垣根

sui

垣根



朝に目覚めた。

太陽は昇り、空は青く、周囲は静まり、風がある。

遠くで車の走る音が聞こえ、近くに鳥が鳴き、ただぼんやりとそれを聞く。

飯を食い、日を浴び、再び目を閉じる。


昼に起きた。

当たり前らしく社会は進むが、そこに参加せず済む現実を有難く思い、また一方で何らかの乖離のように感じる。

本を読み、外を歩き、ふと見知った顔に声をかけられ少しばかり会話をする。

そのまま歩き回るうちに日が暮れ、少しばかり早い晩酌を開始する。

家に帰れば腕を枕にして目を閉じる。


夜に瞼を開いた。

周囲は暗い。明かりもない。おかしな場所で眠ったせいで体が痛む。

布団へ移動しようとし、痺れた腕に気付く。

口を漱ぐ事も着替える事も面倒で、そのまま布団へ倒れ込む。

けれども、そうなってみれば眠気が何処かへ消えている。

己に覚える僅かな不快感。無視をしようにも一度意識に上ってしまえば中々消す事も出来ない。

仕方なく、起き上がって身なりを整える。

寝支度が完成した所で再び眠れる訳でもなく、布団の上で二転三転を繰り返す。

圧し潰された側に感じる僅かな肩の痛み。安定しない腕の置き場。首の角度。

結局体を起こす。

明かりを点けて外を見れば、あちらこちらに疎らな輝き。あの中に人々は居て活動をしているのだろう。

こちらの明かりもその一つ。

繋がりがあるようでいて、隔絶している。無関係なようで、しかし同じ時間に目を開いている。


人。人々。私。誰。彼。自分。他人。


声が聞きたくもあり、姿を見たくなくもあり、傍にいてくれと願い、あっちへ行けと罵り、運命に憧れ、惰性に流される。


ひと。


ガラスの内側からただそれを眺める。

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垣根 sui @n-y-s-su

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