第8話 刀身の製作その1
オレはどう作業するか考えがまとまり、耐火性のある革エプロンと厚手の皮手袋を装備した
「親方!4番炉を使わせてもらいます!」
「おう!」
オレは刀身に使う鋼材と道具を手に取り4番炉に向かい、炉の中の様子を確認した
「火が弱いなやっぱ」
4番炉、凹型の形状をした炉でくぼみの中に燃料を敷き使うタイプだ。炉には直ぐに使えるように火が入っていたのだが種火になる程度の物だった
「ふん!」
「ジャリ…ブン、ジャリ…ブン」
オレはスコップを手に取り1000度で蒸し焼きにして下処理された石炭”コークス”をすくい取って炉の中に入れる、そして
「シュウ~…シュウ~…」
炉の横にあるT字ハンドルを引いては押して引いては押して…フイゴを操作し、風を中に送り火力を上げた
「良い色になったな・・・」
コークスが十分な温度まで熱せられた事を確認し、大きなペンチの様な道具”ヤットコ”で四角い棒状の鋼材をつまみ炉の中に入れ、鋼材を炉で熱した
「先ずは片刃から作るかな…っ!」
真っ赤になった鋼材を取り出し、鉄床まで持って行きハンマーで叩く!
「カン!カン!カン!」
熱しては叩き、熱しては叩きを繰り返し四角い鋼材を理想の厚みと幅の板に形成していき・・・
「そろそろタングいくか」
タングとは刀身の下、武器のハンドルの中を通る芯になる部分だ。この芯に穴をあけた鍔や柄、柄頭をはめ込むのでタングがしっかりしてないと使った時に壊れてしまう
「カンッ!カンカン!」
刀身より若干細く長く…叩いて形を整えていく、断面が四角くなるような形に。コレが円柱だとハンドルの中で回ってしまう
「できた。さて次は」
タングの大体の形成が終わり、鋼材を丁度いい長さに切るため、切りたい部分を中心に熱する
「カコッ」
熱している間、鉄床に空いた四角い穴に断ち切るためのパーツをはめ込んだ。このパーツは鈍角な刃になっていてこの上に熱した鋼材を置き切り込みを入れるための物である
「ジャキ・・・カン、カン」
オレは鋼材の熱した部分をそのパーツの上に置きハンマーで叩いた。完全に断ち切るまで叩かずに切れ込みを入れるだけにし、鉄床に鋼材を置きその切れ込みから曲がるようハンマーで叩く
「カンカン・・・ジュッ」
ある程度曲げた後、切れ込み部分を桶に張った水で冷やし固くする。急激に冷された鋼はガラスの様に固く脆くなり…
「パリンッ」
ハンマーで鋼材のあまった端の部分を叩くと曲がった折れ目から簡単に折れる。折ってちょうどいい長さになった鋼材を炉の中に入れ熱する。次は刀身の部分を作る作業だ
タングの部分をヤットコで摘み、真っ赤になった刃先になる部分を叩き形を整える
「カン!カン!」
刀身全体の形を整えた後、刃になる部分を作るため角度を付ける。刃の側面のミネと刃の間にある平らな部分が無い、刃からミネまで角度をつけた断面がV字になる様な形で、なおかつ適度な膨らみのある角度形状…ナイフでいうところのコンベックス・グラインドの様な形にしたいので、それを考慮しながら叩く
「うーん、めんどくさいけどこの方が良いよな、この客には・・・」
この角度だと程よく刃に強度を持たせた鋭い刃が付けられるので、肉から骨まで断ち切る様な使い方ができる。ナイフにこんな刃を付けると膨らみが邪魔して木を削るなどの作業の時邪魔になるから嫌がる人が居るが・・・
「雑用で使う事は考えなくていいよな。親方だって言ってたじゃないか”そんな使い方一切考慮しなくていい!良い武器を作ることを考えろ”って」
「カン!カン!カン!」
熱して叩いて、熱して叩いて・・・黙々と作業を続ける
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます