第16話 作品紹介:片刃のダガー

「次は片刃のタイプの物を説明させてもらいます親方」


 自分で作った片刃のタイプのダガーを手に取り説明する・・・のだが、引っかかる部分があった


「この片刃のタイプはダガーと言うより大形のナイフの様な作りにしました。相手をしっかり切りつけられる様にとの注文だったので・・・あの…親方、質問良いですか?」


 この依頼主の分析には疑問になる部分があったので思い切って聞いてみた


「なんだ?言ってみろ」


「へい、この依頼主は何でわざわざラウンデルダガーでこんな注文したんでしょう?素直にナイフ注文すればよかったんじゃ?」


「その依頼主の職業は軍人だ。部隊の規則で定められた短剣がラウンデルダガーだったんだろ、定められた装備を職業柄身に付けなきゃならんからしかたなく、ってところだろうな。装備をそろえてないと非常時に他の奴に装備を貸す事になった時、混乱するからな」


 軍の規則か、非常時に他の隊員に装備が渡るのも想定してるんだな・・・じゃあ何で刃の種類にばらつきがあるんだ?


「え、でも…どんな仕様でもラウンデルダガーならOKって事ですか?大雑把な規則ですね。刃の種類が違うだけでも使用感は全然違うのに」


「ん、教えてなかったか?軍のダガーの戦闘法は基本的に逆手で持って突き刺す攻撃方しか教えない」


「え?そうなんですか」


「ああ、だから刀身が真っすぐで先が鋭く尖ってしっかり刺せる様になってれば問題なく戦える様になってる、その戦闘方法で一番適して安価で使いやすいって事で、他の国でもラウンデルダガーを正式装備にしてる国は多い」


「取り合えずとっさに鞘から抜いて刺せればいいって事ですか・・・と言う事は切りつける方法は依頼主が独学で学んだのか」


「軍に入る前にどこかの道場で学んだか、軍で働きながら誰かから教わったかだろうな。疑問は解けたか?説明に戻ってくれ」


「へい!刀身の刃は骨などを思いっきり切りつけても刃こぼれし難いコンベックスグラインドにしました。グリップも力が入る様に太く、中央が膨らんでいる形状に、両刃の物と同じくグリップの厚みも刀身の刃のある方を薄くし、握った感触で刃の向きが分かる様になってます、片刃ですので片方だけですが」


「ほう、見せてみな」


「あ、その前に」


「なんだ?」


「重心の位置を刀身側にあえてよせましたので気を付けてください。重くしろとの依頼だったので」


「わかった、鉈の様に叩きつけられる様にしたんだな」


 親方はオレのダガーを手に取りって仕上がりを確かめた


「重心位置は指の幅三本分先・・・ロングソードの重心位置を参考にしたのか?」


「へい、ロングソードを短剣サイズにしたらこの位置に重心が来るかと思い調整してみました。マズかったですか?」


 親方は笑って答えてくれた


「いや、作った事もない武器の性質を良く応用したな、ハハハハ。アイツも気に入るだろう」


「アイツって…親方、依頼主を知ってるんですか?」


「ああ、オメェに渡した注文書のヤツ全員な、依頼内容も把握してる。新人に作らせるから安くしてやるって言ったら喜んで引き受けてくれたよ、癖のある注文が多くなっちまったがな」


「ああ、それで・・・・意地悪な注文だと思いましたよ」


「ハハハハ、すねるな、すねるな。このダガー、いい出来だと思うぜ。鍔や柄頭の大きさも丁度良くて邪魔にならない」


 そう言って親方はダガーを置いた


「見本のダガーが唯一参考になった部分ですからね」


「ハハハ、握って持ってみるだけでも参考になるだろ?次で最後か」


「へい・・・コイツが一番曲者ですが。本当にこれでよかったのだろうか・・・」


「依頼者もリスクは承知の上で注文してる、心配するな。見せてみろ、依頼に対するオメェの答えを」


 オレは最後の刃無しのダガーを見せた

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