刃の特性

第2話 両刃の特性

「じゃあ説明するぞ。ここに三種類のダガーがある、両刃、片刃、刃無しの刺突特化の三種類だ」


 親方がダガーをさやから抜いて一本づつ机の上に置いていく


「じゃあ、軽く確認していくぞ。まずダガーってなんだ?」


「へい、主に戦闘用に特化した短剣の事です。ダガーの多くは鎧のすき間からでも急所に届く様、長い刃渡りと狙った急所を突きやすい真直ぐな刀身を持っています。両刃や刃がついていない針のようなモノが多いですね。日常での作業でも使う事も視野に入れたナイフなどとは違う扱われ方をする場合がほとんどです。サクスなんて例外がありますが」


「よし、両刃の特性を言ってみろ」


「へい!両刃の利点は鞘から抜いた時に刃の向きを気にせずにとっさに使える事です、片刃だと抜いた時に刃の向きがどっちか分からなくなる時が有りますが、両刃は両側に刃がついてるので」


「それから?」


「戦術の幅も広がります。両刃だと切りつけた後に裏側の刃で切りつけて、手を返さずに連続で攻撃できます。”片刃の短剣は半分しか役に立たない”なんて言う人も居る…んでしたよね?」


「ハハ、そう言えばそんな客が居たと聞かせた事が有ったな。じゃあ、お前が両刃のダガーを作る時に気を付ける事はなんだヒヨッコ?」


「ダガーですから狙った場所に刺せる様に真直ぐ作るのは当然ですが、両側を同じ作りで真直ぐにするってのが地味に難しいんですよね。後は厚みをどうするかですかね。両刃だと両側を削る事になるので強度が低くなりやすいですから」


「そうだな。靭性を持たせて曲げてもバネの様に元に戻る様にしても良いんだが、それでも限界がある。いざ突いてみたら刀身がグニャっと曲がって急所に当たりませんでした、なんて事になるわけにはいかないからな、どうしてもある程度の厚みが要る。じゃあ・・・」


 親方は片刃と両刃のダガーを持ち並べて、両方の刀身の厚みが分かる様に見せて来た


「両刃のヤツを片刃のヤツと同じ厚みにしたらどうだ?」


 片刃の物は両刃の物より厚みがあった、片刃のミネが平たい作りだったので余計にそう見えるが、それを念頭に考えていても分厚かった。オレは迷わずに答える


「両刃の物をそんな厚みにはできません、厚みが邪魔になって刃が付きませんから。刀身の幅を広げれば鋭い刃が付けられるでしょうけど、広げ過ぎるとその幅が邪魔になっちゃいますね、このラウンデルダガーはグリップの構造を考えても、軽量で刺す事に特化してますから持ち味を殺しちゃいます」


 親方は手に持っていたダガーを置いた


「よし!その通りだ!鎧やモンスターの殻などにあるすき間が刀身の幅の分開いてるとも限らないからな。そんで」


 親方は三本目の刃無しの刺突特化型のダガーを手に持った


「刃が無くてもいいからしっかり刺せるものが欲しいと言う需要が生まれて、こういうタイプの物が作られたってわけだ」


 表情が緩んだ親方を見てオレは緊張がゆるんでしまった


「ふぅ・・・」


「何気を抜いてるんだ。次の質問をするぞ」

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