第19話 小生と楽園崩壊

 小生、コタツでぬくぬくしていたら、そのコタツが突然爆発して驚く。

 自動防御結界を発動させながら、小生はゴロゴロと畳みの上を転がった。


「ちっ、しぶといやつめ」


 久しぶりの未来少女である。

 ちなみに小生を殺そうとしている殺人未遂犯なのだ。

 警察仕事しろ。


「この時代でも怪人は怪人のようだ」


 えーと、何とか星の戦闘用アンドロイド。

 ちなみに小生を殺そうとしている殺人アンドロイドなのだ。

 SF警察仕事しろ。


「恨みを晴らすために帰ってきたぞ」


 えーと、えーと、誰だっけ?

 ああ、思い出した。

 SF警察の同僚である。

 SF警察の警察仕事しろ、と言いたいが、そんな組織は存在しないのである。


 恨みと言われても小生には微塵の覚えも無いが、たぶんイスカンダルへとテレポーテーション(空間転移魔法)したことかもしれない。何か宇宙海賊みたいな服装になっとるし、たぶんいろいろあったのではないだろうか?


「何事じゃ!」


 今頃、ハカセ登場。

 敵が三人、味方もどきが一人。

 小生ピンチ、なのだった。


「馬鹿な! 侵入者じゃと。一体どうやったのじゃ!」


 まったくである。 

 さすがのハカセの技術も、未来の技術に勝てなかったのかもしれない。

 ハカセを超えるとは、未来恐るべし。


「これはハカセではないですか! 私は未来のハカセの命令で、小生を殺しに来た者です。この研究所へのアクセス方法も未来のハカセに教わりました」

 

 獅子身中の虫、灯台下暗し。

 未来少女の発言により、小生全ての元凶を知る。


 つまり、ここでハカセを抹殺すればタイムなんちゃらにより、小生の抹殺命令は取り消されるわけである。一人の命で一人の命が救えるならば、小生は苦渋の決断を下すしかないのかもしれない。特に自分の命の場合は。


 小生、こっそりと光の剣と氷の剣を取り出す。

 盗賊ギルドと間違えて、暗殺ギルドの教習を受けた経験が今生かされる時だろう。


「こら、待つのじゃ。わしを殺したところで、未来のわしが消滅するという保障は無いぞ。未来からの介入が起きた時点で世界は分岐したと考えられよう。今のわしと未来のわしはもはや別人であり、そもそも話を聞く限りでは、そこの少女と異星人のアンドロイドの言う未来も別のものである可能性が高いのじゃ。おそらく今この時代こそが世界の分岐点の一つなのであろう」


 小生、ぽかーん。

 未来少女、尊敬の眼差し(理解していない)。

 アンドロイド、頭から煙(戦闘用のため)。

 SF同僚、欠伸(アホ)。


 ハカセの呟きが延々と続きそうなので、小生は天地二刀流の構えを取り、「一行での説明を求む」と笑顔で告げた。


「つまり、わしはお主の味方じゃよ。ぽちっとな」


 ハカセがスイッチを押すと、「侵入者迎撃システム起動」というアナウンスと共に様々な武器が壁や床や空間から出現した。

 そして、なぜか小生も含めてハカセ以外の全員が攻撃され始めたのだった。

 なんでやねん、と叫びたくなったが、その暇すら無いのである。


「あ、そうじゃったそうじゃった。そもそもお主用の迎撃システムじゃから、お主を標的から外すのを忘れ取ったわ。しばらく待て。十分ほどで解除してやろう」


 残り時間は十分。

 その間、小生は迎撃システムを防ぎながら、敵三人を相手取らなくてはならないらしい。えーと、これは何てタイトルのSFくそゲーですか?


 小生、覚悟を決め、秘奥義である分身の術を使う。

 三人に増えた影小生に、光の剣と氷の剣とチェーンソーをそれぞれ与えた。

 敵は巨大だが、力を合わせれば勝てない敵などいないのである。


 敵を指差し、告げる。 

 小生たちの戦いはこれからだ。

 未来への坂道はどこまでも続いているのである。

 

 <小生とSF警察 完> 


 こそこそ。

  

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