24 (Sat) 12:00 それぞれの過ごし方



 僕たちは駅前のショッピングモールの中に入っているファミレスで昼ごはんを食べていた。僕はハンバーグプレート、ツヅラは照り焼きチキンプレート。ちなみにツヅラは鳥類が好きというよりは単にスズメを溺愛しているだけなので、鶏肉は普通に食べる。


「この後どこ行く?」


「ゲーセンかカラオケ。ローグ・ワン観に行くのでもいいけど」


「それじゃいつも通りのパターンだ」


「じゃあ何、灰慈にはクリスマス特別プランでもあるのかな?」


 ツヅラがニヤニヤと笑う。もちろん僕にそういう気の利いたことを考える能力がないことを知ってのセリフだ。


「それよりツヅラは良かったのかよ。お前なら女の子からデートに誘われたりしたんじゃないの」


「あー、うん。五人くらい?」


——去年より増えてるじゃないか!


「もしかしてお前……それ全部断ったの……?」


「そりゃまぁ、別に誰に対しても気があるわけじゃないのに、クリスマスの誘いにOKなんかしたら期待させるみたいで申し訳ないだろ」


「ああそうですか……僕もそんなセリフ、一度で良いから言ってみたいよ……」


 当然僕には女の子のお誘いなんて一つも来ていない。


「それにしても今年のクリスマスは土日だからみんな張り切ってるよな。中学まで一緒だったタクローとか、ようやくレナちゃんをクリスマスデートに誘うのに成功したらしいぜ」


「マジか! あいつ保育園の時からずっと片思いしてたよな。ヤンキーのくせに恋愛は奥手で」


「こないだたまたま会ってさ、思い切って彼女をホテルまで誘うとか言ってたけど、結局どうなったんだろ。よし、スズメたちに張らせてみるか」


「朝チュンテロ怖っ!」


「はは、冗談だって。タクローの初夜がどうなろうと俺は興味ないよ。クリスマスの過ごし方は人それぞれだ」






 昼食を食べ終えて、僕たちは店を出た。ふと隣の洒落たカフェを見て——僕はぎょっとする。なんか見覚えのある人がいるなと思ったら、赤いワンピースにファーのボレロを着たザマス先生がいたのだ。いつもより化粧が濃く、口紅はワンピースと同じ色をしている。しかし誰かと一緒に来ているわけではなさそうだ。


 やがて彼女の座る席に小さなホールケーキが運ばれてきた。一人で食べるのは難しそうな量だ。しかしザマス先生はフォークを二つケーキ皿の上に並べると、誰かが座る気配のない向かいの席に置いたハンドバッグからスマホを取り出し、ケーキの向こう側にスマホを置いてピースをした。カシャ。スマホからフラッシュが光る。そして彼女はニヤニヤと笑みを浮かべながらスマホを操作している。ちらりと見えたのはSNSの画面だ。


「クリスマスの過ごし方は……人それぞれ、だよな……?」


「あ、ああ……みんな違って、みんないい……」


 僕もツヅラも何も見ていない。そう思うことにした。



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