第9話 刀身の製作その2

 オレは注文道理の寸法に合うようにダガーの刀身を整えながら叩いていた


「小物はこういうところがシビアだよなぁ」


 剣の刀身が1センチ短い、そんな誤差を気にする人間はそうそう居ないだろう。だが、それが小さな武器…このダガーの場合はそうはいかない


「カン、カン、カン…」


 ダガーの刀身の長さは逆手で握り、持っている腕に刀身をピタッと付けた時に肘まで切先が届く長さ、つまり前腕と同じくらいの長さが理想だ


「武器を自分の手のように扱え・・・か」


 これは武器は自分の腕の助長と考え、扱いやすくするためだ。刀身が少しでも長いと振り回し難くなってしまう。では、逆に短かったらどうか?


「カン!カン!」


 短いと逆手で相手の攻撃を受けた時、受け流した攻撃が切先の方へと流れて行った時、膝に当たってしまう。刀身が1センチ短かったら1センチ肘が削れる、戦闘に支障をきたすには十分な傷になる。決して妥協するわけにはいかない


「ひゅう、これでいいな。よいしょっと」


「カリカリ…カポッ」


 叩き終えた刀身を万力で挟んで固定しヤスリで更に形を整える


「焼き入れする前にキレイにしておかないと面倒だからな」


「ジャッ、ジャッ」


 荒いヤスリから目の細かいに切り替えながらで形を整え砥石で表面を磨き傷を取って仕上げる


「シャーッ…シャーッ…」


 傷があるとその傷に汚れが溜まりザビの原因になるので油断ならない


「・・・・こんなもんだろ。さて、焼き入れだ」


 磨き終わった刀身を焼き入れするために熱っする。その間にオレは気休めに祈りを捧げた


「あー、失敗しませんように。火と大地の精霊の加護があらんことを・・・」

 

 焼き入れで刀身が冷やされたときに曲がってしまう事が有る、焼き曲がりという現象だ、それが起きると今までの苦労がおじゃんになってしまう。もうこればかりは祈るしかない


「ジュゥゥゥゥゥ・・・・」


 熱した刀身を”刃の側から”冷却液の中に入れて冷やす、冷却液につけた時に気泡が出来て冷やされる時にムラが出来て曲がってしまわない様にだ、刃から浸けて揺らし気泡が上へ逃げるようにする。今回使ったのは通常の冷却用オイル、武器に属性を付ける場合は錬金術師の監修のもと冷却材に色んな素材が使われるらしいが、オレはまだやらせてもらったことは無い


「よっ!」


 刀身にまだ熱が残っている状態で冷却材から引き上げる。焼き入れの後には焼き鈍しと言って、焼き入れで硬くなり過ぎた鋼を熱で程よい硬さにする作業をするのが一般的だが、俺のやった方法はちゃんと焼きが入りかつ熱が残った状態で引き上げ、残った余熱で焼き鈍しを行なうというものだ。タイミングが難しいが手間が省ける


「モアモアモア・・・」


 オレはまだ表面に残ってるオイルが上げる煙の中の刀身を静かに見つめた・・・


「焼き曲がりは・・・無いな!よし!!」


 焼き入れが成功した事を確認したオレはまだ熱のある刀身を置き自然に冷ます、冷えた頃には焼き鈍しも終わりちょうどいい硬度になっているだろう

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