女はツヨシ・・ ドブロクニク・クロアチア
イタリアのバーリからアドリア海を横断した船がドブロブニクに着いたのは夜が明けるころ。朝もやの陸地に 滲むように太陽が浮かび上がって何とも幻想的。
港から城壁に囲まれた有名な旧市街へは車で10分ほど。まずはホテルでひと休み。
アドリア海の真珠と称されるドブロクニク。旧市街も山の上からの全景もキレイですが、はずせないのはやはり海からの眺め。
陽が落ちるちょっと前、まだ明るいうちに旧市街の入り口にある港へ。
こちらはフェリーやクルーズシップが泊まる朝着いた港と違い、遊覧船やヨットなどが停泊するちいさな入り江のような港。城壁横のお堀みたいなカンジ。
少しずつ暮れてきた空の下、船は城壁を後にアドリア海へ。
港から離れるにつれてドブロブニクの街の城壁の全景が海に浮かび上がってきます。
ちょうど城壁のライトアップがぽつぽつとつき始め、ほんのり薄化粧。海からみるとやっぱり格別。
そして視線をちょっとずらすと、ずっと先まで続く海岸線の先に、今、まさに沈もうとしている大きな太陽。
映画のタイトルバックにでも使えそうな 美しいシーン。
それをビデオ(DVDだった・・)に撮っているYさん。
いつも素晴らしい映像を見せてくれるけどこれもキレイになるんだろうなあ、 と思っていたら・・。
「ねえ、イガラシさん、この波何とかならない!船が揺れて撮りにくいのよ!」
ちょっとオカンムリ。 そう言われてもこればっかりはどうにも・・・。
陽も沈んで少しずつ 暮れてゆく空。船は旧市街の正面に浮かぶ小島のちょうど裏側に。
島のこの辺りはヌーディストが集まる場所だとか。でもこの時間は当然誰もいらっしゃいません。 昼間はきっと目のやり場に困るんでしょうねえ。いや、目を背ける方だったりして・・。
船はちょうど小島を一回りしてまたドブロブニクの港の方へ。
もう空は真っ暗。眼に入ってきた景色が、いやあ、これが何ともゴージャス。
まずは、湾に浮かぶ数々の豪華クルーザー。
昼間のクルーザーは”生きてるうちにいつか一度くらい乗れるかも”くらいの淡い期待(勘違い?) を抱かせるちょっとカジュアルな雰囲気もありますが、夜になると話は全く別。
デッキではシャンパン片手にパーティーやってたり、エレガントで素敵な カップルが、まあうらやましいコトしてたり。
まるで海の上が夜の社交界みたい。さすがにこれはちょっと縁がなさそう・・。
そんなクルーザーが海にちりばめられた宝石のように輝いてます。
そんな海から眼を移すと旧市街の横に広がるドブロブニクの街。
この辺りはわりと高低差のある海岸線。一番下に豪華ホテルのきらびやかな輝き。そして背後の山の中腹まで棚田のように重なる邸宅や店の灯り。こちらは ティアラのような美しさ。
そんなゴージャスな雰囲気のなかを船は再び旧市街の港へ。
海沿いに坂を上がりながらホテルへ。
この坂・・行きは下りでいいけど帰りはけっこうキツイ。でも 少し上がって振り返るとそこには旧市街の夜景。その度に、もう少し上がればもっと素晴らしい景色が待っているはず、とチョット元気が出ます。
そしてホテル近くまで坂を上がって見下ろした夜のドブロブニクは特筆モノ。宇宙に浮かぶ未来都市みたいにちょっとシュールな美しさ。中世の街なのにネ・・。
翌日ドブロブニクの街から海沿いをドライブ。天気もいいし海もきれいで快適。
でもドブロブニクってキレイでいいところ。海岸線を走ると緑の木々の向こうに青い海、その間にプール付きの豪邸 がチラホラ。そしてしばらくすると小さな街、しかもヨットハーバーあり。
アドリア海を挟んだイタリア側に勝るとも劣らない美しいリゾートエリアです。
海岸線から今度は内陸に入って昼食のレストランへ 。
海岸線の高速?を下りて山に向かって走ると、それまでのリゾート感とは打って変わってのどかな田舎。
たまに農家らしき集落がぽつぽつあって、おじいちゃん おばあちゃん達が井戸端会議(?)をしてたり。ほんのり、のんびり。
そしてさらに進むと、これがもう絵本の世界。
徐々に木々も増え、その間を縫うように小川が流れています。そこに架かる、草で編まれたようなかわいらしい橋。静けさの中、鳥のささやきと水の音。癒されます。
車は森の中へ迷い込むようにさらに奥へ。しばらく走った 後、緑生い茂る深い森の中に今回のレストラン。
え、これ現実?くらいの牧歌的な世界。
木々の間を流れる小川のほとりにいくつものテーブル。
そこに可愛らしい民族衣装のウエイトレスさん。小川にはちいさな水車小屋。
そして料理が運ばれてくる太い木の梁の母屋。何とも絵になります。
そして料理もナカナカのもの。スープ・肉料理・デザートとシンプルなの ですが雰囲気にたがわず素朴なおいしさ。
特に肉。牛肉を塊で蒸し上げて、それを切り分けてあるのですが一見するとステーキ。
でも肉の外側がやや ほぐれ気味。見た目からちょっとパサパサ?と思ったけれど、とんでもない、とってもジューシー。かえってイイ感じで油が抜けているので肉本来のうま味が抜群。
しかも”蒸し”なので舌の上でほぐれるほど柔らか。アゴが疲れることなく肉の美味しさを味わうことができる優れものデス。
ケッコウな数のテーブルがあったのですが、肉にさしかかるころからはほぼ満席状態に。こんな森の奥までたくさんのお客さん。
まあ、料理は美味しいし、 何といってもこの小川のほとりのセッティングですからねえ。人気があるはず。
「現実の世界じゃなくて夢でも見ているような不思議な感じになるわね。 ココにいると」とYさん。
同感デス。
夢のようなランチの後、車に揺られてちょっとうとうと。ココ来るときも綺麗だったけど帰りもやっぱり 絵本のよう。
どこからがホントの夢なのかしばらく不明に・・。
どこか遠くから聞こえてくるのが、ああガイドさんの声、と気が付いて現実回帰。
「・・で、この辺りは、あの糸杉のような木が多いんです」
ぼんやり外をみると、確かに・・。
「あの木は大抵、雄の木と雌の木が二本寄り添って立っています」
夫婦の木のお話ってところ、ですか。いいなあ、こういうキレイな場所で 美しい話。ところが・・・。
「でも、ところどころ一本で立っている木もありますよね。あれはすべて雌の木なんです。というのも、 雄の木はパートナーの雌の木が枯れてしまうと自分も枯れてしまいます。でも、雌の木は雄の木が枯れても生き続けるんです。どの世界でも女性 はたくましい、といったところでしょうか」
うーん、女はツヨシ・・。自然の法則なのネ。男子としてはちょっとせつない。
なんか夢もすっかり醒めっちゃった・・。
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