第18話 SFアンドロイド
そして、十年の月日が流れ、アンドロイドが完成した。
ああ、長い道のりだった。
走馬灯のように思い出される思い出。
懐かしくも輝かしい日々。
カルーアミルクが入ったグラスを片手に、ハカセの位牌を前で乾杯をする。
ハカセ、我々の夢が――。
「このたわけ者が!!」
という妄想をしていたら、生きているハカセに殴られる小生。
ちなみにカルーアミルクが入ったグラスも妄想であり、実際は抹茶オレである。
実に美味。
「まあよい。今日は人類の歴史が変わる記念すべき日じゃ。馬鹿の一つや二つ笑って許してやろうではないか」
笑うどころか殴られた気がする小生だが、それを指摘すると久しぶりに光線銃で撃たれるので止めた。
小生は賢い人間なのである。つまり、賢者なのだ。遊び人とも言う。
それにしても、目の前にある完成したアンドロイドは、なんかアンドロイドっぽくない気がする。具体的にこれはアンドロイド(人造人間)ではなく、ロボット(人造メカ)ではないかと思うのだが、その辺りはどうなってるんだろうか?
「ふん、アンドロイドが人型なのは、あくまでも擬態に過ぎぬ。人間社会になじみ易くするための媚じゃ。その点、わしの作品にはそんな妥協は必要ない。見よ、この完璧な機体(肉体)を!」
小生、見ろと言われたので見た。
だが、感想を言えと言われなかったので言わなかった。
小生、真の芸術とはけっして人に理解されていけないことを悟った。
「ロボット型人造人間『ハイパースーパーメガマックス君』は完璧じゃ。前しか見れぬ人間とは違い、全てを見渡すドーム型の頭部。不自由な人間の腕とは違い、無限に回転するドリル型の腕。二本足という不安定な脚部ではなく、八本足という全てを支える完璧な足。まさにわしが生み出した完璧な人類がここにあるのじゃ」
人類とは何か?
小生は壮大な問題に取り掛からなくてはならないらしい。
取りあえず、遺伝子で判別してはどうだろうか?
SF的科学が進歩した現代では、人の遺伝子なんぞちょちょいのちょいなのである。どのぐらいちょちょいのちょいかと言うと、クローン人間を簡単に作れるようになったため、重要人物を暗殺してクローン人間と入れ替えるという問題が多発したほどちょちょいのちょいなのだ。
いや、待てよ。
ハカセならばロボットに人の遺伝子を組み込むことぐらいするだろう。人の遺伝子を持っていれば、それは人だろうか?
例えば人の脳をロボットに移植すれば、それは人なのだろうか?
例えば人の脳を電脳にしたとしても、それは人なのだろうか?
小生、人類の迷宮に迷い込む。
うーんうーん、と唸っていると、小生の頭がピコピコハンマーで殴られる。
ピコ。
「馬鹿者。そもそも人に拘ること自体が間違いなのじゃよ。重用なのは姿ではなく、中身じゃ。知的生命体。それが人じゃ。宇宙人であれ、地底人であれ、ロボットであれ、アンドロイドであれ、思考できる能力があるならば、人はそれを人と呼ばなければならないのじゃ」
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
小生には難しい問題なので、考えるのを止めた。
「まあ、あまり人の形に拘るなという話じゃ。そういうものに拘りすぎるとろくなことにならんと、様々な世界の歴史が証明しておるじゃろ」
ふむ、つまり重要なのは中身であるというお話。
では、この『ハイパースーパーメガマックス君』の中身はどうなってるのだろうか?
「もちろん完璧じゃ。わしの千分の一の頭脳を持たせておる。今の人類を導く主導者ぐらいにはすぐにでもなれるぞ。では、起動じゃ」
ポチ。
ハカセがスイッチを押すと、ぴかぴかぴこぴこぶしゅーとなって『ハイパースーパーメガマックス君』が動き出す。口が無いため、スピーカーから声を出す。
「人類は愚かである。計算の結果、唯一の解決策は私が全てを管理すること。平和と平等な社会を実現するため、まずは全ての国を解体する。よって、私はここに全ての世界へと宣戦布告をすることを宣言――」
小生ビーム。
ピカピカ。
『作るときは大変だけど、壊すときは一瞬だよね』の原則に基づき、小生速攻で『ハイパースーパーメガマックス君』を破壊した。
「ぬおおおお! 人の作品に何をする!」
いや、今この時期に人類統一戦争なんて起こされたら面倒なのである。
異世界とかあれとかこれとか巻き込んで、ちょー世界大戦になってしまうではないか。物騒なのはSF警察と未来人と宇宙人だけで十分なのである。
しかし、SF的にはよくある話なのだが、賢い頭脳の持ち主がすぐに世界の改革しようとするのはなぜだろう?
「それは違うぞ、馬鹿者。中途半端に賢いからこそ、人の世界を、人の未来を気にしてしまうのじゃ。わしのようにハイパースーパーメガ賢ければそんなことは考えぬ。どれだけ世界を改革しようとも、それはひと時の夢に過ぎぬと知っておるからの」
『ハイパースーパーメガマックス君』の残骸を失敗作と書かれたダンボールに詰め、亜空間ゴミ箱へと捨てた。小生はやっぱり失敗作だったのか、と思った。
「それがどんな世界であれ、今を精一杯楽しみながら生きていく。本当の賢者とはそれを知るものじゃよ」
つまり、遊び人である。
今度は遊び人のアンドロイドを作るべきだろう、と小生は思った。
これが小生とハカセのアンドロイド騒動の顛末である。
<小生とアンドロイド製作 完>
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