第6話 三つ刃の亜種について

「昔、そのタイプの亜種で、三つ刃の物を捻じった形をしたツイスト・ダガーなんてのがあったな・・・・」


 親方は思い出したかのように言った・・・捻じった刀身のダガーだって?


「なんですかそれ…実用性はあるんですか?」


「いや、ほとんど無いな。捻じれた刃は削る様な切り傷をつけることは出来るが、その捻じれのせいで相手に刺すと抜けない、切れ味を上げる為に大きくえぐってるから強度も低い、その独特な刀身のせいで鞘も太くなって携帯性が悪い、オマケに同じ大きさのダガーと比べて重い!失点だらけの武器だったよ」


「製作者は何を思って作ったんでしょう・・・・そんなの」


 親方は急に笑い出し、話を続けた


「ハハハハ!実はそのダガーを作った職人と話した事が有ってな。景気が悪かったんで、自分の店を宣伝するために作ったんだとよ。そしたらその凶悪な見た目がうけて、小金持ちからの注文が殺到したそうだ」


「ははは!そんな理由で作ったんですか」


「ああ、だがこの話には続きがあってな…そのツイスト・ダガーは作るのが面倒だ、そんで普通の注文まで手が回らなくなって、今まで利用してくれていた常連客が離れて行ったそうだ。貴族様やなんかの注文を断るわけにはいかなかったからな、しばらくずっとそのダガーを作り続けていたんだと」


「あー…うけ過ぎちゃったんですね」


「で、そんな色物いつまでも売れるわけもなく、ブームが去ったら仕事が来なくなって店を畳んじまったとさ」


「店の為に作ったのに、それじゃ本末転倒じゃないですか」


 親方は呆れた様な表情で頭をかきながら言った


「ま、そういうこった。武器の実用性を無視して趣味で買う奴は多い、コレクションとかな。武器は戦う為の道具、ツイスト・ダガーは武器だが嗜好品としての面が強かった。そのせいで客層がガラリと変わって対応できなかったって話だよ」


「そんな事もあるんですね。油断ならないですね武器業界って」


「ああ、お前がもし独立するような事があったら気をつけろよ」


 ”オレが自立して自分の店を・・・憧れるなぁ”などと考えながらオレは元気よく親方に返事してしまった


「はい!」


 親方は急に真面目な顔になり質問して来た


「おし!じゃあ生意気にも自立心旺盛なヒヨッコはこの刺突特化のダガーを作る時どんな事に注意する?」


 急に本来の話題に戻され、オレは焦ってしまった


「え?は、はい!三面が均一になるように慎重に作ります!鋭すぎて先端が折れない様に太さにも注意しながら」


 オレの答えに親方は大笑いしている


「アハハハ!まあいいだろう。ちゃんと言えたな、合格だ」


「親方、またわざと話をそらしましたね!」


「ハハ!これくらい直ぐに答えられないでどうする!ハハハ・・・じゃあ、実際にダガーを作ってみろ、この三種類を一本づつな」

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