第17話 個人的時間感覚

 小生、サボっているわけではないのである。

 実はこのなんちゃら空間は、外の世界と時間の流れが違うのである。


 小生の一時間は、外の世界の一時間ぐらい。

 小生の一週間は、外の世界の一週間ぐらい。

 小生の一ヶ月は、外の世界の――と永遠続くのである。


 言い訳に聞こえるかもしれないが、言い訳ではないのである。

 久しぶりに感じたとしても、それは気のせいなのである。 


『そもそも、時間とは何ぞや?』 


 時計を見ればそこにある。

 一秒二秒三秒。

 一定の速度で動いてく時の流れ。

 過去から未来への道筋。


 だが、SF世界では時間は未来から過去へと流れる場合もある。

 その逆に、過去から一気に遠い未来へと飛んでいくこともある。

 行ったり来たり、戻ったり帰ったり、粘土細工のようにぐにゃぐにゃしている。


 しかし、ぐにゃぐにゃしているのは、人の認識でしかないのかもしれない。

 時間とは運命のようにすでに決まっているもので、過去に行こうが未来へ向かおうが、俯瞰して見れば何の変化していないとも考えられる。


 ここで最初の疑問に戻る。


『そもそも、時間とは何ぞや?』


 過去から未来へと続く正確な時の流れなのか?

 過去、現在、未来が入り混じり、常に変化していくものなのか?

 時の流れなどそもそも幻想であり、人の考える時間に意味はないのか?


 小生、考える。

 考えるとお腹が空いた。

 

 時間停止型冷蔵庫に入れておいたマンゴープリンを食べる。

 とても新鮮である。


 結論。

『腹時計は正確である』


 つまり、時間とはエネルギーの消費であると言える。

 エネルギーをほとんど使っていない小生の時間は、勤勉な方々よりも遅く進んでいるのだ。よって、小生はサボっていないのである。ただ他の方々より省エネなのだ。


 ということを考えていたら、ハカセがやって来て、


「これ、さぼっとらんで少しは手伝わんか」


 全てを台無しにするセリフを言われた。


 <完> 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る