第23話 SF原点

 迷ったときは原点に戻れ、と知らない誰かが言っていたような記憶があったりなかったりするので、ちょっと不気味だがその言葉に従い、原点に戻ってみることにした。もしかすると、小生は洗脳されているかもしれないが、気にしてはいけない。


 原点とはつまり、『SFとは何ぞや?』という問いである。


 この疑問をSF警察で投げ掛けたときは、最終的に『組織とは内部から崩壊するものである』という結論しか得ることができなかったのだが、まあ、夏の扉を探す物語が面白かったので、あれはあれでよしとしよう。


 SFの元締めであるSF警察が役に立たなかったので、こうして小生がSFについて考えなければならない事態に陥ったのだが、その結論が一向に見つからないというのは、正直どうかと思う。


 少なくとも一週間考えれば結論が出ると思っていたのでござるよ、小生は。

 これだけSFというジャンルが定着し、毎年のようにSF映画が作られるようになったというのに、『SFとは何ぞや?』という問いに答えが見つからないというのはどういうことだろう。


 これは(小生のせいではなく)SF警察の怠慢ではなかろうか?

 かの組織は『これはSFじゃない』とかSFを否定する仕事はやってきたのだが、逆に『これはSFである』というように、SFを肯定する作業を怠ってきたのではないか、と小生は考えた。


 おそらく最初は明確な基準があったのだろう。

 だが、否定と変化の日々にそれが失われてしまったのだ。


 その結果が今の『SF大航海時代』なのである。

 SFという海原へと誰もが真理を求め旅立つ時代なのだ。

 まあ、大嘘なのだが。


 小生の見事なSFジョークはさておき。

 今の今までSFに対する(深い)考察を続けた結果、


『宇宙海賊はSFの一部である』


 というようにSFの一部を指摘するという偉業を達成したわけなのだが、この結論が何の役に立つのかということに関しては、未だ不明である。

 

 だが、研究と言うのはそういうものであり、たぶんそのうち役に立つだろうと考えて、人類のために研究成果を残しておくものなのである。残念なことに、小生は研究者ではないので詳しくは知らん。


 小生は他にも『本質的SF』とか『小道具的SF』という言葉も生み出したのだが、これまた何の役に立つのか不明と言う困ったちゃんなのである。


 その果てに、宇宙がSFの原点であると考え、宇宙の旅を続けているわけなのだが、そもそも『宇宙が出てきてもSF作品ではない問題』にぶち当たり、『宇宙=SF』という公式が成り立たないという事実に、小生は『がくぶる状態』であった。『宇宙こそSFである』という最終結論すら見失い、『出口はどこにあるの状態』でもある。


 もはや小生に逃げ場なし。

 ファンタジー界とミステリー界にすらSFの魔の手が忍び寄っている時代に、SFから逃げるすべはない。それは『どうせみんなSFになる』という恐るべき未来を予見してしまうほどである。恋愛界ですらかなり侵食が進んでいるだろう。


 そのうえSF警察の権力は拡大するばかりであり、権力が拡大するからこそ権力争いが起きるのだが、小生の身近には権力が無く、暴力の嵐ばかりが吹き荒れるのはどうにかして欲しいものである。


 最終的解決法としては『SF作品=ちょー面白い作品』という公式を発表すれば、SF学界で賞賛の声を浴びえることができるだろうが、それは本質的解決にはならない。もしそれをしてしまえば、世界のルールが崩壊し、恐るべきカオス世界が訪れてしまうだろう。具体的には『第三世界の長井』みたいな世界となる予定。

 

 さて、思考に思考を重ねたところで、結局は『SFとは何ぞや?』という問い掛けに戻ってきてしまうのだ。これぞループ構造。正しい解決法を見出すまで抜けられない時間の逆襲。RPGなどの無限ループとはまた別である。


 小生が導き出す現在までの結論は『宇宙とか時間とか月とか海底とか地下帝国とか超能力とか火星とか人工知能戦車とか人工知能飛行機とかロボットとかアンドロイドとかサイバーとかテクロノジーとか宇宙海賊が出てくる作品。全部出てくれば間違いなくSFである』という『じゅげむじゅげむ』みたいな結論になってしまうのだが、これも本質的解決ではなく、部分的解決である。


 だが、部分的解決の集合体が本質的解決でもあるので、これでいいかと考え直す。

 シャーロックホームズ66世曰く、


『起こり得る現象の全てを考えれば、その中のどれかが正解だろう』


 至極当然である。

 理論的にはどれがSFなのかということを考えていけば、いつか正解に辿りつくはずなのだ。可能性が皆無でないのならばなおさらである。

 

 おお、これぞSFっぽい結論ではなかろうか。

 感動してめっちゃ気持ちいい気分である。

 

 まあ、それが1000年後だとしても小生は驚かないが、たぶんその頃にはSF警察も崩壊しているので、なるべく早めに結論を見出したいものである。

 

 小生は決意を新たに奮起することを心に誓った。

 でも、今日のおやつがソフトクリームだったので、どうでもよくなった。

 あまーい。


<船長は今日も馬鹿でした、まる>

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