「一度」を含む小説

　満開の桜の樹の枝に、無骨な荒縄を結びつける。 　その荒縄に作った輪の中に首を通して、一度だけ空を見上げた。 　散々な人生だった、楽しかった記憶も嬉しかった記憶もない。 　痛みと…

アンソロジー作品『ティアドロップが壊れる』（2019.4刊）に寄稿させていただいた小説です。 「ああやって泣いたことは、たぶん一度もなかった。」という一文で始まり、 「どこかへ…

東京に緊急事態宣言が出てから二ヶ月。 夫と娘と共に自粛生活を送りながら、主婦である「私」は密かに憧れている大学生フィギュアスケーター、湯川晴彦の近況報告を待ち望んでいた。 だが、…

クダクラゲは群生生物である。 そこに姉は人類を孤立から開放するための光明を見出だしたらしく、僕に人間の融合体を作ってみないかと持ち掛けてきた。 一度は拒絶したものの、外を歩く人を…

　主人公、進は「死」が恐ろしくてたまらなかった。また、バレー部での人間関係に悩み、チームメイトである龍を怪我させてしまったことから、孤立を深めていく。一度は死のうとしたが、結局死…

あ～あ、暇だ。 最近は『なんとかウィルス』の問題があって、めっきり仕事が減った。 だから少し時計を逆回転させて、一年前の今頃の話をしようか。 俺は或る日、一人の女性から依頼を受け…

※昨今のコロナ禍を思わせる描写があります。不謹慎、不快と思われる可能性がございますのでご注意ください。 僕はばーちゃんとふたり、この島に暮らしている。 生まれてからこの方、一度…

十年にたった一度、 年明けから十回目の満月の夜。 死者の魂は還り来る。 愛しき人に会う為に。 ***一部会話文のみなど、通常とは異なる形式でお送りしております。

一日一度は見るであろう、鏡。あなたは、鏡に映った顔が自分の本当の顔だと思っていませんか？

　常に脇役。 　これまで15年間。一度たりとも俺にスポットライトが当たったことはなかった。努力しても努力しても、必ず自分を上回る奴が出てきた。俺は主役になることが出来なかったの…

　さくらが道に出ると、男がうつ伏せの状態で頭の方に進んでいた。訊くと「地球を登っている」と。西こそが彼にとっては登るべき方向であると言う。そのパッションにあてられている内に、自分…

　HJネット小説大賞2018　一次選考通過。 　第2回ファミ通文庫大賞　中間選考通過。 　侯爵令嬢クリスティーナは十四歳の誕生日に、両親から王子との婚約が決まったと告げられたそ…

　誰もが一度は考える、〝青春とは何か〟と言う問い。友人と馬鹿騒ぎする、部活で汗水たらして上を目指す。恋愛をしてトキメキを味わう。人によってその解答は様々だ。 　それならば、とあ…

もしも戻れたならばいつがいい？ もしも行けたならばどんな未来がいい？ 僕は“セイ” 君の願いをかなえてあげる。 でもね。 戻れるのもいけるのも “平成時代”だけだよ。 …

独りアパートに暮らすニートの男と、派手な見た目の猫のような女。 枝垂桜が咲く月夜の公園で、二人が出会うところから物語は始まる。 有名な告白のフレーズとなった『I love yo…

「君との婚約は破棄させてもらう。君には心底幻滅した」 3年間連れ添った婚約者ジェイドに、謂れもない罪で突然の婚約破棄を告げられたアドリエンヌ。その罪の内容とは、アドリエンヌが幼…

夏休みの図書館で、一冊の本を見つけた。それは不思議な恋愛小説だった… 表紙を開いてみると、こんな文章が書かれていた。 　　 　「これは、読む人によって結末が変わる不思議な物語…

僕はいつでも夜の学校にいる。 夜の学校なんてつまらないんじゃないかと思われるだろうが、屋根の上で紅茶を飲む毎日も悪くはない。 理科の先生はいつでも死にたいし、可愛い女友達だってい…