ロンドンTAXIバトル

 昔から比べるとかなりレベルが上がったロンドンのレストラン。

 フレンチ、イタリアン、エスニックとミシュランスターが勢揃い。ディナーの選択肢は随分増えました。

 でも今夜はちょっと趣向を変えてテムズ川のディナークルーズ。たまにこういう変化球まぜないと旅もマンネリになっちゃいますからネ。


 桟橋に到着、ガラス張りのウエイティング・ラウンジで乗船のチェックイン。

 ドレスコードがジャケット&タイ着用 なので集っているお客さんの雰囲気もなかなか華やか。


 そんな中にアジアの同胞?らしき男性四人連れ発見。


 でもノーネクタイでちょっとルーズ。髪型や顔つきから見ると、 ひょっとして最近ヨーロッパでよく見かける近隣の大国の方々?服の着こなしも何となくそれっぽいし。多分そう。


 だけどネクタイくらいはちゃんとしてほしいな。全く。


 そんな気持ちがつい言葉に出そうになった、そのとき、四人連れのひとりが手にしていた本が目に留まりました。


 それは”○○の歩き方・ロンドン”


 え、ひょっとして・・いやひょっとしなくても日本人。

 いやあ、口にしなくて良かった。世の中、どこに落とし穴があるか 分かりません。危機一髪。


 出航時間も近づいてきて、そろそろ乗船かな・・と思っていたところへカナリ強烈な一組登場。

 といっても、まあ普通に家族三人連れなの ですが・・。


 とにかくお父さんのインパクト強烈。

 白のスーツに肩まで伸びた白髪ロン毛と顎から伸びる山羊髭。ほとんど毛のない頭頂部。まるでロックンローラー、 ○田裕也ロンドン版。


 そして子供は半ズボンに蝶ネクタイ、お母さんはエンジのドレス。

 二人ともちょっと小太りで、ハリーポッターがやっかいに なっていた家のイヤミな母親と生意気な一人息子のイメージ。


 まあ、待合室の面々を眺めているだけでもけっこう退屈いたしません。


 そうこうしているうちに乗船の時間。

 ジャズナンバーの演奏が始まり船は静かにテムズに滑り出してクルーズスタート。


 船は天井まで全面ガラス張り。両岸の景色が吹き抜けのように広がります。テーブルの上に灯ったキャンドルがガラスに反射してキレイ。なかなかの高級感。


 しばらくすると、船の中では女性のヴォーカルが始まり一層ムーディーに。スタンダードな曲をなかなかの歌唱力。ディナーショー・オン・テムズ川 といったところ。

 客席も時間と(アルコールと?)ともに雰囲気も盛り上がり、イイ感じの乗りに。バンドの前のスペースでは数組のカップルがしっとりとダンス。いいなあ・・。


 そして、船はメインイベント?のロンドンブリッジへ。


 ここで船は旋回してひと回り。ガラス張りの船内にロンドンブリッジの全景が大画面。これは川からじゃないと見れないかも。いや、お見事!

 

 ゆったり二時間弱のクルーズを終えて船は桟橋に帰還。


 さて、ホテルまでのタクシーを・・え、コレみんな待ってるワケ?桟橋前の道路にはカナリの人。空のタクシーがなかなか通らないみたい。


 うーん、せっかくクルーズで上機嫌の皆さんもここで長く待たせたら一変に急降下間違いなし。ちょっとマズイ。

 そこで僕だけタクシー待ち集団から離れて道の上流?でタクシーを捕まえる作戦に。


 50メートルほど歩くと、もう僕ひとり。 ポールポジションです。最初に来たタクシーはゲット確実・・と思っていると、視界に人の動く影。しかも僕のすぐ”先”。

 そこには白のスーツに白髪のロン毛。


 そう、待合室で見た”○田裕也”とその家族。


 でもねえ、それはないでしょ。同じことをやろうとするなら僕の”手前”じゃないですか?イギリス紳士として、その行いはいかがなものでしょう。あ、”紳士”とは 限らないか・・裕也だし。


 だからといって・・彼らの”先”にポジションを取り直すのも大人気ない。そうはいってもタクシーを”盗られる”のもかなりシャク。


 まあ、向こうがそういう態度であればこちらにも考えがあります。


 ここは取りあえずこのままのポジションでタクシーを待つことに。


 そして、しばし。


 ようやく道の遠くに一台のタクシー。でも渋滞しているので、すぐにはコチラまで到着しません。


 ちらっと僕を見てコチラの位置を確認する”裕也”。

(ほんとムカつくコイツ)


 徐々に近づいてくるタクシー。大分近くになってきましたが、まだ手を上げるにはちょっと遠い距離。

 ポールポジションにいる裕也は余裕の態度で”自分の”タクシー を待っています。


 そうはいかないっての、この※▲×※!


 もう少しでタクシーが裕也に気づく、ちょっと手前。ここで行動開始。


 安心しきって背中を見せている裕也の後ろを気づかれないように道のさらに上流へ。 裕也の少し先で車道にで出てタクシーに向かって一直線。


 ここで裕也の視界にタクシーに向かってゆく僕の後ろ姿が大きく映ったハズ。振り向いてみたいけど、まあ我慢。


 ドライバーが見える位置まで近づいて行って手を上げるとタクシーは、当然、僕の元へ。

 これでジ・エンド、 ゲーム・オーバー、サヨウナラ!


 タクシーに乗ってお客さんのもとへ。当然”裕也ファミリー”の前を通ることになります。


 あっけにとられた ような面々、イヤー最高。見たか裕也、アバヨ!

 彼らに向かって中指を立ててファッ・・イヤ、いたしません。僕、”紳士”ですから。


 タクシーに乗り込んだ皆さんも”裕也”の行動にはあきれていたのと同時に、あのままではタクシーを盗られてしまうのではないかと心配していたご様子。


「私たちにもタクシーが見えていてね、ハラハラしていたのよ」


「そう、あのまま”裕也”にとられるのはとってもシャクだったもの」


「でも、ああもうダメ・・と思った瞬間、イガラシさんがスタスタ動き出して・・」


「最高の気分よね、あの”裕也”のあっけにとられた顔。こんな楽しいコトなかなか ないわ。今回の旅行で一番よ!」


 ハイ、喜んでいただけて幸せです。


 ん、でも、これが今回の旅行で一番?うーん・・ハハハ。

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