概要
僕はばーちゃんとふたり、この島に暮らしている。
生まれてからこの方、一度も外に出たことはない。
そんな僕が知るヒトはばーちゃんと、
本土から船で毎週のようにやって来る年上の少女アカリだけ。
このままずっと三人で続くと思っていた穏やかな暮らしは、
一人の漂流者を発見したことから崩れ去っていく。
ばーちゃんのかつての部下だった彼は、世界中を震え上がらせたという感染症に冒されていた——
※拙作『星の彼方 絆の果て』https://kakuyomu.jp/works/1177354054886681016 の前日譚ですが、本作単体でも完結しています。
※この作品は「小説家になろう」「ノベル
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!読了したその後で、もう一度読み返してもらいたい物語。
船が見えるまで、あと十秒。いや、五秒。サン、ニ、イチ──。
僕とばーちゃんと、二人だけが暮らしている島に、度々やってくる少女──アカリが、荷物を満載したクルーザー船で接岸するシーンから、物語は幕を開けます。
二人プラス時々一人の、平穏な日常が続くはずだった毎日は、ある日、島に船ごと流れついた漂流者の存在で、少しずつ壊れ始める……。
この物語に登場してくる主要人物は僅か四人。主人公のハジメと、ばーちゃんと、時々島にやってくる少女アカリ。そして、中盤から登場してくる謎の男。
舞台も実にシンプルで、僕とばーちゃんが暮らしている島だけで物語は進行し、そして完結します。
しかしなが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!NewGame+(2周目は宝探し)
「洞窟の比喩」なる話を思い出しまして。
私たちは、洞窟の中で鎖に繋がれたまま生きている。手足はおろか、首まで拘束されているので、後ろを振り返ることもできない。背後では炎が絶えず揺れていて、壁に映る人影を"現実"として眺めている他ない。
あるとき、繋がれているうちの一人が解放される。振り向いて、これまで"現実"として受け容れてきたものが、炎に照らされた人形の影に過ぎぬと──世界が、洞窟の中だけに留まらぬことを知る。この世を照らすものが、炎に留まらぬことを知る。その"現実"を洞窟の中にいる人々に伝えるが、彼らはまるで聞く耳を持たない。
そう、元より"こう"であったものに、人は違和を抱きよう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!アフターパンデミックの世界で、人は緩慢に迫りくる個人の死に気付かない
コロナ禍の最中にある世界で生きる現在の我々にとって、この作品が示す未来は「あるかもしれない可能性」の一つです。
休校や外出の自粛、イベントの中止で、他人との直接的接触が避けられる今、こう考える人も多いのではないでしょうか。
「インターネットで誰かと繋がっていなかったら、とても耐えられなかっただろう」と。
本作の主人公ハジメは、生まれた時からばーちゃんと二人暮らし。
そして時々島に物資を運んでくるアカリだけが、ハジメの知る全ての人間でした。
このように、極端に限られた環境ではありますが、ハジメは特段不便を感じていません。
彼の目を通して語られる自然そのものの島の情景は美しく、緩やかな暮ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!二人+αの暮らす平和な島に訪れる終末とは?
僕とばーちゃんが二人で暮らす、平和な島。そこに物資を運んでくれるアカリがいて、3人の世界。そこへ島外から男が流れ着いて……。
まず冒頭の平和な島の様子が描写されますが、これが短いながら平穏を感じさせてくれます。そこに訪れる異分子というなんともベタな導入も、しっかり平穏を味わったあとだと不穏さが増して良いもの。男は伝染病に感染していて、読者は「やっぱり!」となるわけですが、実はその病気は……。
これ以上はネタバレになるので書けませんが、展開もさることながら描写も素晴らしい。日に日にやせ細るばーちゃんの様子や、おにぎりを皆で食べるシーン。何気ない描写が上手で堪能しました。驚愕のラストまでぜ…続きを読む