脇役は、それでも主役になりたい

笹団子β

第1話 魔術学園の校門、そして走馬灯

 国立ルディア魔術学園。魔術界の名門。国内唯一、学費タダ・学生寮完備の魔術学園。


 そこは、身分の垣根を超えて、優秀な魔術師の卵が集う場所。


 建国から数百年間続く、由緒正しき魔術学園である。


 今日は伝統あるルディア学園の入学式。そんなめでたい日の校門にて…………



 ドガァァァアアアン!



 魔術によって発生した爆風によって、数多くの新入生(主人公含む)が吹き飛ばされていた。



***


 俺の名前は、アルト。せいはない。思春期真っ盛りな15歳の男子だ。


 絶賛、空を舞っている最中だ。新しい制服に身を包み、意気揚々と校門をくぐろうとしたら、突然の爆風によって宙に放り出された。こういうので飛ばされるのは脇役モブの役回りだと思うのだが。


 なんか走馬灯が見えてきたので、これまでの俺の人生を大まかに振り返ってみよう。




 俺は、ポロッコ村という小さな山奥の村に農家の子として生まれた。村の周りは自然が豊かで、きれいな河や深い森があった。


 俺は、昔から物語が大好きだった。眠る前に母が読み聞かせてくれる物語に出てくる英雄や賢者、つまり主人公に憧れた。


 しかし俺は、その村で影が薄い方だった。というか、脇役モブだった。


 あらゆる分野において、それぞれ俺より優れている者がいた。どうしても一番には、主役にはなれなかった。


 もちろん努力した。だが、運の悪いことにあらゆる方面で、天才という者たちが同年代に生まれており、彼らを追い越すことはできなかった。


 極めつけは、俺と同じ日に村一番の天才が生まれたことによって、誕生日にすら俺に注目は向かなかった。


 このように、一度たりとも俺にスポットライトが向くことはなかったのだ。


 しかし、俺は諦めが悪かった。そんな俺は8歳になったある日、一つの案を思いついた。


 それは、森のさらに奥にすむという魔女に弟子入りすることだった。


 大人の目をかいくぐり、魔女の家へとたどり着いた俺は、魔女に弟子入りを申し込んだ。


 老体の魔女は予想以上にあっさりと弟子入りを承諾した。何でもここ数十年、特に刺激もなく飽き飽きしていたそうだ。


 それからというもの、俺は毎日のように魔女の家へと通い続け、魔術や算術、さらには護身術まで習った。


 7年間、修業を受け続けた俺に魔女は、国立ルディア魔術学園の入試を受けてみないか、と話を持ち掛けた。


 俺は二つ返事で了承し、近くの都市で試験を受けることになった。


 結果は見事合格。上位に入ったというわけではなかったが、かと言ってぎりぎり合格したというわけでもなかった。


 その後、俺は親に事情を話した。魔女のもとで修業をしていたのを知っていた二人は、俺の魔術学園入学を容認してくれた。ルディア学園は学費がかからないというのも大きかったのだろう。


 そうして俺は、ルディア魔術学園に入学する運びとなったのである。目標は、ここで学園物の主人公になること!



 おっと、走馬灯が終わったようだ。そして地面が近づいてきた。


 俺は、強い衝撃とともに意識を失った。

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