ロンダに行って渓谷を見なかったって、それ・・・  ロンダ・スペイン

 ホテルで呼んでもらったタクシーの老運転手は、行く先を告げると ”オー、ロンダ!”と言って人懐っこそうな笑顔をコチラに向けました。


 それもそのハズ。ホテルのあるエステポーナからロンダまではけっこうな距離。まあ、スペインの田舎では”オイシイ”客。当然機嫌は良くなろうというもの。

 この辺りではあまり見かけない日本人に最初ちょっとカタイ表情だった老運転手の頬もゆるみ車内は柔らかい雰囲気に。


 快晴の素晴らしい空の下。車は海岸線から内陸へ。


 ロンダはスペインの地中海側コスタ・デル・ソルと呼ばれる海岸線 から小一時間ほど。ロンダ渓谷という深さ150メートルの峡谷の両側に位置する美しい街。

 そして峡谷にかかる何本かの橋が両側の 街をつないでいます。

 その橋から、そして対岸から見る街の美しさと峡谷の絶景がロンダの一番の見どころ。


 ところが・・。


「ロンダには行ったのだけど峡谷は見ていないの」

 えっ?


「以前行ったときは 闘牛場を見て・・それからすぐにマルベーリャに行っちゃったのよ」

 ホントに?


「だから崖の上にある街だということも、 そんなキレイな峡谷があることも知らなかったのよ」

 信じられない・・。


「だって○○サン(そのときの添乗員)そんなこと 何も教えてくれなかったのですもの!」

 お怒りデス。


 確かに闘牛場も有名ですがロンダで峡谷を見ていないとは・・。

 まあ、パリで凱旋門とエッフェル塔とシャンゼリゼを抜かすようなもの。早いハナシ、何しにロンダへ・・。


 というわけで、Yさん御一行を二度目のロンダにお連れすることに。

 (なかなかココに二回行く人は・・)


 ロンダに向かう道すがら綺麗なグリーンがアチラコチラに。

 日本ではあまり知られていませんが 、コスタ・デル・ソルはヨーロッパでは有名な”ゴルフ銀座”。スペイン国外からもたくさんの人たちがゴルフを楽しみにくる リゾートです。

 確かにあまり湿気のない温暖な気候だし、この辺りでのゴルフは快適だろうなあ。


 そんな緑もロンダに近づくにつれて少なくなり、徐々に荒野のような土地が広がってきます。

 うーん、フラメンコギターが何ともピッタリ きそう。そうこうしているうちロンダ到着。


 まずは運転手さんオススメの教会へ


 教会の前はちょっとした広場。

 その周りを、いかにも歴史を感じさせる建物が囲んでいてとてもいいムード。陽だまりの中、 風も時も止まってマス。


 こじんまりとした見た目とは裏腹に教会内はケッコウな広さ。そしてその美しさ。祀ってある聖人に よっていくつかの祭壇があるのですが、そのどれもが立派です。

 そして、まあ教会内がよく手入れされていること。そのせい もあって心地よい空気の流れる静謐な空間。心が洗われマス。


「いい教会ネ」

 本当に。


「でも・・ココも前回 来ていないのよネ」

 あらら・・。


「こんなキレイな教会なのに、○○サンどうして見せてくれなかったのかしら!」

 Yさん御一行、怒り再点火。

 まあまあ・・お気を沈めて。


 雰囲気のある路地を抜けて峡谷のメインスポット、街の中心でもあるヌエボ橋へ。


 橋から見下ろす百メートル以上と 言われている断崖のパノラマは確かに絶景・・なのですが、高所恐怖症気味の僕にはちょっとハード。


 だけどもまあ、よくこんなトコロに橋を・・。しかも 石橋。

 完成まで40年以上かかったそうですが、その作業を想像しただけで卒倒しそうです。


 でも橋の両側に街があるのでどちらを見てもキレイ。崖の際まで張り出すように建物が 並んでいて中にはテラス付きで絶景を楽しめそうなレストランも。あそこで一杯飲みながらのディナーは最高 でしょうネ。ちょっとコワイけど・・。


「すごい景色ネ、何とも言えないわ、 この景色は・・」

 Yさん御一行、絶景のパノラマには言葉を失ってます。このまま怒りも消しちゃって・・ネ。


 断崖の石橋を渡って反対側の街へ。


 橋を渡った角には立派なホテル。有名なロンダのパラドールです。

 パラドールは古城 や修道院などの歴史的建造物を国が買い上げたりしてホテルとして再生したもの。

 わりとリーズナブルな料金でキレイに修復された 文化遺産に泊まれることで人気があります。


 ロンダのパラドールは1700年代建造の元市庁舎。さすがに堂々とした外観。

 そして何と言ってもそのロケーション。絶壁の突端に建っているので眺めは最高、数あるパラドールの中でも有数の人気があるのも ナルホドです。


「ここに一泊しても良かったわね」

 確かに。


「でも、この景色を見るまでロンダがこんなにいいトコロ だと分からなかったし、ロンダに泊まるといわれても反対したかもね」

 うーん、難しいところ。


「あら・・あれって」

 Yさんが指さしたのはパラドールのちょっと先の大きな建物。


 あ、そちらの方は見ないほうが・・。


「あれ、前回来た、あの闘牛場じゃない?」

 ピンポーン・・。


「この峡谷って闘牛場からすぐ そばじゃない!」

 アララ雲行きが・・。


「こんなに近いのにどうして○○サン(前回添乗員)ここ見せてくれなかったの!」


「いい加減にしてよ、闘牛場から百メートルもないじゃない!」


「信じられない、どう考えたって闘牛場よりコッチでしょ!」


 Yさん御一行、怒り大爆発。


「○○(もう呼び捨てデス)許せない!!」

 怒声三重奏!


 心中お察し致します。

 でも、僕、知~らない!

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