タイムマシンよ、お願い

作者 十五 静香

44

15人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

作品中にタイムマシンの単語が溢れている。でも、肝心のタイムマシンは中々登場しない。
でも、首尾一貫してタイムマシンの存在を感じる。未来人の存在を信じるヒロイン目線で物語が進むので当然かもしれないが、彼女とシンクロする自分を止められない。
カストリ紙(京極夏彦の世界だ!)の取材記者は、あの役回りの人物かと踏んだが、そうではなかった。肩透かしが上手い。
と言うか、いつの間にか、読者はタイムマシンの設定に取り込まれているのだ。ヒロインと同様に。
読み易く、良い雰囲気の作品だ。SFではなく恋愛物として読んでしまうが、最後にはSFとして店仕舞いしている。

作者の明智シリーズの一作を以前に読んだが、そちらもお薦め。個人的にはシリーズを読破するつもりです。

★★★ Excellent!!!

歴史物、恋愛、SF、スパイ、ミステリーが全部盛りの作品です。

戦前戦中の昭和が時代設定としてあり、これは作者の『諜報員明智湖太郎』シリーズと同じです。
作者の描く戦前昭和がとてもリアリティがあり、作者自身が実は未来人静香なのではないかと思うくらいです笑

さて冗談はさておき、本編のお話ですが、今作では明智さんシリーズとは異なり、SF要素が強い作品になっています。
といってもベースが戦前昭和なので、変に近未来な感じはなく、「昭和から見た未来」というような感じです。

未来から来たというジョージと女学生スカーレットの物語。
手紙を通して恋が芽生えていくのですが、物語後半で明かされていく事実に驚きます。

強い想いは人を動かすものですね。

個人的には、後半駆け足感があったので、もう少しボリュームがあっても良かったのかなと感じました。
中編にするにはもったいない、長編小説で読みたいと感じました。

おすすめの作品です!

★★★ Excellent!!!

太平洋戦争の開戦直前、女学校に在籍していた内向的な「私」は、
普段どおり一人きりで過ごす図書室で、不思議な手紙を見付けた。
美しい筆跡の手紙は「タイムマシンを信じるか?」と問うている。
鼻で笑った「私」だが、気まぐれを起こし、返事を書いてみた。

手紙の主は未来人「ジョージ」を名乗り、様々な予言をする。
図書室の誰も読まない本を介して続けられる、風変わりな文通。
「私」は次第にジョージを信じ、顔も見えない彼に惹かれていく。
純真な少女の恋の決意は固く、将来の夢さえ決定してしまうほど。

物語の時制は「私」の女学校の在学から10年後の昭和25年であり、
ジョージはの恋は雑誌記者のインタビューに答える形で語られる。
淡々とした語り口の中に、少女の瑞々しさがうかがえると同時に、
太平洋戦争間近の緊迫感が伝わってきて、ぞくりともする。

偶々最近、都内の女学校の戦時下の状況(工場勤務)を調べた。
灯火管制の夜も『風と共に去りぬ』を暗唱する級友の傍に集まり、
遠い外国を舞台にした恋物語に思いを馳せてはしゃべっていた、と
幾人かの手記に「スカーレット」が登場したことを思い出した。

個人的な見解だが、本作は純文学ではなく大衆文芸だと感じた。
スパイ物のミステリは多分にエンターテインメントだと思う。
すばるの純文学ならポップでエンタメな印象があるけれども、
群像はもっとぶっ飛んで(たまにラリって)いる気がする。

希望ある未来を予見する第6章は好みが別れるのではないかと思う。
私の個人的な趣味で言えば、謎めいた雑誌記者の退場で幕引き、
という終わり方のほうが戦争の爪痕の痛みが刺さってきて好きだ。
(繰り返しますが、意見には個人差があります)

もう1点、やかましいことを述べてしまうと、用いる言葉のこと。
昭和の前半を生きる主人公の一人称に平成の言葉が使われている。
上から目線、穏やかな… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

友達を作るのが苦手で内向的な戦前の女学生が、未来人ジョージと不思議な文通を交わしながら次第に恋心を芽生えさせる。

ほろ苦い片想いを大事に抱えながら、未来人ジョージに会うという夢を叶えるためにタイムマシンを開発する女性研究者を、とあるオカルト雑誌記者が取材をしに来るところから、話はスタートします。

他人からすればちょっと痛い昔話は、その真相が語られるところで思わぬ方向へ転換していきます。

そして最終話、殊に最後の一文を読んだときには感動と涙で、ずっしりと読者の心に余韻として刻まれるでしょう。

十五静香氏の作品は、昭和初期、戦前または戦後間もない作品が多くいずれもクオリティーが非常に高いのですが、私はこの作品がいちばん好きです。

文体はやや固めですが非常に読みやすく、書店で並ぶ作品さながらです。

同じWeb小説を書く者として、嫉妬まで感じさせるほどの名作です。
是非ご堪能ください!