第24話 断ち切り型の特性

 オレは並んだ剣を見ながら先輩に話しかけた


「一口にファルシオンやメッサーと言っても色んな種類がありますよね。どれから始めるんです先輩?」


「まず、アッシュが使っていたタイプの物から説明しましょう」


「へい、お願いします」


 先輩はオレが素振りで使っていたファルシオンを手に取り解説を始めた


「アッシュが使っていた肉切り包丁の様な形の刀身…仮に断ち切り型と呼んでいるタイプですが」


 断ち切り型の刀身はミネは真っ直ぐ切先まで直線で平たく、刃の部分は根元の部分から切先に向かって物打ち部分まで広がり、そこから先に向かって丸くカーブしている、幅の広い刀身だ。全長90cm程で刃渡り(刀身の長さは)75cmくらい


「この断ち切り型は一般的なファルシオンの形状の一つで、相手を叩き切る様な使い方ができる形状ですが、先が丸く突くのには向いてません。この幅が広い刀身は振った時、斬り付けた時に最も威力が出る物打ちと呼ばれる部分に重心が来るようになっています、ですので斬る事に関しては素人でも扱いやすい物になっています」


「ビュン、ビュン」


 そう言いながら先輩はファルシオンを何度か降った。オレは先輩に質問する


「物打ちより手前で斬り付けると刃の抵抗が強すぎて、かえって切れないでしたよね、たしか」


「ええ、物打ちは降った時にもっとも効率よく力が集中する場所でもあります。基本的にこの部分を当てる様に攻撃しますので、切先から物打ち部分までするどく研いで、そこから手前は相手の攻撃を受ける為に、にぶく刃をつける人が多いですね」


「剣は鍔に近い根元は切れ味が鈍いと言われる理由ですね。大型のナイフの場合は根元と切先は細かい作業に使える様に鋭角に鋭く研いで、物打ちの部分は木などを叩き切る時に刃が負けない様に鈍角に鈍く研ぎますが、ほとんど逆の刃の付け方ですね」


「鋭く鋭角な刃は切れ味がありますが潰れやすく、鈍角な刃は切れ味は鈍いですが硬い物に当たっても潰れにくいですからね。極端に言うと鋭く脆い剃刀と、丈夫だが鈍い刃の斧の違いですね。使用目的が変われば研ぎ方も変わります」


「難しいんですよね、そのバランスって」


「もう一つ切れ味に関係するのは刀身の厚みですね」


「チャキッ」


 先輩はオレに刀身の厚みが分かる様に構えた、それを見てオレは一言漏らす


「横から見ると幅があって力強い印象ですけど・・・前から見るとペラペラですよね・・・」


「一番厚い部分でも4ミリでいどしかありませんからね、それでも重さは1.3キロはありますが。この幅が広く薄い刀身が切れ味に貢献してます、斬り付け相手に刀身が食い込んだ時の抵抗が薄い分少なくなりますから、深く斬り付けられます。また刃の方は骨を斬り付けても刃が負けない様に、刀身の薄さのわりには鈍角に研がれています」


「相手の盾に食い込んで暴れられたりしてもバネの様にしなりますから、強度が無い訳ではないんですよねぇ・・・でもなんかなぁ」


 ファルシオンの刀身を苦い顔をしながら見ていたら、先輩が笑いながら刀身の厚みをまじまじと見ながら言った


「ダガーを作った後だと、刀身の厚みの違いからちょっと頼りなく見えてしまいますよね。大きい分余計に薄く見えるのもありますが。ハハハ」


「これ以上厚くして重くなっても嫌ですしね。これが嫌だったらバトルアックスにするしかないですし。ハハハ」


 親方も会話に入って来た


「ガハハ、戦闘で強くなって筋力が上がっちまった奴にはあまり関係ない話だがな。スキルやレベルってよく分からん力はその辺りの戦術の常識を覆しちまう」


「ですから、あまり強くなり過ぎた人に武器術を教えても習得に時間が掛かるんでしたっけ?」


「おうよ、力が強い分、武器の重心バランスや重さを利用した使い方が分かりにくいからな。だから戦闘に出る前の基礎訓練が重要なんだ、それを怠ると同じ身体能力の相手と戦っても戦闘力に差が出る。まあ、その辺を怠る大馬鹿野郎はそうそう居ねえがな!ガハハ」


「アハハハ、戦い方も分からないのに戦いに行く命知らずなんてよほどの理由が無ければ居ないでしょう。よっぽど運と戦闘のセンスに恵まれてれば生き残れるでしょうが」


「居るかよそんな奴、少なくても俺はそんな大馬鹿見たことねぇ。練度に差があったるするのはけっこうあるがな!ハハハハ」


            ・


            ・


            ・


――――そう遠くない未来…北門の付近の森で


「な、何だコイツ!?」


「アメーバさーん、待ってください、僕と戦いましょうよー」


「あの人間、あんな傷だらけになってもまだ向かってきやがる!?動きは素人そものもだってのに・・・」


「とりゃ!」


 勇者の攻撃!ゼリーアメーバEに8ダメージ


「ピギィ!」


 ゼリーアメーバEを倒した


「五郎ぉ!クソ!この四郎アメーバ様が相手になってやる!」


 ゼリーアメーバDの攻撃!


「よっと」


 だが勇者は棒を使って受け流した


「なにぃ!?」


「こうやって、避ければいいのか。なるほど、なるほど」


 ゼリーアメーバDは動揺している


「コ、コイツ…動きがだんだん良くなってきて…」


「スキル使っていきますか!うぉりゃ!」


「ひぃいい!ぶぎゃ!」


勇者のヘビーアタック!ゼリーアメーバDに18ダメージ、ゼリーアメーバDを倒した


「ふう、後もう一戦やったら帰ろうかな」


 北の森には弱々しい見た目とは裏腹に、不死身人間…魔物狩のシリアルキラーが現れたと魔物の中で噂となっていた――――――

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