第24話 小生ハザード

 小生が『超時空ゴジラ会議』で忙しい日々を送っていたら、宇宙船の内部にゾンビが溢れていた。自分でも何を言っているか分からないのだが、紛れもない事実である。ちなみに『シン・ゴジラ』は面白かったです。


 突然、ゾンビが大量発生するとは『SF的だなー』と思っていたが、よく考えれば『ファンタジー』でもゾンビが出てくるし、『ホラー』でもゾンビが出てくるので、別にSFでは無かったと反省。


 反省している間にも、ゾンビは小生に襲い掛かってくるものだから、本当に困ったものである。『肉食かよ』とツッコミを入れてみるが、反応がまったく無いので、以前勇者から借りパクした聖剣で滅殺する。


 だが、切られたゾンビは青白い炎で浄化されながらも断末魔の叫び声を上げ、それを聞いたゾンビが集まってくるという無限ループに突入。


『ゾンビ無双』というゲーム企画を思いついたのだが、『似たようなゲーム』があったのを思い出したので没にした。


 それにしても、ゾンビが人を襲うというのはどういう理屈なのだろうか?  

 ファンタジー的やホラー的に考えてはいけない。あくまでもSFゾンビならば、『SF的解答』が必要である。


 単純な答えならば『食料』という一文字。

 つまり、『エネルギー源』である。


 これは真っ当な答えなのだが、小生の知る限りでは餓死したゾンビを見たことが無い。そもそもゾンビが餓死するならば、多くのゾンビ作品が微妙になるので、たぶん『エネルギー源』ではないと反論。

 

 次に考えられるのは、『繁殖』という考え方だ。

 ゾンビがゾンビという存在を増やしていく。


 多くの生命体が自分と同じ存在を増やそうとするのだから、ゾンビにもそういった本能があるのかもしれない。特に反論が思いつかないので採用。今日の小生はなかなか冴えているのである。


 あ、自画自賛しながらゾンビと戦っていたら、SF警察の同僚らしきゾンビを切ってしまった。一瞬だけ『悪いことをしたかなー』と思ったが、ゾンビになった時点で別人なので、気にしないことにした。先手必勝である。


 ゾンビの世界では温情を見せた奴から死んでいくのだ。今まで幾度もの『ゾンビハザード』を切り抜けてきた小生が言うのだから間違いない。


 ちなみに今までで一番大変だったゾンビ事件は、『魔界から名高い剣士たちが復活してきた事件』である。あの事件は小生を含めた『七人の魔法使い』が『魔界の門』を閉じたことで解決したのだが、さすがに今回の件とは関係ないと思う。


 SF的に『魔界の門』はどうかと思うのであるし。

 つまり、今回の件には『SF的原因』があるということだ。

 

 ミステリー警察にいた小生の頭脳が閃く。

 こんなことをする人物に心当たりがあった。


 犯人は――どかーん。

 

 小生が犯人を指摘しようとすると、周囲のゾンビごと小生は吹き飛ばされた。犯人による『小生殺人事件』の発生である。探偵以外で重要な証拠を見つけると殺されるのは、ミステリー界の常識だったのを忘れていた小生であった。


「お、何じゃ。お主いたのか」


 久しぶりのハカセの登場である。

 隠れ家から逃亡したときに、なぜか一緒についてきたのだ。

 今回の『ゾンビハザード』は間違いなく、ハカセのせいに違いない。


 最近は大人しくしていたので、未来で小生を殺せと命じたことを反省しているのかと思えばこれである。狂科学者というのは、静かにしているときが一番危ないということを小生は学んだ。


 小生がぷりぷり怒っていると、なぜかハカセに逆切れされた。

 曰く『人類の食糧問題を解決する偉大な研究を理解できないとは何事じゃ!』ということだそうだ。


 詳しい説明を聞くと、人工的に仙人を作るという計画らしく、それをホムンクルス(人格無し)に適用したところ、自己増殖する永久型人類が生まれたらしい。『食べない、飲まない、休まない』という今の人類を凌駕した性能という話だ。


 しかし、話を聞く限りでは小生が襲われる理由が分からない。『食料』でもないし、『繁殖』でもないならば共存が可能だろう。宇宙は広く、新しい種族が誕生したとしても、わりとよくある話なのである。


 もしかすると『怨恨』だろうか? ちょうど小生の目の前に小生の命を狙おうとしている人物がいる。これは間違いない。


 小生は聖剣を構える。

 長い因縁を断ち切るときが来た。


「ま、待つのじゃ! これはわしの命令で動いているのではない。自分たちが神に選ばれた生命体であると信じているため、他の生命体を皆殺しにしようとしているだけなのじゃよ」


 余計性質が悪い気がしないでもないが、小生だけが命を狙われているのではないならば、よしとしよう。聖剣からは残念そうな思念が流れてくるので、これは聖剣じゃなくて『邪聖剣』かもしれないと思った。


 まあ、発明者ならばいざというときの対処法も容易しているはずだ。

 これにて一件落着。疲れたのでさっさと寝よう。


「はへ? そんなものないぞ。あれは突然変異じゃからな。さすがのわしでもすぐには対処できん。まあ、半年もあれば何とかなるじゃろ」


 勝手に増えていく生命体を半年も放置すれば、とんでもないことになるような気がするのは小生だけだろうか?

 

 仕方が無いので、小生は人工知能さんの力を借りることにした。

 むしろ船内で増殖しているのだから、何とかしなさーい。


『現在のところ、運行の妨げになっていないため、積極的な対処は不必要と考えます。人工知能である私からしても、人類進化の可能性を観察するのは興味深いことかと存じます』


 残念なことに、この船内に小生の味方はいなかった。

 かつて共にゾンビと戦った仲間たちが懐かしいが、懐かしがっている間に死ぬので止めた。ルールその一『感傷的になるな』である。


 うーむ、これはどうしたものか。

 これが『ファンタジーゾンビ』ならば小生の神聖魔法で一気に成仏させてやれるのだが、『SFゾンビ』になると厄介なのだ。


 他にも『コメディゾンビ』とか『ホラーゾンビ』とか、ゾンビの種類は多くて困る。それぞれ対処法が違うというので二度困る。小生が『ゾンビハンター』を引退したのも、多角化するゾンビ界についていけなくなったからなのだ。


 もともとゾンビはホラー界(ファンタジー界)の住人だったのだが、どこかの物好きが『化学系ゾンビ』を誕生させたため、SF界にも進行して来たという経緯があったりする。


 基本的に『SFゾンビ』の方が倒すのが面倒なのである。放置しておくとなぜどんどん進化していくため、他のゾンビよりも厄介なのだ。人類を絶滅寸前まで追い詰めるのも、大体は『SFゾンビ』なのである。


「セイメイヲホロボス」


 すでに言葉まで学習し始めたので、小生は『対ゾンビ最終奥義』である『閻魔大王三世』を召還することにした。例えどのゾンビであろうとも、それが死体であるならば『地獄の主』に叶う道理は無い。科学的見解なので『SF』である。


 久しぶりに会話した閻魔大王三世の話だと、何でも地獄は人手不足なので、ゾンビは大歓迎という話らしい。仲介料として地獄ドルをゲット。


 これぞウィンウィンの関係。

 めでたしめでたし。

 

<ゾンビはSFですか?>

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