第24章 私利私欲や優柔不断が失敗のもとになる

 サクヤは連隊員たちを家臣とし、その家族ともどもファラム侯国に連れていく。


 という予定だったが、横やりが入った。ワート大公が反対したのだ。


 サクヤは、ワート大公に呼び出され、宮殿の執務室に入った。ワート大公のほか、数名の側近たちがいる。


 ワート大公は挨拶あいさつもそこそこに単刀直入に言った。


「サクヤ殿、貴殿に任せた連隊は、貴殿の私物ではない。わが大公国の精鋭であり、かけがえのない領民でもある。勝手に連れていかれては困る。もちろん勝手な除隊も許されない」


「なるほど、それは道理だな」


 サクヤはすなおに納得した。


「へ?」


 ワート大公は思わず目を丸くした。反発するかと思いきや、あっさり納得した。想定外だ。これでは計画もだいなしではないか。


 どうする?


 ならば、


「サクヤ殿は、それでよいのか?」


「ん?」


「もしサクヤ殿が、どうしても連隊員やつらを家臣としたいというのなら、方法がないこともないぞ」


「そうなのか。ぜひ聞かせてくれ」


 サクヤはすなおに喜んだ。


 ワート大公は「ならば教えてやろう」ともったいぶりながら、


「サクヤ殿がわが大公国に仕えるなら、連隊員やつらをわが大公国の保護下におくことができる。そうすれば大事な領民を路頭に迷わせずにすむので、こちらとしても安心だ。そこでだ、サクヤ殿、わが大公国に仕官してはどうか?」


「わかった。そういうことなら仕えよう」


 サクヤは笑顔で即答した。


 ワート大公はその即断即決ぶりに面食らいつつも、すぐさま気をとりなおして満面の笑みで告げた。


「話は決まった。本日よりサクヤ殿は、わが大公国の家臣だ。忠勤に励めよ」


「承知した」


 サクヤは作法にのっとり、ワート大公の前にひざまずいて見せた。


 ワート大公はシメシメといった顔つきをしている。うれしそうだ。


「サクヤ殿には大尉の階級を与え、警備隊長を命じる」


 警備隊長とは、首都の治安と防衛を担当する役職だそうだ。


 帰り道。フソウは不機嫌だった。


<見殺しにしようとした連隊員のことを“大事な領民” だって? 大公あいつも“おまゆう”って感じだぜ>


「だが連隊員あいつらも大公から大事だと言ってもらえたのだ。めでたいではないか」


<は? めでてぇのは、おまえの頭だろ。まんまとめられやがって>


「?」


<いいか、サクヤ。大公あいつはおまえが連隊員をかわいがっていることを逆手にとり、連隊員を人質にしておまえに要求を飲ませたんだぞ。わかってんのか?>


「なるほど。あの大公も知恵者だな」


<おいおい、そう感心してる場合かよ!>


「まあ、そうカリカリするな。ものはとりようだ。当面の生活費も、これで心配しなくて済むではないか」


 フソウは<はぁ>と大きく嘆息した。


<ったく、おまえってやつは、どこまえ前向きポジティブなんだよ>


「そう言うな。これでリーシャの機嫌もよくなるだろうし、一石二鳥ではないか」と、にこやかに言うサクヤ。


 実際、そうだった。


 サクヤが宿舎に戻って事情を話すと、リーシャはもろ手をあげて喜んだ。


「サクヤ様も就職できましたし、連隊員のみなさんも失業者にならずに済みますし、万々歳ばんばんざいじゃないですか!」


 ◇ ◇ ◇


 たくさんの人が行き交うアスフールの目抜き通りで、交通事故が起きた。


 若い貴族が騎馬で暴走し、平民の少女をはねたのだ。母親は血まみれの少女わがこを抱きかかえながらも必死で、


「申し訳ありません」「申し訳ありません」


 何度も若い貴族に頭を下げ、謝罪していた。貴族を怒らせると「無礼」と見なされ、その場で射殺されかねない。


 とにかく許しを請わないことには、子供も自分も助からない。


「貴様も母親なら、しっかり子供の面倒くらいみろ!」


 若い貴族は、怒鳴りつけていた。


「危うく落馬するところだったではないか!」


「申し訳ありません」「申し訳ありません」


 母親は涙を流しながら、くりかえし謝っていた。早く子供の手当てをしないと。だけど、若い貴族の許しがなければ動けない。勝手に動くと、逃亡したと見なされ、うしろから射殺されかねない。


 やじ馬たちは遠巻きに群がりながらも、押し黙って様子を見守るばかりだ。横暴な貴族を相手に余計な口出しや、手出しをすれば、どうなるかわからない。


 そのとき数名の兵士が駆けつけ、ただちに少女の救護をはじめた。どうやら衛生兵らしい。応急処置も手馴れていた。


「貴様ら、なにをするか!」


 若い貴族がなじっても、兵士たちは相手にしない。無視して救護を続ける。


「もう大丈夫ですからね。子供さんも助かりますよ」


 兵士のひとりが声をかけると、母親は涙でぐしゃぐしゃの顔で「ありがとうございます、――本当にありがとうございます」と感謝しながら、その場にへなへなと倒れこんだ。安心して緊張が解けたのだろう。


 それにしても加害者がいばり、被害者が謝るだなんて、なんたることだ。いくら加害者が貴族で、被害者が平民だからといって、おかしいではないか。


 むしろ貴族なら、ノブレスオブリージ――平民を守る立場にあることを自覚し、普通の加害者以上にしおらしくすべきだろう。ただちに負傷者の救護にあたるべきではないか。それをしないとは、実に残念だ。


 騒ぎを聞きつけ駆けつけた警備隊長サクヤは、心底から憤慨していた。若い貴族の前に立ちはだかり、険しい顔つきで「下馬しろ」と命じる。


 同時に警備隊員たちが若い貴族を取り囲んだ。若い貴族をにらみつける。


「は? 貴様も平民だろ? 平民のくせに貴族に命令するな!」


 若い貴族はサクヤを見下ろしながら、どやした。


 だがサクヤは少しもひるまない。もう一度「下馬しろ」と言うだけだ。


「貴様っ、身のほどをわきまえろっ!」


 若い貴族はムチをふりあげ、サクヤを打ちすえようとした。


 瞬間、警備隊員たちがわっと若い貴族に襲いかかる。あっという間に馬からひきずりおろし、サクヤの前にひざまずかせてしまう。


「逮捕する」


 サクヤは若い貴族をにらみつけながら告げると、警備隊員たちに「連行しろ」と命じた。


 若い貴族は大声で悪態をつく。なんとかして逃げようともがくが、両脇から警備隊員たちにがっちりと押さえられ、どうにもならない。手足をつかまれて宙づりとなり、見るも無様ぶざまなかっこうで連行されていく。


 やじ馬たちは拍手喝采だった。快哉かいやを叫ぶ。


 だが、ワグファイ大公国の政府にとっては、実に困ったことだった。


 なにしろサクヤたち警備隊が逮捕した若い貴族は、ワグファイ大公国でも一二を争う有力貴族の息子だ。有力貴族は息子を釈放するように政府に圧力をかけてくる。


 政府はやむなく、ワート大公の許可を得たうえで、サクヤに連絡を入れた。ただちに若い貴族を釈放するように催促する。


 もちろんサクヤは、そんな不義を許さない。


「犯罪者を処罰もせず釈放するわけにはいかない」


 どんなに圧力をかけられても、すずしい顔でつっぱねた。そのせいで、とうとうワート大公から呼び出され、


「サクヤ殿の忠勤には見るべきものがある。が、水が清ければ魚が住まないともいう。少しは手心を加えてもよいのではないか?」


「ん? なんのことだ?」


「あのドラ息子のことだ」


 ワート大公は悩ましげに言い、一息ついた。


「さすがに今回の件で反省しているだろう。この辺でゆるしてやってもよいのではないか?」


「お言葉だが大公、上の者が無法では下の者に対して示しがつかない。処罰なしで釈放するなど、もってのほかだ」


「サクヤ殿の言いたいこともわかるが、あれの父親は――」


「とにかく大公」


 サクヤはワート大公の発言をさえぎるようにピシャリと言った。


「わたしのやり方が気にくわないというのなら、いつでも罷免ひめんしてもらってかまわない。たとえ追放されようと恨みはしないから、好きに処分してくれ」


 サクヤは堂々としていた。寸分も優柔不断ためらいが見られない。


 もはやワート大公は、「うぅ」とうなるしかなかった。せっかく手に入れた優秀な人材――サクヤを失いたくない。罷免したくないし、ましてや追放なんてありえない。


 さすがのワート大公も、サクヤに足もとを見られた形だ。ぐうの音も出ない。黙ってサクヤを帰した。


 帰り道。フソウは<大公あいつの鼻をあかしてやったな>と喜んでいた。


大公あいつはおまえを臣下にしておきたい。そんな大公あいつの気持ちを逆手にとって、大公あいつを黙らせやがるとは、サクヤ、おまえもなかなかやるじゃねぇか>


「いや、別にそんなつもりではなかったのだがな」


 サクヤは苦笑いした。


 いっぽう大公はサクヤを帰したあと、有力貴族に連絡を入れた。


「あらゆる手を打ったが、貴卿きけいの願いもかなえられそうにない。今回は相手が悪かった。貴卿きけいもいさぎよくあきらめよ」


 有力貴族は激怒した。サクヤが言うことを聞かないなら、いつものように私兵をさしむけて襲撃するのみ!


 と意気ごんではみたものの、相手はあの勇名とどろく鬼神隊長サクヤだ。勝てるわけがない。


 有力貴族は襲撃をあきらめ、「はぁ」と大きなため息をついた。とりあえず気分を落ちつけ、「押してダメなら、引くしかないか」ということで、サクヤのもとに使者をつかわした。


 使者の態度は丁寧だった。サクヤの目の前に大金を積んで見せてから、うやうやしく「わがあるじはサクヤ様の立身出世のために力を尽くしたいと申しております」と告げた。


「だから、あの者を釈放しろ、と?」


 サクヤが目を細めて単刀直入に言うと、使者は焦って見せた。


「いえいえ。その辺のことは警備隊長たるサクヤ様のお決めになられることです。われらはサクヤ様の憐れみにすがるほかありません」


「そうか。わたしに任せてくれるか」


 サクヤが満足そうに言うと、使者はみ手でうなずき、


「もちろんではありませんか。――よしなにお願いいたします」


 深々と頭を下げた。上目遣うわめづかいでサクヤの出方をうかがう。


「わかった」


 サクヤが笑顔を見せると、使者も頭を上げて笑顔で応じた。


「お心遣い感謝いたします」


「それでは帰って、ご当主殿に伝えてもらいたい」


「はい。なんなりとお申しつけください」


「どんな大金をつもうと、なにも変わらない。罪人は処罰するのみ。政治をなめるな。とな」


 サクヤがキッパリ言うと、使者は目を丸くした。


 結局、若い貴族は法に従って罰金刑を課せられた。有力貴族が被害者に賠償金を支払うことでゆるされ、ようやく若い貴族も釈放される。


 このようにサクヤは、それこそ「こわいもの知らず」で、相手が有力者でも容赦なく取り締まった。少しの遠慮も配慮もない。


 結果として、どんな傲慢ごうまんな貴族でもおとなしくするようになる。首都――アスフールに住む平民たちは「おかげで暮らしやすくなった」と喜んだ。


 ◇ ◇ ◇


 サクヤたち警備隊は、辺境に派遣されることになった。


 ワート大公からは「辺境の治安と防衛は首都以上に重要だ。だからサクヤ大尉には、ぜひ辺境の警備を手伝ってもらいたいのだ」と告げられた。


 辺境では、馬賊が横行し、領民たちを苦しめているという。それは大公にとって悩みの種となっているらしい。「領民たちのことを思うと夜も眠れない」そうだ。


<ウソくせー>


 フソウはそう思うが、サクヤはすなおに信じた。


「わかった。しっかりと警備するから、大公も安心されよ」


 サクヤはワート大公から辞令を受け取ると、宮殿をあとにした。


<で、おまえは大公あいつの言いなりでいいのか?>


 道すがらフソウは不満そうに言った。


「言いなりもなにも、困っている領民がいるなら、行って助けてやるのが人の道だろう?」


<つーかよ、おまえは厄介払やっかいばらいされたんだぜ。自覚はあんのかよ>


「厄介払い? わたしは別に厄介なことをした覚えはないが、うがちすぎではないか?」


<ったく、これだから育ちのいいやつはいけねぇんだよ。人がよすぎて……>


 言いかけてフソウはハッとした。何を思ったか、あわてて口をつぐんだ。サクヤの様子をうかがう。


 サクヤはあいかわらずの笑顔だ。が、その目はどことなく悲しげに見えた。


<――すまねぇ。思いださせちまったか>


「大丈夫だ。気にするな。むしろへたに気をつかわれたほうが、わたしとしても困る」


<そっか……>


「そうだ」


<まあ、それはそうと、外地に出るのはいいキッカケだ。この機会におまえの警備隊も少し編成を変えたほうがいいかもしれねぇな。――>


 フソウは話題を変えた。


 サクヤが帰宅すると、リーシャが心配そうな顔で待っていた。「どうでしたか?」と聞いてくるので、サクヤは宮殿でのやりとりを話して聞かせた。


「これは厄介払いってやつですよ」


 リーシャは深刻そうに言った。


「ん?」


「サクヤ様は貴族たちの特権をかなり侵害しましたからね。貴族たちから嫌われたんですよ。だから左遷されちゃうんです」


「そうなのか? ――だが、宮仕えに左遷はつきものだろう? 居酒屋で“オレは左遷された”って話はよく聞かされたぞ。そう気にするな」


 サクヤが軽い調子で言うと、リーシャはあきれた。


「いやいや、つきものではありませんから。――それに一月ひとつきかそこらで左遷だなんて、よっぽどのことですよ」


「そんなものなのか?」


「そんなものです」


 リーシャはあきれていた。が、サクヤは感心していた。


「さすがはリーシャ、あいかわらず物知りだな。勉強になる」


「は? なに、のん気なことを言ってるんですか。いいですか。サクヤ様が職を失うと、家臣みんなも職を失って路頭に迷うんですよ。自覚していますか?」


「もちろんだ。リーシャ、おまえも含めて、全員しっかりとわたしが面倒をみてやるから安心しろ」


 サクヤは屈託のない笑顔を見せた。そんな顔を見せられたら、リーシャも強く言えなくなる。トーンダウンしてしまう。


「サクヤ様も“長いものに巻かれる”ってことを知らないですからね。だから保身もヘタクソなんです。少しは損得を考えて……」


 と言いながらも、リーシャはふと思う。


(でも損得ばかり考えて動くサクヤ様だったら、あたしはサクヤ様のことを好きになっていたかな?)


 損得を考えてもらわないと困るけど、損得で動かれるとイヤになる。


 まさに二律背反ジレンマ。頭が痛い。


(だけど、やっぱりサクヤ様には私利私欲に走ってほしくないかな。それにサクヤ様も私利私欲に走らないから内政をうまくやれるとか言ってたし)


 かつてイシダ・ミツナリという武将は、すぐれた参謀としてトヨトミ・ヒデヨシとかいう領主の天下取りに貢献したそうだ。


 そんなミツナリは私利私欲に走らず、居城も質素で、財産もためこまなかったらしい。


 その清貧ぶりは、政敵のトクガワ・イエヤスですら「自分が貧乏してまで主君に尽くすような家臣がトクガワ家にいるだろうか」とほめるくらいだったそうだ。


 この話がウソか本当か、リーシャにはわからない。


 でも、リーシャはサクヤが好きだ。だから、サクヤのことを信じたいと思う。サクヤが損得を度外視して動くというなら、それでいい。もう「なるようになれ」だ。だから、


「――やっぱり損得なんて考えなくていいです。もうサクヤ様に任せます」


「そうか。ありがとう。がんばるからな」


 サクヤはほほ笑みながら、ない胸を張って見せた。


 ◇ ◇ ◇


 戦乱が各地で難民を生み、路頭に迷った難民たちは、どこそこで山賊となり、海賊となり、馬賊となった。生活のため、人びとを襲い、財産を奪ってまわる。


 ワグファイ大公国の辺境は、とりわけ馬賊の被害が甚大だった。馬賊は神出鬼没で、住民や商人を襲い、その財産を根こそぎ奪っていた。


 だから、肥沃な大地のはずの辺境も、耕作する者もなく、すっかり荒れ果てていた。そんな荒れ地の一角に、サクヤたち警備隊は野営地を設営する。


 サクヤは設営があらかた終わってから、着任の挨拶あいさつのために地方長官のもとに出向いた。地方長官は穏やかそうな中年男性だった。その地方長官が言うには、


「これから警備隊長サクヤ殿には、馬賊との戦いを手伝ってもらうわけだが、積極的に戦わないようにしてもらいたい」


 キョトンとするサクヤをよそに、地方長官は話を続けた。


「へたに戦って万が一にも馬賊に負けることがあれば、わたしは地方長官としての責任を問われる。そうなれば出世の道も閉ざされる。だから警備隊長サクヤ殿も腕には自信があると思うが、ここでは余計なことをしないでもらいたいのだ」


「ならば領民が馬賊に襲われたなら、どうするのだ?」


 サクヤは真顔で問いかけた。


「もちろん兵を出す。――兵を出すが、馬賊が引きあげはじめるのを待ってからにする。そうすれば、見た目にはわが軍が馬賊を追い払っているように見える。かっこうもつくし、わが軍が被害を受けることもない」


「それでは襲われている領民を救えないではないか」


 サクヤが驚きあきれていると、地方長官はため息をついた。


警備隊長サクヤ殿は辺境でくすぶりたいのか? 一日も早く中央に返り咲きたくはないのか? だったら余計なことをするな。おとなしく言うとおりにするのだ」


 地方長官の口ぶりは、まるで教師が生徒を教えさとしているかのようだった。


 もちろんサクヤは「従順な生徒」ではない。自分の意見はしっかり言う。


無辜むこの民を守るために軍隊があり、軍人がいるのだ。わたしは軍人として、悪党が良民を苦しめているのなら、それを見て見ぬふりなどできない」


 かつて天下人トヨトミ・ヒデヨシの軍師として活躍したクロダ・カンベエは、即断即決のできる武将としても有名だったという。


 カンベエは、まさに「機を見るに敏」で、ここぞというときにためらうことなく戦い、勝った。そして、サクヤもまたカンベエのような即断即決タイプだった。だから、


「わたしは“外征にあっては、ためらいが失敗のもとになる”と教えられている。良民を苦しめる悪党がいるなら、ためらうことなく戦うつもりだ」


 サクヤはキッパリと言った。


 地方長官は残念そうに首をふり、嘆息してから、おもむろに口を開いた。


警備隊長サクヤ殿はまだ若い。若いゆえに血の気も多く、血気にはやるのもわかるが、短気は損気だ。いったん野営地に戻り、冷静に考えてみよ」


 だが、野営地に戻ったところで、サクヤの考えは変わらない。馬賊のアジトが見つかり次第、すぐさま討伐に向かうつもりだ。


 ◇ ◇ ◇


『闘戦経』第24章


〇原文・書き下し文


|内(ない)|臣(しん)は|黄(おう)|金(ごん)の|為(ため)に|行(おこな)わず。|外(がい)|臣(しん)は|猶(ゆう)|予(よ)の|為(ため)に|功(こう)せず。


〇現代語訳


 国内にいる役人は、もうけようとして無責任になる。国外にいる役人は、ためらって成功しなくなる。


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