第2話 タイムリープとSF警察

 小生が喫茶店でパフェを食べていると、どこかで見たような男が声をかけてきた。

 少しだけ灰色の脳細胞で考えてみたが、思い出せぬので、パフェを食べ続けることにした。


「俺だよ、俺。SF警察で同僚だったじゃないか」


 なんと、彼は小生に光線銃を向けた裏切り者だった。

 ここであったら百年目、このうらみ晴らさずにおくべきか。と思ったが、パフェがとても美味しかったので、小生はどうでもよくなった。

 争いは何も生まず、パフェは幸せを生むのである。


 さて、小生は出来る人間なので、SF警察の様子を聞くことにした。それは軽い調子で聞いたのだが、元同僚は険しい顔で『実は』と言った。


 彼は何かよく分からない言葉で、よく分からないことを、よく分からない風に言っていたが、簡単に言えば『SF警察』は、派閥争いに発展しているらしい。


 そのうえ、なぜか小生は未だにSF警察に所属しており、いつの間にか幹部になっていたようだ。小生の貯金が増えた理由が今判明した瞬間である。


「それで最近何かSF作品を読んだのかい?」

 

 現同僚がそんなことを聞いてきた。

 小生は正直に、アニメ映画の『時をかける少女』を見たと告げた。すると、同僚は「それはSFじゃない」と叫んだ。SF警察の人は、なぜかよく叫ぶのである。


「それでは、あれは何というジャンルになるのだ?」


 小生は純粋な好奇心で、同僚に尋ねた。


「あれは青春ミステリーだ。SFではない」


 確かにあれは青春をしていた。

 確かにあれには謎があった。

 小生は一瞬納得しかけたが、すぐに反論した。


「だが、あれには時間を飛んでるではないか。時間旅行はSFだろう」

 

 同僚はまた激怒。光線銃を小生に付き付けながら、「SF要素を小道具に使うのはSFではない」と怒鳴り始めた。


 SF要素があれば、それはもはやSFではなかろうか?


 小生はそう思ったが、光線銃に撃たれたくないので、魔法の言葉でその場を何とか誤魔化した。相変わらず同僚はいい人間だった。

 ついでに、パフェを奢って貰い、小生たちは別れた。


 SFの道は険しく複雑のようだ。理解したい気持ちと理解したくない気持ちがせめぎ合い、最終的にはどうでもよくなって、家に帰ることにした。


 小生、家に帰ってから、曜日をバラバラに過ごす小説を読んだ。

 

 これは青春だろうか。ミステリーだろうか。SFだろうか。

 まあ、面白かったので、やっぱりどうでもよかった。

 

 <二巻>

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