第23話 グロス・メッサーとは?
「では、メッサーについて解説したいと思います」
「へい、よろしくお願いします先輩」
先輩は自分が素振りに使っていたメッサーを手に取り説明した
「グロス・メッサー、異界語で大きなナイフを意味する名前ですが、短くメッサーと呼ばれるのが普通です。ファルシオンと違いグリップが独特な形状をしており・・・」
先輩はメッサーのグリップを回す様に見せた
「このように、タングがグリップの形をし、その両側を木材で挟みリベットで止められています。
「鍔が無かったら、もう鉈ですよね。だけど、丈夫といってもメッサーのグリップは正直あまり好きになれないんですよね、オレ」
「ハハハ、失点もありますからね。タングやリベットなど金属が露出してますから、握った時に熱を奪われるので手袋越しでも冬場は冷たくて不快ですし、真冬に素手で握ろうものなら手に張りつく危険もありますから」
「それもありますけど、やっぱ握り心地が悪いのがどうも・・・振ってると手にマメが出来る事が多くて」
「シャキン」
先輩は笑いながらメッサーとファルシオンを鞘から抜きクルクルと器用に回す様に振りながら説明した。先輩が二刀流が出来るなんて今日初めて知ったぞオレ
「ファルシオンだと片手剣と同じ構造ですから、グリップに貼ってある革が滑り止めとクッションの役目をして、手にマメが出来にくいですからね。それ等の理由から一定の需要があってもメッサーを選ばない人もいます」
「カチンッ」
そう言って先輩はファルシオンの方を鞘に仕舞った
「だからメッサーがファルシオンより安くても、ファルシオンの市場を奪わないですんでいるんですよね・・・」
「はい、そして握りの丈夫さ以外に、鍔にも片手剣の常識に捕らわれない工夫がされてます、それがこのネイルです。私がメッサーを気に入っている理由でもあります」
先輩は手に持つメッサーの横に飛び出しているパーツを摘まんだ後、前に構えて解説する
「この構えて私から見て右に飛び出しているパーツはネイルと言って、前と後ろ側を守る棒鍔に右サイドを守る役目を持たせる第2の鍔です」
「サイドリングをつけてカバーさせるのは良くありますけど、ネイルの様なものが飛び出しているのは珍しいですよね」
「ええ、サイドリングの方がまるいデザインで衣服に引っかかったりしにくく、軽量で広い範囲をカバーできますからね。ネイルもサイドリングも片方にしかついていないのが多いのは・・・ネイルが両側についている例は見たことありませんが・・・携帯し易くする為です。この様に」
先輩は腰の剣を差す専用のベルトにメッサー差した
「片刃の剣は刃が下を向く様に左腰に刺すのが普通ですので、片側だけに取り付けて身体に当たり邪魔にならない様になっているからです。剣を刃を下にして腰に差すのは右手で左の腰の剣を抜く時に自然ですし、馬上で抜くさいに馬の首を切らないようにする為でもあります。稀にですが移動しながら抜刀する時に自分に足を切らない様に刃を上にして差す人も居ますが」
「刃が上に向いてると手首をひねる様にしてから抜かないといけませんからね」
「手首をひねらずに抜く方法もありますが・・・・それはひとまず置いておきましょう、別の武器の話になっちゃいますし。ネイルの話に戻りますが、右側だけネイルが伸びているのはもう一つ理由があります・・・えっと、ちょっと待っててもらえ…」
困っている先輩に親方はある物を差し出した
「コイツだろ?ほら」
「あ!そうです。ありがとうございます親方!」
先輩はそれを受け取ると説明に戻った。受け取ったのは直径30cmほどの丸い小さな盾、バックラーだ
「えー、この様に盾を持つと右側の守りがどうしても薄くなってしまいます、前腕ににストラップで固定して持つヒーターシールドなどではまったくガードできません。そう言った盾の弱点を補うためにネイルが付いています」
「盾は慣れてない人が使っても邪魔になるだけと言われるほどですからね。バックラーはその中でも扱いやすい部類ですが」
「小さいバックラーなら自分の視界をあまりさえぎりませんし、軽量で小回りが利きますからね。初心者でも安心して扱えるので…例の如くゴロツキにも人気ですが…ハハハ」
「あ、うん、そうでしたね。ハハハ…」
先輩、暗い顔をしてたけど、何かあったのかな?
「そして、これがバックラーならではの構えなんですが」
先輩がバックラーを外側に向く様に横に持ち、両手剣を構える様にメッサーを持つ手と合わせる様に構えた
「この様にバックラーで手を守りながら構える時でも、メッサーの左側にはネイルが無いので戦いやすくなってます。武器を使った戦いでは良く相手の前に出した手を狙いますから、この様な構えが多いです」
「なるほど、バックラーとの相性もいいんですね」
「はい、これもメッサーの魅力の一つです。これでファルシオンとメッサーの違いについての説明は終わります、次は刀身の種類による特性の違いを話ましょうか」
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