鳴り砂

みかん畑で働く祖父と父親、そして彼らを支える母親。ごくありふれた家庭、疑念のないその日常は、祖父と母親の過ちを知ってしまったことで、瞬く間に暗転する。

深いコンプレックスに苦しんだ主人公・大森聡は、大学進学を機に、愛媛の実家を逃げ出した。

◇

漁業を生業とする風光明媚な町並みと海岸美、そして水平線の大パノラマ。日本海に面した小さな町が彼の新しい拠り所となる。

アルバイト先のファミレスで出会った、社会人女性・伴マドカ。透き通るような白い肌と黒髪のショートボブ。彼女の大人の色気と余裕に、憧れを抱き始める。
一方、彼女も聡のことを執拗に気にかけるのだが——

◇

——物語は２００２年

二十歳のその年、ワールドカップ開催により、日本国内は空前のサッカーブームに沸いた。

日本代表の惜敗を…続きを読む