概要
昭和25年。私は女性物理学者の卵として、大学院にて研究に励んでいる。
あの忌まわしい戦争が終わり、人もこの国も世界も大きく変貌した。
そして、私自身も、友達のいない地味な名もなき女学生から、新時代の女の象徴として、多少なりとも名の知れている存在になった。
けれども、私の心は、今でも10年前の初恋に囚われ、愛しいあの人を追い続けている。伝えられなかった想いを伝えるため、私はタイムマシンをつくるのだ。
そんなある日、研究室に一人の奇妙な男が訪ねてきた。
彼の来訪により、私の止まっていた時が動き出す。
※本作は、カクヨム投稿にあたり、応募原稿に多少の加筆修正を加えたものです。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!内容ではなくニュアンスですが、時をかける少女、みたいな作品です。
作品中にタイムマシンの単語が溢れている。でも、肝心のタイムマシンは中々登場しない。
でも、首尾一貫してタイムマシンの存在を感じる。未来人の存在を信じるヒロイン目線で物語が進むので当然かもしれないが、彼女とシンクロする自分を止められない。
カストリ紙(京極夏彦の世界だ!)の取材記者は、あの役回りの人物かと踏んだが、そうではなかった。肩透かしが上手い。
と言うか、いつの間にか、読者はタイムマシンの設定に取り込まれているのだ。ヒロインと同様に。
読み易く、良い雰囲気の作品だ。SFではなく恋愛物として読んでしまうが、最後にはSFとして店仕舞いしている。
作者の明智シリーズの一作を以前に読んだが、そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想いは時を変える。
歴史物、恋愛、SF、スパイ、ミステリーが全部盛りの作品です。
戦前戦中の昭和が時代設定としてあり、これは作者の『諜報員明智湖太郎』シリーズと同じです。
作者の描く戦前昭和がとてもリアリティがあり、作者自身が実は未来人静香なのではないかと思うくらいです笑
さて冗談はさておき、本編のお話ですが、今作では明智さんシリーズとは異なり、SF要素が強い作品になっています。
といってもベースが戦前昭和なので、変に近未来な感じはなく、「昭和から見た未来」というような感じです。
未来から来たというジョージと女学生スカーレットの物語。
手紙を通して恋が芽生えていくのですが、物語後半で明かされていく事実に驚…続きを読む - ★★★ Excellent!!!夢見る少女スカーレットは未来人への恋を貫く
太平洋戦争の開戦直前、女学校に在籍していた内向的な「私」は、
普段どおり一人きりで過ごす図書室で、不思議な手紙を見付けた。
美しい筆跡の手紙は「タイムマシンを信じるか?」と問うている。
鼻で笑った「私」だが、気まぐれを起こし、返事を書いてみた。
手紙の主は未来人「ジョージ」を名乗り、様々な予言をする。
図書室の誰も読まない本を介して続けられる、風変わりな文通。
「私」は次第にジョージを信じ、顔も見えない彼に惹かれていく。
純真な少女の恋の決意は固く、将来の夢さえ決定してしまうほど。
物語の時制は「私」の女学校の在学から10年後の昭和25年であり、
ジョージはの恋は雑誌記者のインタビューに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!恋は歴史を動かす
友達を作るのが苦手で内向的な戦前の女学生が、未来人ジョージと不思議な文通を交わしながら次第に恋心を芽生えさせる。
ほろ苦い片想いを大事に抱えながら、未来人ジョージに会うという夢を叶えるためにタイムマシンを開発する女性研究者を、とあるオカルト雑誌記者が取材をしに来るところから、話はスタートします。
他人からすればちょっと痛い昔話は、その真相が語られるところで思わぬ方向へ転換していきます。
そして最終話、殊に最後の一文を読んだときには感動と涙で、ずっしりと読者の心に余韻として刻まれるでしょう。
十五静香氏の作品は、昭和初期、戦前または戦後間もない作品が多くいずれもクオリティーが非常に高い…続きを読む