第15話 作品紹介:両刃のダガー
「ではまず、両刃のダガーの説明からさせていただきます親方」
「おう」
オレは自分で作った両刃のダガーを手に取り親方に説明する
「両刃の刀身の幅ですが、定番の根元は広く先端に向かって段々狭くなり、切っ先でキュッと木の葉の先の様に丸みをおびながら尖らせる様にしました」
「刺した時に一番負担がかかる切先の強度を確保しつつ鋭くするタイプだな。刀身の幅が先端付近より根元が太くなってるから、側面からの力で曲がってしまい易い刀身の根元辺りの強度も確保できる」
「へい、カタナで言うところの弱腰と呼ばれる部分ですね。根元から先端に向かって細くする事により、刺した後に抜く時の抵抗を少なくする役目もあります。効果は微々たるモノですが」
親方は俺の説明を聞いて頷いた
「いいだろう。と言うか、カタナなんてよく覚えてたなヒヨッコ、一度きりしかみせてねえだろ」
「なんか印象に残ってまして。オレもその内カタナの作り方を教えてもらえるんですか?」
親方は鼻で笑いながら首を横に振った
「作るのが面倒な上に買手だってつかねえよ、覚える必要なんかねぇ。まず模様鍛練で完璧に剣を作れるようになってから言いな、アレはその極みにある」
「模様鍛練・・・質の良い鋼が錬成できなかった時代の鍛造法でしたよね?叩いて伸ばして折り曲げてまた叩くを繰り返す折り返し技法の」
「そうだ、ちゃんと覚えてるな」
「でも見せてもらった時、模様鍛練で作った物に出るダマスカス鋼のような模様は無かったような気がしたんですが?」
「よく見るとちゃんと模様はあるぞ。今の時代に作られてる模様鍛練法で出来た剣は表面に酸を塗って模様が分かりやすく浮き出る様にしているんだ、装飾用にな。そっちなら注文が来るし教えてやるよ、だいぶ先の話になるが」
「あー・・・まだまだオレの知らない事ってあるんですね」
バツの悪そうな顔をしているであろう俺を見て親方は大笑いした
「ハハハハー!そりゃそうよ!今は実用品を作る事だけ考えな。カタナは・・・そうだな特性だけはその内教えるかもしれん、勉強にはなるからな。それより説明の続きをしろ!」
親方に怒鳴られ我に返り、自分のダガーの説明に戻った
「へい!えーと、ラウンデルダガーの円盤部分ですが、注文道理に鍔の方を大きく柄頭の方を小さくしました、刀身が小指の方に行く握りの逆手よりも、順手で扱う事を想定していますね」
「そうだな。で、それだけか?」
「恐らく依頼主は片手剣の使い手だと読みました。片手剣の使い方はそのままダガーを順手で握った時にそのまま応用できますし、片手剣とダガーの二刀流は基本のテクニックですから」
「ふむ」
「ですからそう言った方が使いか安い様、強い衝撃でも鍔が歪まない様に厚く作りました。グリップの方も少し長くしています、鍔の後ろ辺りに親指を置いて握るサーベルグリップにも対応できるようにです、さらにグリップの断面が完全な丸ではなく、刃の方向に向かって細くなる緩やかな楕円になるようにしました」
「ほう、楕円の理由は?」
「刃のある向きが握った感触だけで分かるようにです」
「こっちに渡してみな」
「へい!」
親方はオレの手からダガーを受け取ると何度も握り直しながら調子を確認した
「ふむ、問題ないな…重心のバランスもいい。よし!良くやったな!」
親方は受け取ったダガーを机に置いて、一言ほめてくれた
「ありがとうございます!」
「コイツの説明はもういい、次だ」
「へい!」
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