第27話 SF酒

 小生のSF酒場の日々は宴会だった。

 

 人生のために酒があり、酒を飲むために人生がある。

 それはまるで雪国で暮らす人々のような生活であった。


『甘党だから酒を飲まない』


 というSF格言もあった気がするのだが、今の小生はチョコレートを食べながらお酒を飲むというダブルスタンダート。まあ、意味は分からんのだが、酔っ払いなぞそんなものである。


「つまり、貴方はSFについての考察をしているわけですな」


 同じ酒の席に着いた教授エルフがふむふむと頷く。

 何でも業界では有名という話だが、小生は知らん。


「ほうほう、それはまた変なことを考えとるな」


 宇宙一度数が高い酒を飲みながら冒険者ドワーフが首を捻る。

 ちなみにドワーフ以外が飲むと死ぬので、ドワーフ酒と呼ばれている。


「ふむ、SFと酒は似ているものだ」


 賞金稼ぎヒューマンは煙草に火を付ける。

 どこが似ているのか具体的に言わない部分が、実に酔っ払いである。


 小生は自分がSFを追い求めるSF戦士であることを彼らに明かした。ファンタジー一族の野望を食い止めるために、SFというモノの謎を明らかにしなければならないのである。それが光の戦士である小生の使命なのであった。


 何かが微妙に違うような気もするが、微妙に違うならば大体は合ってるだろうと判断。小生は思いだせる限りの事実を彼らに語った。


 それは聞くも涙、語るも涙の物語であった。

 三人の酔っ払いは、小生の話にとても感動していた。


 最大の問題は小生が何の話をしたのかさっぱり思い出せないことだが、彼らの涙の前ではそんな事実は些細なことだった。真実はいつも一つ。小生の話はいい話なのである。チョコレートも美味しいのであるある。


「では、我々四人でSFの謎を解き明かそうではないか!」


 それは目からビームが出るほどのナイスアイディアだった。小生たちは『生きるときは同じでも死すときは別』という酒場の誓いを立てたばかりで、その最初の一歩に相応しい共同作業だと痛み入った。まさに『感動した!』のである。


 なので、小生は『SFとは何ぞや?』ということを三人に聞いてみることにした。

 

 エルフ教授曰く、


「SFとは学問である。理論的空想こそがSFである」


 冒険者ドワーフ曰く、


「SFとは冒険だな。未知な世界へ旅立つことがSFというもんだ」


 賞金稼ぎヒューマン曰く、


「SFとは愛さ。愛こそがSFなのだよ」


 そこから先は議論に次ぐ議論。

 議論がいつしか暴力に発展する。 


 うーむ、どこかでデシャブしたことがあるような気がするが、小生のハードディスクにはまったく記録が無いのでたぶん気のせいだろう。


 だが、この光景にSFの真髄があるような気がしないでもない。

 どんな世界だろうと知的生命体というのはこういうものである。


 という神のお告げに違いないSF。

 

 最終的にはSF酒場が爆発。

 こうして小生の楽園生活は終わりを迎えた。

  

<アルコールの過剰摂取事件 以後禁酒を推奨します>

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小生とSF警察 サンカク @sikaku

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