特性解説

第22話 ファルシオンとは?

「そろそろいいだろう・・・ごっこいせっと」


 親方が休憩が終わらせ、起ち上がり先輩に言った


「おい小僧、ファルシオンとメッサーの違いから教えてやれ」


「は、はい、親方!アッシュ、使っていたファルシオンを貸してください」


「へい、先輩どうぞ」


 オレは先輩にファルシオンを預けた。先輩はファルシオンを受け取ると他の剣が置いてある場所に行き、同じ刀身のファルシオンとメッサーを鞘から抜いて並べた


「では、こちらに並べた剣は同じ刀身ですが、それぞれ違う呼ばれ方をします。ファルシオンとメッサーです」


 先輩は片方の剣を手に取った


「違いはこのグリップの構造で、こちらがファルシオン、異界語で鎌を意味する言葉が訛ったものが名前の由来と言われ、鎌の様に断ち切る事を目的とした片手剣です」


「実際に鎌の様に湾曲した刀身もありますけど少数派ですよね、何でなんでしょう?」


「鎌ぐらい良く切れるって意味らしいですよ。ファルシオンが現れる前は両刃の剣が主流で、斬ることに特化した剣がめずらしかったとか」


「それで身近で良く切れる刃物に例えて鎌になったと」


「そう言う事です。刀身の説明は後に回しますので、まずはグリップの説明から。見ての通りこのファルシオンのグリップは一般的なな片手剣と同じもので、刃とミネの方に長く伸びる棒鍔、木製のグリップに革を貼り付け縫い合わせた握り、剣の重心を調整し手からすべってしまわないようにする円形の柄頭からなってます」


「ラウンデルダガーとは違って円の中心ではなく、横からタングを貫通さる様な付け方ですね」


「ええ、横に円盤状にひろっがっていると手首の動きを制限してしまいますし、携帯にも不便ですから。それに柄の長い両手剣の場合違った役目が・・・」


 先輩が両手剣の話をしようとしたのを親方が止めた


「小僧、話がそれてるぞ。今はファルシオンだ」


「す、すみません。えーと、ですから…普段は両刃の片手剣を使っている方でもそのまま違和感無く扱う事が出来ます。鎧が発展したことによりこの様な斬撃に特化した武器は廃れてましたが、魔物との戦闘での優位性が認められ、兵士個人でロングソードからファルシオンに切り替える兵士が現れる様になりました」


「魔物との戦闘で優位?」


 親方がオレの疑問に答えてくれた


「魔物は生命力が強い。ロングソードで突いても、身体に刺さったのもお構いなしに鍔元まで突進してきて攻撃してくる事が多い。そんで斬り付けるファルシオンならそんな相手でも多少優位に戦えるって訳だ」


「刺突で深々と刺してしまうと抜くまでその剣では攻撃できない…が、斬撃ならその心配がないと?」


「ああ、骨なんかに中途半端に食い込んで隙が出来る事もあるが、突き刺してできる隙よりはましなんだ。斬るんだったら素早く動ける魔物相手でも当てやすいしな。ただし、刺突の様に内蔵まで届きにくいから殺傷能力は刺突と比べて低い」


「うーん、でも今でも軍の正式装備はロングソードですよね?新兵にもロングソードを持っている人が多い様な・・・・」


「それは、私から・・・」


「おう、言ってみろ小僧」


 先輩が説明を始める


「このファルシオンとメッサーは、ちゃんと扱うには技術が要るのですが、ただ斬り付けるだけなら技術の無い人でも比較的簡単に扱えるので、旅の護身用として持つ人が多く・・・野盗などのゴロツキにも人気でして」


「あー…そう言えば人相の悪い男が酒場でよく腰にぶら下げてますね…」


「ええ、それでファルシオンやメッサーを兵士に持たせるのは印象が悪いと、こころよく思って無い軍人が多いので正式採用にまではいたっていません。それにロングソード術はあらゆる武器術の基本になりますから訓練するのにも都合がいいんですよ」


「なるほど、そう言った理由があるんですね」


「国民からのイメージが悪くなるのは軍としては避けたいですからね。そしてこれがメッサーに無いファルシオンの利点なんですが・・・」


 先輩は違うファルシオンを取り戻って来て、自分の腰に当ててみせた


「アッシュが使ってた幅の広い物や私が使っていた反りのある物だと微妙ですが、この刀身が真っ直ぐなタイプのファルシオンなら鞘に入れて携帯した時、片手剣に見えるでしょう?柄が同じですからね。こういう感じで誤魔化して持つ為にメッサーにせず、ファルシオンをこっそり持ってる兵士も居ます」


「おお!それは気が付きませんでした。今度町の兵士をよく見てみます」


 親方が呆れた顔で話しかけて来た


「不審者と見られて、しょっ引かれるから止めとけヒヨッコ」

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