「音 純文学」を含む小説

ハエの飛ぶ音が聞こえる。 僕はある日、夢を見た。僕が僕を看取る夢。 そんな歪な夢を見た僕だったが、日常は続く。何事もなく、僕は目を覚まして僕にしか見えない兄弟と歩きにいくのだ…

　十代最後の歳という割に、僕は色々と不足がちな自分を自覚していた。例えば誠実さの意味さえも、靴下の表裏がわからない子供みたいに履き違えてばかりだった。

病室で送られる音だけの日常。 聴覚以外の五感と知能に問題があるようだ。

普通の大学生、辺野人成は軽音サークルの友達と平凡な夏休みを過ごそうとしていた。そんなある日、高校時代の同級生、そして初恋の人、青井空が現れ、 「またバンドを組んでくれない？」 と…

『【いいね！　きのうの雨で増水とかしてないかな？　気をつけて楽しんでね！】返事をすると、数分後にまたスマートフォンが音を立てる。【ありがとう！　大丈夫だよ！　そっちも仕事がんばっ…

知り合いから譲り受けた風景画を見たとき、そこに描かれているものとは無関係であるはずの、「カコン」という音が耳に入ってきた。その「カコン」という響きは、一体、どこから聞こえてくるの…

　「ね、どうしてこんな雨の中で歌っているの？」 　そうやって問われたのは、他に誰もいない橋の上。 　 　ずぶ濡れでギターを持った僕は、さっきまで歌っていた姿勢のまま固まって。 …

世界の主役は私であると、白ソックスを靴の淵にチラつかせながらバタバタベタベタ進む足達。 （帰宅する少女達。初夏の一コマ）

いつも帰ってくるはずのあの方が帰ってこない。心配しながらもいつ帰ってきてもいいように支度をしている中、ドアを叩く音が聞こえる。

高校の吹奏楽部に所属している狩野 直宏（かの なおひろ）は、顧問の紹介で県内の辺境にある修理工房を訪ねる。入部以来なんとなく仲良くしていた同期の河津 燈（かわづ あかり）とは、そ…

【現代百合×サスペンス】約十年振りに、恋人である光平と共に実家を訪れた絢音。無事に結婚を承諾され、次は光平の両親に挨拶をしようと言われるが、絢音は頷く事ができずにいた。それには、…

僕は登山家だ。 明日エベレストに登るはずだった、日本の登山家。周りは僕のことを『カベバシリ』と呼んでいる。 今はネパール北部のクーンブ渓谷にある、ひっそりとした牧村で下宿している…

「私をみていてほしいの」 歳上の女性に声をかけられた南音は、眠りにつく彼女を見守るという奇妙なアルバイトを始める。 裸で毛布に潜る彼女の傍で、同性の恋人を思う南音。彼女は彼をお伽…

みかん畑で働く祖父と父親、そして彼らを支える母親。ごくありふれた家庭、疑念のないその日常は、祖父と母親の過ちを知ってしまったことで、瞬く間に暗転する。 深いコンプレックスに苦し…

休日の恋人同士 狭い部屋の中での幸福 世界は優しい音に満ちていて 誰もが満ち足りているような、物語 KAC第４回「ささくれ」参加作品 ５分で読めるショートショート 隙間時間に…

※復刻改訂版です。 【純文学】貴方の純文愛の「断片」をください【赤入れ可】参加作品 https://kakuyomu.jp/user_events/16818093073193…

ちょっと不憫な子、音楽隊の新人シロの、はじめての舞台の話。

朝に目覚めた。 太陽は昇り、空は青く、周囲は静まり、風がある。 遠くで車の走る音が聞こえーーーーー

一年間書き溜めたショートショートを編集し、構成します。 毎日、１日２回更新します。 朝７時は出来るだけ新作で、夕方６時は旧作でいく予定。 （第１話のみ、１２月１日１２時過ぎ更新で…

　未華子は、二十歳。専門学校に通っている。学校が終わると、アルバイト先である個人経営の店【和食処　悠の里】へ直行する。その店の親方は、最寄り駅の商店街で和食店を古くから営んでいた…