に浮かんでいた一機が爆発。

 そのまま照射したまま薙ぎ払う様にビームを移動させ、一機、二機、三機と敵を倒していく。

 物凄い威力と照射時間だ。


『何だあの化け物は!?』


『セインの新兵器か!?』

 

『セインの腰抜けどもがこんな兵器を隠し持ってやがったのか!?』 


『攻撃しろ!?』


 敵から明らかに狼狽の色が見える。

 ある物は銃からビームを乱射し、ある物は果敢に接近戦を挑んだ。

 

『バリア正常に作動――接近戦の方はと――』


 ビームは機体前面に展開されていたシールドが弾いていた。

 リミルの機体にも敵にも全身をくまなく覆うようにしているがああ言う機体前面に張るようなタイプではない。

 

 そして接近戦にもつれこむ。

 敵の一体がビームの剣を振り下ろすが振り下ろす前に腕を掴み取り、握り潰した。


『う、腕が!?』


『はあ!!』

 

 殴り飛ばされた。

 そして額のアンテナが帯電する。


『ファイガーサンダー!!』


『!?』


 目にも止まらぬスピードで落雷が放たれた。

 どうして落雷を?

 そこビームの発射口じゃなかった? エネルギーの伝達機構とかどうなってんだとか色々とリミルはツッコミたかった。


 だがバクファイガーの無双ショーは止まらない。

 

 下半身からミサイルを発射したり、球体状の肩のハッチが開くと竜巻が引き起こされたりもう何でもありと言う状態だ。


 これを見ていた地球の人々は「マジン○ーかよ」と口を揃えて言ったそうな。

 

『な、謎の人型機同兵器の前に被害甚大!! もう残りは自分達の二機しかない!!』


『助けてくれ! まだ死にたくない!!』


『あっまて!!』


 一機が逃亡した。

 しかし逃げ遅れた最後の一機はロケットパンチで粉砕される。


「助かったの?」


 リミルはそう呟いた。

 先程までの劣勢がウソのようだった。


『さてと――生体反応センサーを広域に展開。生きてる人がいればいいんだが』

   

 そうして地球人の機動兵器は戦火に包まれた街の中へと降り立つ。 

 リミルはハッとなった。


『わ、私も手伝うわ!!』


『ありがたい。そういえば名前聞いてなかったな?』


『リミル・アントン。貴方の名前は?』


『秋月 怜治だ。んで立て続けに頼んで悪いんだが、船の中に俺の友人が避難している。ロボット制作場にいると思うから誰かに頼んで災害救助メカを作らせて欲しいんだけど』


『わ、分かったわ――それにしても冷静ね。地球人って皆こうなの?』


『あーたぶん俺がおかしいんだと思う』


『そ、そう――』


 これがリミル・アントンと秋月 怜治との出会いだった。


 そして地球にとっては最悪のファーストコンタクトとも言えた。

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