番外編1 晴れ着の理由

1-1 彼岸花、舞う




 僕たちの生まれた時代は、あまりにも”死”が身近だった。遺灰を花に変える力を持つ、僕にとっては特に。




「じいちゃん。次はどこへ行くの?」


「二丁目だよ。ほら、こないだ空襲があったろう。あれで亡くなった人をまとめて火葬するんだ。灰ノ助や、お前も手伝いなさい」


「……うん、わかった」





 シワシワの手に引かれ、あちこちの遺体置き場を回った。名前も知らない人々のしかばねの山に火をつけて、残った遺灰を花に変える。それがこの時代の花咲師はなさかしのお役目だった。


 たくさんの彼岸花が宙を舞った。


 最初は遺体を見ただけで吐いた。二度目は恐怖で口上こうじょうを忘れ、まだ熱を持っていた灰でやけどを負った。三度目はそれまでと比べ物にならないくらいたくさんの人が死んだ日で、僕はもう考えるのをやめて機械のように花葬はなはぶりをした。




 何度手を洗ってもすすの汚れが染み付いて落ちない。


 戦争が終わった今でも、まだ——




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