番外編1 小生とファンタジー

 小生、SFについて考えるに疲れたので、古巣であるファンタジー同好会に一旦帰省することを思い付く。


 ファンタジーに関して勇者歴の長い小生に隙はなく、幾度と無く世界を救ってきた功績を認められてもいいのではないか? と少しナルシスト気味になっているぐらいである。


だが、小生は知らなかったのだ。

ファンタジー界は知らぬ間に戦国時代に突入していたということを。


「古典こそがファンタジーよ。エルフ、ホビット、穴倉に住んでる奴。まさに夢とロマンがあるわ」

 エルフ先輩がそう語れば、


「いいや、現代にいる戦士や魔法使い。これこそが燃える展開だ」

 同年代の現代魔術師が唸り、


「違うね。異世界に召還され、お姫様を助ける展開が素晴らしい」

 妄想後輩が変なポーズをした。


 熱い熱量に小生はぽかんとした。

 小生、今まで何も考えてこなかった。

 ファンタジーはファンタジーだった。


 小生、エルフやホビット、ドワーフが好きである。

 ボーナスを得ようと頑張ったし、ザ・ファンタジーという感じがする。


 小生、現代で戦士や魔法使いが活躍する話が好きである。

 周りに隠れて活躍するヒーローのようで憧れる。


 小生、異世界に召還され、お姫様を助けたことがある。

 実体験があるため、容易く感情移入してしまう。


 小生は困った。同好会の扉をそっと閉めた。

 そして、なぜ人は争わなければならないのかということを考えた。

 それはもうファンタジーとは関係ないことだった。


<小生とファンタジー 完> 

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