概要
肺を病んだアマチュア作家が過ごした四つの季節と、細やかな不思議の物語
いつか物書きとして生きていくことを夢見ながら、華々しい活躍もできぬまま医者に告げられたのは不治の病、肺結核であった。失意の中、かつての級友を頼んで静岡のサナトリウムへと入居した『私』こと進藤(しんどう)を出迎えたのは、奇妙ながらもどこか温かい不思議な出来事の数々で…… 海沿いのサナトリウムを舞台に、人と人、そしてヒトならざるものとの細やかな触れ合いを描く。
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- ★★★ Excellent!!!サナトリウムでの小さな民俗譚
サナトリウムという閉じられた、けれど穏やかな日常生活。
しかしその穏やかな日常は、死をとても身近なものとする生活でもあり。
そんな穏やかだけれど優しいだけではない閉鎖空間でも、患者さんたちは日々の暮らしや四季を楽しんで生き、お医者さんたちは人間味にあふれ、私もこんな所で長期療養してみたいなんてつい思ってしまいました。
そんなサナトリウムに現れるちょっとした異変。その異変をごく普通のこととして受け入れている病院のスタッフたち。
それにはじめは戸惑いながらもすぐに順応し、作家らしい好奇心と本人の気質からくるのであろう温かな視点で不思議なものたちをときには見守り、ときにはちょっかい出ししている…続きを読む