*——「証言者」——*

No.11「目撃者現る」

 ——どういうことだ?


 加奈子の言葉に真っ先に反応したのは、千葉だった。


 ——うまく、説明出来ないんですけど……、よく夢を見るんです

 ——どんな?


 半蔵が、怖い顔でツッコム。


 ——半蔵さん、その顔やめてもらえませんか、怖いんですけど……

 ——俺は、ずっとこんな顔だ。服部半蔵がニヤニヤしてたらさまにならんだろが


 橙子がすかさず、を入れる


 ——ほんと、その顔で、ニヤニヤされたほうが余計に怖いわ。マル暴に居た私でも怖いもん

 ——おいおい、今は捜査会議中だってこと忘れるなよ

 千葉が半笑いで二人を嗜める。


 ——倉科くん、先を続けてくれ

 ——夢の中で出て来るんですけど、私の子孫みたいな子供が私になんか訳のわからないアドバイスをしに来るんです


 ——アドバイス?


 右近が珍しく加奈子を見据えて聞き返した。


 ——はい。目が覚めた時にはそのアドバイスの内容は殆ど覚えてないことが多いんですけど、きっとあの子は私に何か伝えに来てるんじゃないかって、いつも思うんです。


 ——ふーん。だけど、それで違う世界に行ける、ってどうして思えるんだい?

 右近の更なる問いに、加奈子は困り顔で応えるには


 ——あの子、つまり私の子孫ってそういう能力があって、私が望めば連れていってくれる気がするんです。


 一同は押し黙ってしまった。


 それはそうだろう。仮にも「警察庁」に属する人間が、加奈子の「空想物語」じみた話に真剣に耳を傾けているわけで、それも結論のあってないような話だったのだから、誰もその先の話には進めないのは当たり前だった。



 現代の先端科学を駆使したところで、映画やSF小説に出て来るような「タイムマシーン」なるものが開発されるとは誰も本気で期待などしていない。

 しかし、加奈子が言うところの、遠い未来の子孫ならば出来るんじゃないかと期待というか祈りに近いもの——、そっちのほうが「タイムマシーン」を開発するよりよっぽどがあるというのが現状なのだった。

 


 それから、三日後のことだった——。


茜が、気色ばった顔つきで千葉のデスクの前に立っていた。


——キャップ! 奥方様を見かけたという者が現れましたっ!


——なんだって!!


——人相書きを見せましたところ、で見かけたと……


 千葉は茜を伴って急いで調に走った。


妻が生きていた——。


千葉の中にある一縷の望みに光が差した。



 

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