第13話 SF弧円理論騒動


 闇夜を切り裂くライトサーベルの光。

 それを華麗に避ける小生。


「人類皆平等!」


 小生は手を翳し、魔法の言葉を唱える。

 これは敵を操る超能力で、万物に宿るパワーを使うのだ。

 別名『仙術』である。


「小生死すべし。慈悲は無い」


 未来少女はライトサーベルで小生を斬り付ける。

 仙術役立たず。 


「待て、しかして希望せよ」


 小生は意味の無い言葉を言いつつ、光の剣で応戦する。

 エルフ先輩から麻雀で頂いた光の剣は、なぜかライトサーベルと同じ外見なのだが、これは光の剣なのである。ファンタジー武器なのだ。


「よくも騙してくれたな詐欺師め!」

「詐欺師とは失敬な!」


 小生は怒った振りをする。

 実際、SF警察から詐欺同然に給料を頂いているのだ。

 事実を指摘されると辛い。


「私を騙して時間稼ぎをしている間に、破滅のレポートを提出するとは。あのとき殺しておくべきだった」


 そうなのである。

 前回提出した『SF孤円理論』のせいで、SF警察の内部抗争が激しくなってしまったのだ。小生不覚。たまに仕事をするとこれである。

 

 さて、この前の文章がなぜSF警察の抗争を激しくしたかというと、『我こそが最初の円である』という主張を、全ての派閥を唱え始めたせいなのである。


 これで未来が大変なことになるらしく、どうやら全ての元凶は小生の考えた理論のせいなので――あるわけがなかろう。

 あんな適当な文章で争うならば、どうせそのうち他の理由で争っていたはずだ。その理由に小生を勝手に使わないでもらいたいものである。


「ということで、そもそも小生を今殺したところで後の祭り。過去の小生を説得するがよろしかろう」

 

 実に論理的な意見だが、未来少女はもう過去へは戻れないという適当な理由で論破してきた。小生、その科学的根拠を求むが、何を言っているかさっぱりだった。


「後のことは、おまえを殺してから考える」

「未来人だというのに、蛮族理論は止めたまえ。もっと理知的に行こうではないか」


 未来少女はライトサーベルを二刀流に展開。

 小生は光の剣を一本しか頂戴していないので、明らかにピンチである。

 氷の剣も頂戴すべきだった、と反省。

 今度あったら倒してでも奪おう。


 絶体絶命かと思ったそのとき、見たことがある光が視界を染めた。

 めがーめがー、という古典的な展開にはならなかった。  


「へ、変態だ!」


 未来少女が叫ぶ。

 光が晴れた後、そこには一人のマッチョ全裸男がいた。

 

「おお、これは小生の味方の登場か!」


 小生、喜んだが、全裸男が持っていたショットガンで撃たれ吹き飛ぶ。

 うひょーごろん。魔法結界を展開していなければ即死である。


 って、こっちも敵だった。小生の味方はどこにいった。

 と思ったら、未来少女も撃たれていた。

 世紀末だなぁと思った。『北斗の拳』はSFなのかなぁとも思った。


 だが、未来少女はライトサーベルをぶんぶん振り回し、弾丸を打ち落とす。

 おお、敵ながらカッコいいのである。  


「おまえは味方じゃないのか!」


 未来少女と全裸男の攻防は続く。

 現代で未来少女と全裸男が戦う話はSFだろうか?

 微妙である。コメディでよかろう。


「我々はペコペラテリアン星の戦闘用アンドロイド。未来において、我々に対抗する小生と名乗る怪人を倒すべくこの時代に来た」


 それは小生とは別の小生なので、別の場所で戦って欲しいものだ。

 というわけで、小生はステルス迷彩と空を飛ぶ魔法を使用して逃げ出した。


 待て、と言われるが、待てと言われて待ったら殺されるのである。

 正直者を殺そうとするなんと狡猾なトラップ。


 正直者の小生を殺そうとするなど、悪い奴らだ。

 小生、しばらく身を隠すことに決定。

 この文章が誰かの目に留まるのはいつのことになるやら?



<ムササビの術>    

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