第16話 猫型ロボットのお話(後編)

 さて、何だっけ?

 小生、物覚えが悪いのですぐ忘れる。

 確か『猫型ロボット』がタイムパトロールに捕まらない理由だった気がする。


 一つ目は『猫型ロボットこそがその世界の神様である』という今考えると頭がおかしい結論である。

 まったく、そのときの小生は何を考えていたのだか。たぶんミカンのことを考えていたのだろう。ミカンは美味しいね。


 さて、もう一つの理由はもっと真面目な話である。

 それは


『未来の世界では『のび太くん』と『猫型ロボット』を会わせる必要があった』


 という仮説である。

 つまり『のび太くん』に変化を齎すことで、未来の世界が救われるという展開が考えられる。タイムパトロールは『猫型ロボット』を捕まえないだけではなく、裏でこっそりと協力していたのかもしれない。


 それを示唆するように、『のび太くん』と『猫型ロボット』が関わることによって、世界に影響を与えるようなエピソードがある。

 

 そう、それは劇場版(大長編)の物語である。

 彼らはその物語で様々な『敵』と戦う。


 もし『のび太くん』たちがいなかったとしたならば、その物語たちは一体どんな結末を迎えただろうか?

 その結果、世界はどうなっていたのだろうか?

 

 それこそが、『猫型ロボット』が『のび太』の前に姿を現した本当の理由なのではないだろうか。普段の物語は『のび太くん』に様々な道具を使わせることによって、劇場版で敵と戦うときの練習をさせていたのかもしれない。


 未来人は全てを知っていたのである。

『のび太くん』と『猫型ロボット』が出会い、世界を救っていく『予言』のお話。  予め定められた約束事のように、現在を導いてく物語。 


 それはまるで『のび太の大魔境』の『あのシーン』のようではないだろうか。

 あれこそがこの物語の根幹を示唆していたのかもしれない。

 

 つまり、逆なのである。

『猫型ロボット』は『未来を変える為に訪れた』のではなく、『未来を変えない為に訪れた』というのが正解だったのだ。

 世界を未来へと繋げるための壮大な計画だったのだ。

 

 全ては計画通り。

 誰かに決められたシナリオの世界。 

 それは見方によっては虚しいことかもしれない。


 だが、彼らが過ごした時間は彼らだけのものである。

『のび太くん』が『猫型ロボット』と出会ったことが定められた運命だったとしても、そこで過ごした日々はけっして無意味ではないのだ。


 騒がしい日常を過ごし、危険な冒険に旅立ち、いつか大人になる。

 その過程で得たモノは、きっと彼らだけの『宝物』だろう。

 そこには運命なんて言葉を跳ね返すほどの思い出があるに違いない。

 と小生は思う。

  

 

 という二つの仮説をハカセに聞かせたら、


「仮説にしても根拠が薄過ぎるじゃろ。もっとしっかりと考察し、論文を練り上げるがよい。少なくとも作品を百回は読み直すのじゃ。この程度ではSF考察学会を満足させることなどできぬぞ」


 と言われて、小生諦め、『もーれつア太郎』を読むことにした。

 不思議な世界観に、もしかするとこの作品はSFではなかろうか、と思った。『もーれつア太郎』はSFですか?


<伏線ではない>

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