第37章 身近なところから始める
まいったな。
満天の星空のもと、サクヤは政庁の中庭を歩きながら思う。
ワンパ共和国――議長は、
イガレムス君主国――アキは、
「結局のところ
サクヤは、なにげにつぶやいた。
<は?
フソウは軽く言うが、サクヤはまじめに、
「そうもいかないだろう。わたしが
<いや、ねぇから。――ったく、せっかくアキの申し出を拒否ってくれたと安心していたら、また余計なことを考えやがって>
「いや、これは余計なことでもなんでもなく――」
「サクヤ様っ!」
リーシャだ。大広間のほうから走ってくる。
「探したんですよっ!」
リーシャはサクヤのもとに駆けつけると、ハァハァと息をきらしながら言った。
「ちょうどよかった。リーシャ、おまえに話しておきたいことがある」
「はい?」
リーシャは
「この前は心の整理がつかなったので話せなかったが、今なら話せる。だから、話してもいいか?」
「なんですか?」
「実はな――」
サクヤは、自分が
リーシャは驚きながらも、うれしそうに、
「サクヤ様って、本物の
きらきらと目を輝かせながらサクヤを見つめる。
「本物の
リーシャは無邪気に喜んでいた。
「そのことなんだが……」
いつになく歯切れの悪いサクヤ。
「どうかしましたか?」
キョトンとするリーシャ。
「おまえはわたしに仕えるのをやめたほうがいいと思うのだ」
「はい?」
リーシャはポカンとしていた。言っている意味がよく理解できないといったふうだ。
だからサクヤは説明する。キリッとした顔つきで、
「わたしが
アキはサクヤを政治的に利用しようとしている。ワンパ共和国はサクヤの命をつけねらうだろう。とにかく危なくなるのはまちがいない。
「わたしはリーシャを巻き添えにしたくない。だから従者をやめろ」
「へ?」
リーシャはちょっと
「あたしのことを心配してくれているんですか?」
「もちろんだ。わたしにとって、おまえは家族も同然だからな」
「そう言ってもらえるなんて、すごくうれしいです!」
リーシャはにっこりしてサクヤの両手をとり、ギュッとにぎりしめた。サクヤはホッとした感じで、
「そうか。急な話で、すまないと思う。――おまえの今後の生活については、ハル侯爵たちに頼んでおくから心配するな」
「あ、でも、やめませんよ」
「はい?」
思わず目を丸くするサクヤ。
「だって、サクヤ様があたしの立場だったとして、サクヤ様はお仕えする相手が危なくなるからといって、お仕えすることをやめますか?」
「え?」
サクヤは思わず固まった。
「そ、それはだな……」
サクヤなら、やめない。だが、正直に「やめない」と言えば、リーシャを危険にさらすことになるだろう。
だからと言って、「やめる」と言えばウソになる。リーシャにはウソをつけない。ついたところでバレバレだから意味がない。
サクヤが答えに窮していると、リーシャがにこやかに言った。
「やめないでしょ? あたしも同じです。わかってくれますよね?」
サクヤは「うーん」とうなると、観念した様子でほほ笑んだ。
「わかった。わたしがまちがっていた。――これからも従者として、よろしく頼むな」
「はい!」
リーシャは満面の笑みで
「ただ、わたしはリーシャのことを全力で守るつもりだが、どうしても守りきれないことだってあるだろう。それでもかまわないのだな?」
「もちろんです。覚悟はできています。それにあたしはサクヤ様の従者なんですから、自分の身くらい、自分で守って見せますよ」
リーシャはかわいらしくガッツポーズをとって見せた。
「そうか」
言いながらサクヤは、リーシャの頭をやさしくなでた。
◇ ◇ ◇
サクヤは
「
「おれたちの隊長は
だれもが誇らしい気もちになった。
皇族から見れば、貴族なんて格下だ。これまでサクヤのことを「下民」と見下してきたワグファイ大公国の貴族たちも、次に会ったときはデカイ顔をできないだろう。ざまあみろだ。
ただサクヤは「1つ問題がある」と言う。
「わたしが
もちろん隊員たちは、1人として除隊を願う者などいない。
「危ないからこそ、一緒にやりましょう!」
それが隊員たちの総意だった。
長いこと「
それなのに、
そういうことらしい。
「おまえたちは、わたしのために危ない橋をわたるというのか?」
サクヤは思わず胸が熱くなった。
長らく
「わたしはよい仲間に恵まれて幸せだと思う」
サクヤは穏やかな表情で隊員たちを見渡し、
「だが、おまえたちがよい仲間だからこそ、おまえたちを危ない目にあわせるわけにはいかないのだ。わかってくれるな?」
だが、だれ一人としてうなずく者はいなかった。真剣な表情でサクヤを黙って見つめる。
「いろいろ危なくなって厄介だったとしても、なにも恐れることはないっす」
「どんなに大変でもあせらないで、できることからコツコツやっていけばいいんすよ。隊長が教えてくれたことっす」
――高きに登るには低きよりす。
山に登るとき、一気に頂上につくことはできない。低いところから歩きはじめ、あきらめずに歩き続けてこそ、頂上にたどりつける。
トラブルだって同じだ。解決までの道のりが遠いものに思えても、あきらめないで地道にガンバっていれば、必ず解決にたどりつける。
フソウの受け売りだが、かつてサクヤが隊員たちに訓示した教えだ。
「どんな困難に見まわれたとしても、おれたちがあきらめなければ、きっと乗り越えられるっす」
いい
だけど、隊員たちは
サクヤは迷いを断ち切るように大きく息を吸って吐き出すと、
「すまないな。――ありがとう」
ペコリと頭を下げた。おもむろに顔をあげ、ニコリとして、
「話は以上だ。
「はっ!」
隊員たちはすばやく直立不動の姿勢をとり、さっと敬礼して
◇ ◇ ◇
サクヤたち遠征隊は、
ただし官用船や官用車に乗せられて移動するので、決して自由な外出ではなかった。
ところが早朝、サクヤたち遠征隊員たちが
「おまえら、好きに出歩いてもいいぜ」
理由はわからないが、サクヤたちは自由に出歩けるようになった。
「ただし
それだけ言うと、アキはサクヤたちの質問を受け付けることもなく、さっさと立ち去っていった。
サクヤは
「ならば遠慮なく街にくりだすか」
「いいっすね!」
隊員たちは大喜びだ。ずっと軟禁されて
サクヤたち遠征隊は、さっそく外出した。門限は日暮れまでと決め、あとは自由行動だ。それぞれ好きに街を散策すればいい。
サクヤはリーシャと街をめぐる。
「せっかくですから、おしゃれすればいいのに」
リーシャは残念そうに言うが、サクヤは「
ただリーシャとしては、こうしてサクヤと出かけられるだけでも嬉しい。大はしゃぎでサクヤの手を引っぱって歩きまわった。
サクヤとリーシャは水路沿いの道を歩き、観光する。
ほとんどの建物が2階建ての木造で、壁には延焼防止のため
「どの建物も旧スメラギ皇国の伝統的な建物ですね」
リーシャが解説してくれた。
「これだけ多くあるなんて、すごく珍しいですよ」
「そうなのか? たしかスメラギ……、ワンパ共和国にもたくさんあるのではないか?」
「昔はあったみたいですが、大きな町はどこもかしこも再開発されましたからね。田舎にいかないと、ほとんど残っていませんよ」
「そうか。――歴史を感じるな」
サクヤがしみじみ言うと、
「サクヤ様っ!」
いきなり声をかけられた。見ると、いく人かの老人たちが腰をかがめながら、尊敬のまなざしをサクヤに向けている。
サクヤが笑顔で軽く
「殿下の御無事を心よりお祝い申し上げます」
「若いころ第4皇女殿下をお見かけしたことがございますが、サクヤ様は本当にそっくりでございますなぁ」
「皇族の皆さまが皆殺しにされたと聞き、ずっと無念に思ってまいりましたが、そうではなかったとわかり安心いたしました」
老人たちは、いずれも旧スメラギ皇国の遺臣らしい。全員が
サクヤは戸惑いながらも、とにかく笑顔を見せ、「ありがとう」と気さくに応じる。
すると、遺臣たちは喜び、なかには「親しくお声かけいただいた」と感動して泣き出す者すらいた。
イガレムス君主国では、今でも昔と変わらず
サクヤは遺臣たちと
それから数分ほど歩いたところで、別の遺臣たちが「殿下っ!」とサクヤに声をかけてきた。
サクヤは、さっきと同じように応対して別れるが、これが最後ではなかった。
あちこちで遺臣たちが声をかけてくる。どうやら政庁が情報を流したらしく、サクヤが
サクヤは人がいいので、ファンサービスも苦にならない。声をかけられたら、喜んで応じる。ただ1つ気になったことには、
「ご即位めされるということで、まずはお祝い申し上げます」
「目の黒いうちに皇国の再興に立ちあうことができ、これほどの幸せはございません」
「共和国を討伐するため、この国で半世紀も苦労して富国強兵のために尽くしてまいりましたが、ついに時がきたのでございますね」
「自分も
「殿下の武勇は聞き及んでおります。きっと
遺臣たちの間では、なぜかサクヤが即位して皇帝となり、ワンパ共和国を討伐するために挙兵することが「決定事項」となっていた。
聞くところでは、そのように新聞に書かれていたらしい。これもまた政庁の
とりあえずサクヤは、即位や北伐について言われるたび、「その予定はないぞ」と否定する。
すると遺臣たちは言葉を失い、一様にがっかりした。
これまで遺臣たちは、なにもない未開の辺境で国づくりに取り組んできた。その大変さを想像してほしい。
なにしろ原始時代に戻ったような状態からのスタートだ。その苦労は
それでも遺臣たちは、負けなかった。ワンパ共和国に
結果として、イガレムス君主国は盛強な国に育つ。先の防衛戦ではワンパ共和国に勝利できた。昔の弱小国も今では強国だ。
遺臣たちは、それこそ「高きに登るには低きよりす」を絵に描いたような人生を歩んできたのだろう。
そして、今や
――ついに苦労が報われ、長年の夢もかなう!
なんて喜び勇んでいたら、あっけなく否定されたのだ。これで落胆しないほうがおかしいだろう。
それを思うと、サクヤは
(遺臣たちのため、わたしにできることはないか?)
お人よしにも、そう思う。
サクヤは遺臣たちと親しく接しているうちに情がわいてしまったわけだが、それはアキたちのもくろみどおりのことだった。
昨晩の宴会のとき、サクヤが大広間に戻ったあと、
「わが国に住まう遺臣たちは、今でも
そのためにも新聞にサクヤの記事を書かせる。
「サクヤ様も遺臣たちとたくさん会っていれば、それこそ単純接触効果で遺臣たちに好感をもつようになります」
アキは「なるほど」とうなずき、
「そうなれば、あいつも遺臣たちの願いを聞いてあげたいと思うようになるわけだな」
「はい。遺臣たちから即位と北伐を願われたなら、サクヤ様の気もちも即位と北伐のほうに傾いていくはずです」
「あいかわらず老練だな」
アキがニヤリすると、
◇ ◇ ◇
サクヤは夕食時、隊員たちが食堂に集まったところで、
「1つ聞いてほしいことがある」
真顔で切り出した。
隊員たちは姿勢を正し、サクヤの話に耳を傾ける。リーシャもサクヤの隣で黙って話を聞いていた。
「わたしは
「!?」
全員が驚いた。そして、
リーシャは「やっぱり」と思い、隊員たちは「隊長らしいな」と納得し、フソウは思わず
<また余計なことを考えやがって。いいか。よく聞け。国と国とが戦争するんだぜ。酒場のケンカを止めるのとはわけが違う。おまえ1人でなにができる?>
「おれたちがいるっすよ」
<はぁ? おまえらがいようがいまいが、結論は同じだ。サクヤもおまえらも、まだまだ修行の身だ。ヒヨッコだ。少しは身のほどってもんをわきまえろ>
「もちろん、わきまえているっすよ。だから、おれらにできることから地道にやっていくんすよ」
それこそ「高きに登るには低きよりす」だ。
「それに大志をいだいてガンバってこそ大成できるもんす。最初から無理だと決めつけていたら、なにも変わらないっすよ」
<それは正しい。だがな、まずは基礎をしっかりと身につけてこそ、でかいことができるようになる>
土台がしっかりしていなければ、どんな大志も大きな夢も砂上の楼閣だ。すぐに倒壊して終わる。
<おまえらは今、基礎を身につけている段階だ。でかいことをするには、まだ早すぎる。だから余計なことは考えず、鍛錬に集中して取り組め>
それが「高きに登るには低きよりす」というものだ。
「ですがフソウさん、訓練ではOJTも大切っすよ」
<は? おー、じぇい、ちい? なんだそりゃ?>
「OJTっていうのは、実際にやりながら学んでいくことっす」
<つまり
「そうっす。フソウさんにも教えられたっすよね? 実際にやってみるからこそ、いろいろと学ぶことができ、それが成長につながっていくって」
<たしかに
フソウの反論に勢いがなくなった。
<――で、サクヤ、おまえはどうなんだ? こいつと同じ考えか?>
「もちろんだ」
サクヤは笑顔で答えた。
「それに遺臣たちは今でも
<だから遺臣たちを守りたいってわけか?>
「そうだ」
かつて革命のとき、
(同じ過ちをくりかえすわけにはいかない)
サクヤは思う。だからこそ、なにがなんでもイガレムス君主国とワンパ共和国との戦争を食い止め、遺臣たちの平穏な生活を守ってやりたい。
<毎度のことながら情に流されやがって、あいかわらず大バカだな>
フソウは毒づくが、サクヤの気もちはわかる。
それに情に流されやすいサクヤを心配しながらも、いっぽうでは期待もしていた。サクヤたちには言わないが、
<情に流されやすいってのは、言い方をかえれば情に厚いってことだ>
フソウが思うに、情の厚さは人の上に立つためには欠かせない。
名将のタケダ・シンゲンも言っている。
――人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
人の心をつかんでこそ、守りも強固になる。人の心をつかむには、力ずくではダメだ。情の厚さが求められる。そんな意味だ。
シンゲンは、情の厚さによってバラバラだった家臣たちの心を1つにまとめ、結束力を高めた。結果として領地の政治も安定する。
こうして内政が固まったところで、外征を始めた。そして戦って勝ち、大領主にのぼりつめる。
足場を固めることからスタートして成功したという点では、まさに「高きに登るに低きよりす」を実践したと言えるだろう。
サクヤも
その点では、サクヤは合格かもしれない。なにしろリーシャも、隊員たちも、サクヤに情をかけられた結果、サクヤのためならどんな危険も恐れないという気もちになったのだから。
それなら、このまま見守ってやることが、サクヤの将来のためになるかもしれない。フソウはそう思うので、
<だったら、好きにしろ>
そっけなく言うと、それきり黙った。
「それで隊長、どうやって戦争を止めるんすか?」
「それはだな――」
サクヤは言葉につまった。とりあえず苦笑いして、
「おまえたちに名案はないか?」
サクヤは隊員たちを見まわすが、だれも頭をひねるばかりだ。これといった名案はない。
<ったく、おまえら大丈夫かよ? 見切り発車なんかしやがって>
フソウは思うが、言わない。あいつらは
◇ ◇ ◇
イガレムス君主国を流れる大河は、そのまま下っていくと南海まで続いている。河口の近くには大きな半島があり、その先端にはパニンエラという港町があった。
町の歴史は新しい。半世紀ほど前にエポール連合国が東方進出の足がかりとして築いた。
「難攻不落のパニンエラに攻め寄せるほど無謀なことはない」
パニンエラを統べるホール総督が自信たっぷりに言うほど、パニンエラは堅固な要塞都市だ。高くて厚い城壁に囲まれ、どこそこに砲座や銃座があって守りを固めている。
海側にはいくつもの要塞砲がすえつけられ、にらみをきかせていた。その口径は大きく、射程も長い。どんなに強固な軍艦でも、直撃されたら一発で
ホール総督は今、エポール連合国の青い旗のひるがえる見張り台に立ち、双眼鏡で沖合いをながめていた。遠くに多くの黒煙が見える。どうやら大規模な艦隊がいるらしい。
「わざわざ白昼堂々と正面から攻撃をしかけてくるなど、共和国の連中も愚かですな」
副官があきれたような口ぶりで言うと、ホール総督は「共和国が愚かなのは、前からわかっていただろう」と笑った。
沖合いにいる大艦隊は、ワンパ共和国の南洋艦隊だった。どの軍艦も艦体が大きく、搭載している主砲も
ただエポール連合国の軍艦と比べたら性能は劣るので、
だが、南洋艦隊はとにかく艦数が多い。まともに艦隊決戦を行えば、数で劣る東洋艦隊は大きな損害をこうむるだろう。だから、
「愚かにも全軍をあげて
これでホール総督も
まもなく共和国の南洋艦隊は、要塞砲の射程圏内に入った。
「砲撃を開始しろ」
ホール総督が命じると、副官が内線電話を手にして「
多数の要塞砲が一斉に火をふいた。巨大な砲弾が勢いよくワンパ南洋艦隊を目がけて飛んでいく。
初弾がすべて命中するとは限らないが、砲弾が大きいぶんだけ至近弾でもかなりの破壊力がある。それが雨のように降ってくるのだから、多くの敵艦が少なからず損傷するはずだ。
ホール総督は余裕の笑みを浮かべ、初弾の弾着を待っていた。ところが、
「中空で爆発した?」
ワンパ南洋艦隊の周囲には見えない壁、それも強固な障壁でもあるのか。すべての砲弾が南洋艦隊の手前、その中空で炸裂した。
爆煙の消えたあとには無傷の南洋艦隊がいた。
驚くべきことが起きた。だが、ひるんでいるわけにはいかない。
「砲弾の整備をきちんと行っていたのか?」
ホール総督は怒り、「まともな砲弾を使え」と命じた。
しかし、結果は同じだった。すべての砲弾が中空で炸裂する。南洋艦隊に傷一つすらつけられない。
――天候のせいか?
――それとも共和国の新兵器か?
――まさかな。あの共和国の黄色いサルどもが、われらを
「とにかく撃ちまくれ!」
ホール総督の号令一下、要塞砲は激しい砲撃を続けた。しかし、いくら撃っても同じだ。すべての砲弾は中空で炸裂し、南洋艦隊にダメージを与えられない。
「ムダですよ」
そう言って笑っているのは、アクル少佐だ。南洋艦隊の先頭を行く旗艦の
背後には5つのベッドがあり、若い男女が横たわっていた。それぞれ腕に輸血用のチューブが差し込まれ、そのチューブはアクル少佐のもつ盾につながっている。
「魔具の力の源は人間の
これがアクル少佐の研究の結果、判明したことだ。だからアクル少佐は、魔具――盾に大量の血を吸わせ、その力を最大限に引き出すことにしたのだった。
その
これまで数名が
「
アクル少佐が笑って言うように、ベッドの上で人間が絶命するたび、控えの兵士たちが新しい人間を連れてきて交換していた。
「どうせ死ぬのなら、祖国のために尽くしてもらったほうが、人命の有効活用になります」
アクル少佐はそう言っていたが、兵士たちもそうだと思う。だから、いやがる人間をベッドにしばりつけるのにもためらいがない。
まもなく
とにかく南洋艦隊の艦数は多い。それが一斉に砲撃したのだから、
共和国が得意とする飽和攻撃だ。
◇ ◇ ◇
『闘戦経』第37章
○原文・書き下し文
まず
○現代語訳
まず足もとのヘビをやっつけてから、さらに山のなかのトラを押さえつけるべきだ。
国産兵法『闘戦経』~主人公が『闘戦経』の兵法を使って、いろいろな困難をのりこえていく物語 策 @saku
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