No.2「半蔵門分署」
そして、伊賀忍者であったと認められるのは、初代の服部
「半蔵門」は江戸城(現在の皇居)の西に位置する門で、その名は徳川家康の家来となった服部政成とその配下(与力三十騎、二百名の伊賀同心)が此処を警護したことに由来する。
現在は、東京メトロ「半蔵門線ー半蔵門駅」周辺の呼称でもある。
その「半蔵門」近くのビルの地下、大凡100mの場所に、通称、「
通常は、千代田区霞ヶ関の「警察庁」庁舎の地下から掘られた地下道を通り出入りするようになっている。(戦時中、皇居の中からは何本も地下に防空壕と併用された、水堀の下を掘の外に通ずるトンネルが掘られていたが、終戦と共にGHQによって埋められてしまった——、そのうちの一本を掘り返し、再利用を図ったものである)
しかしその所在を知るものは「警察庁」内でも限られたものだけであり、完全秘匿扱いの部署である。
それは、この部署で扱う「事案」の特殊性所以でもあろう。
「公安警察 半蔵門分署」には、「時空捜査班」が置かれている。
千葉——こと、
「時空捜査」——とは、何をするのか?
それを説明する前に、この「時空捜査班」が、いつ?、なぜ? 設置されるに至ったのか、それを先に話すことが必要である。
千葉は、三年前の春まで「公安警察」内の通称——チヨダと呼ばれる特殊作業班の「キャップ」を務めていた。
それは全国の公安警察官が使っている協力者の情報やその教育など全般を統括する部署で、かつてはサクラ、4係と呼ばれた。現在はゼロとも呼ばれている。
その千葉に、「警察庁警備局長」から直々にお呼びが掛かり、内閣総理大臣がリーダーとなって開催する「国家安全保障会議」へ同行を命じられたのが、2014年の4月のことだった。
その会議のメンバーは「内閣総理大臣」「官房長官」「外務大臣」「防衛大臣」の四名で、議長は総理が務めることになっていた——所謂、日本版NSCのことである。
その日、総理官邸で内閣補佐官から手渡されたレジュメには「マル秘」の印が押され、その表紙の
【過去の歴史を
(「特殊捜査任務班」設置の必要性)————と、あった。
特殊犯罪人———?
過去に転送———?
千葉は、総理補佐官の説明を待った。
——今回の会議の開催に先立ちまして、本日は「警察庁 警備局」より篠田局長に特別においで願っております。
篠田局長は、総理補佐官に目で促され、席を立ち一礼の後、総理の兵藤に軽く会釈をした。
2012年の衆議院総選挙で与党に返り咲いた「政友党」は、
千葉は、篠田局長の後ろに控え会議の進行を見守っていた。
その会議には、千葉たち以外にも、「帝都大学物理学研究所」、「京帝大学素粒子研究所」、「三友電気名古屋製作所」、「川田重工神戸製作所」、など産・学からもあわせて10名以上が特別に招聘されていた。
結果、この会議は午後一時に始まって、夕食を挟んで午後の九時にようやく議長の兵藤総理の締めの言葉で、第一回目が終了した。
会議の内容を有り体に言えば、それは普通のものならば到底信じがたい話——、であった。
人が消える——、突然目の前から消え、そして過去の時代のどこかのものが、唐突に現代のこの世に現れる——。そんな話をにわかに誰が信じれるだろうか。
しかし千葉には、何故、今日この会議に呼ばれたのか即座に納得できた。
千葉自身が、目の前から妻が突然消えた——、という経験者だったからだ。
千葉は、あの日からずっと、「妻の失踪」の真相を訴え続けて来たが、誰にも信用して貰えなかった。
しかし——、今、ようやく妻を「国の力」で捜索出来る機会が訪れたことを素直に喜んでいた。
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