だからモンブランだって!
トコロ変われば品変わる。分かってはいるのですが・・ネ。
モンブランやマッターホルンの入口、イタリアンアルプスの麓アオスタ渓谷のコーニュというちいさな町。冬はいいスキー場になるんだろうなあ、この辺。広い緑の草原が広がってます。
ホテルはその草原の真ん中、ゲレンデ?を少し上がったところにあるので眺望抜群、のはずだったのですが・・。
ホテルに着くと遮るものがないパノラマの景色にご一緒しているYさんたちご機嫌。
「夕日と朝の景色が今から楽しみ!」
ですよね、このロケーション。
しかもYさんたちは別棟のシャレー宿泊予定なのでなおさら。特別室だと聞いてますからネ。
でもシャレーってどこだろう、それらしいものが 見あたらないけど・・。と思ってたらご案内の方、ホテルの前の道を渡って反対側へ。エっ、こっち?
道路を挟んでホテルの向かいのそこには 古い小屋のような建物が。
ここってホテルの敷地?まさか・・。
そのまさか。案内してくれたフロントのレディは明るく”さあどうぞ” といった感じでその小屋の扉を開けました。
中は独特のインテリアながら確かに豪華。広さもスイート並み。部屋は悪くないのですが・・。
でも 基本的に小屋(としか見えナイ)なので道側には小窓しかなく裏側は傾斜の山側。当然景色は全く見えません。しかも暗い。
これがシャレー?
ホテルを出て道を渡るし、しかも何軒かの民家も横に並んでいて人も車も通る完全な生活圏の中。どう見てもまあ田舎のちいさな 民家。
うそでしょ。このホテルを手配したオペレーターの社長(イギリス人)は、シャレーは日本でいえばベストポジションの離れだと・・。
(まあ、眼の前 にあるのも確かに離れですが・・)
Yさんたちは断固拒否。それはそう、景色を楽しみにしていたのにこの”小屋”では・・・。
そしてここからホテルのフロントで日英伊三国関係者でスッタモンダ。
まずは日本(僕)と伊(ホテル)
日:「あれがシャレー?」
伊:「イエス!あれが私たち自慢のシャレーです。ですからホームページにもあの部屋の写真を使っているのです」
(そういえば見たような。でも部屋の中の写真デショ・・)
日:「でも普通シャレーっていうと別棟でも敷地内でしょ?ロケーション違いすぎます!」
伊:「私共のシャレーはこの地方独特の文化を味わってもらうため、民家のようなスタイルになっています。室内のインテリア などは素晴らしいものです」
(それはそうかもしれないけどさあ・・)
日:「とにかく、あの部屋は困ります。 他の部屋を用意してください」
伊:「申し訳ないのですが本日は満室でございまして・・」
日:「・・・・・」
確かにシーズンの真っ盛り。取りあえず交渉 中断デス。
ホテルの外に出るとすっかり仲良しになっていた私たちの専用車のドライバー。
「どうしたんだい?」
事情を説明すると、さすがイタリア人 陽気です。
「そりゃ大変だ。ホテル・ベルビューってことはイタリア語だとホテル・ベラヴィスタ(美しい景色)だろう。あそこ(シャレー)じゃ”ホテル・ノー・ベラヴィスタ” だ、ハハハ」
ウマイ、座布団一枚!って笑ってる場合じゃないし・・。
日伊ではラチがあかないのでオペレーターのイギリス人社長に電話、状況を説明。”どういうことやねん!”とクレーム。
ここから英(イギリス人社長)と伊(ホテル)の二国間交渉。
(雰囲気だすために関西弁風 にしてみました)
英:「お客さんから聞いたけど随分ハナシが違うみたいやないか?」
伊:「何いうてますネン、ちゃんとシャレー言うたやないですか」
英:「そりゃ聞いたけどナ。 シャレーいうたらホテルの付属のキレイなところが普通やろ、民家みたいな小屋みたいなもんシャレー言わんわ」
伊:「そんなこと言われても困りますわ。ここイタリアでっせ、 イギリスちゃいます。たいがいのお客さん、うちとこのシャレー大喜びされますで」
埒があきません。
ホテルのスペシャルだというのはわかりますけどねえ・・でも、やっぱりこのシャレーは無理。
ということで、現実的結論として別のホテルを探してもらうことに。
よく話してみるとこちらのホテルスタッフ親切でいい人。美人ですしね・・ハハ。彼女の頑張りで何とか別のホテルも確保。雨降って地固まる?結果的に互いに笑顔。
ホテル騒動も落着して翌朝モンブランへ。
ホテルから小一時間でモンブラン のイタリア側の麓の町クールマイヨール到着。モンブランの麓という立地にしてはフランス側のシャモニーに比べるとカナリ素朴。雰囲気的にはモンブランの裏側といった カンジ。まあ、山自体に表も裏もないでしょうけどネ・・。
しかし眼の前のモンブランは本当にデカイ。そしてその角度。麓から一気に空へとそびえ立ってます。
それにしても よくこんなところにロープーウェーを・・。
そのロープーウェーに乗って山頂へ。
角度がある分あっという間に雄大な景色が広がります。まるで空に向かって浮き上がる ように雲の上へ。
途中、何度かロープーウェー乗り継いでイタリア側の頂上駅に到着。
うーん素晴らしい解放感。
なんといってもモンブランの山頂近く。ほぼ 360度の見晴です。遠くにマッターホルン(多分・・)も小さく見えます。
景色を眺めているとすぐ横で誰かの携帯着信音。え、ここで?
自分の携帯を取り出してみるとナント見事に三本立ってます。モンブランの山の上で・・。
お客さんに知らせるとEさん、早速お友達に電話。
「今、モンブランにいるのよ。何処のモンブラン?何言っているのよ、モンブランはモンブランよ。アルプス のモンブランよ。違うって、喫茶店のモンブランでもケーキのモンブランでもないわよ。だからモンブランだって!」
うーん、やっぱり言葉ってなかなか厄介デス・・。
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