第7回カクヨムWeb小説コンテスト大賞受賞者インタビュー|宮之みやこ【恋愛(ラブロマンス)部門】

12月1日から応募受付が始まった第8回カクヨムWeb小説コンテストは多くのカクヨムユーザーの皆さまにご参加いただき、例年以上の盛り上がりとなっています。12月28日現在の応募数は長編:約8,220作品短編:約5,820作品です。
そこで、かつて皆様と同じようにコンテストへ応募し、そして見事書籍化への道を歩んだ前回カクヨムコン大賞受賞者にインタビューを行いました。受賞者が語る創作のルーツや作品を作る上での創意工夫などをヒントに、小説執筆や作品発表への理解を深めていただけますと幸いです。
第4回目は本日12月28日に書籍が発売される『広報部出身の悪役令嬢ですが、無表情な王子が「君を手放したくない」と言い出しました』(イラスト/黒埼 角川ビーンズ文庫)の著者、宮之みやこさんです。

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第7回カクヨムWeb小説コンテスト 恋愛(ラブロマンス)部門大賞
宮之みやこ
▼受賞作:広報部出身の悪役令嬢ですが、無表情な王子が「君を手放したくない」と言い出しました
kakuyomu.jp

──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

 一番最初に小説を書いたのは小学校五年生の時です。本好き友達のさやかちゃんが「小説家になりたい」と言って小説を書いていたので、私も真似して書き始めたのがきっかけです。
 それから高校受験の時に1年ほど書いて、社会人になってから1年ほど書いて、数年空いて2021年に永瀬さらさ先生の『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』(イラスト/紫 真依 角川ビーンズ文庫)をきっかけに悪役令嬢にハマって、ふたたび筆を取りました。
 影響を受けた作品は数が多すぎてキリがありませんが、〈勾玉〉三部作(著/荻原規子 徳間書店)、『魔法使いハウルと火の悪魔』(著/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳/西村醇子 徳間書店)、「ハリー・ポッター」シリーズ(著/J・K・ローリング 訳/松岡佑子 静山社)など、とにかく児童文学が根本にあります。
 あとは悪役令嬢や悪女など『悪』属性がつく人が大好きなのですが、『痴人の愛』(著/谷崎潤一郎)、『ジャッカルの日』(著/フレデリック・フォーサイス 訳/篠原慎 角川書店)、『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』(著/塩野七生 新潮社)などのダークヒーローの影響なのかなと思います。なかなか自分ではそんな徹底した"悪"を書けていないのですが、ずっと憧れですね。

──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞かせください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

 オリジナリティで言うなら、恐らく「広報部×悪役令嬢」という組み合わせがまだほかになかったことと、ライバル役の聖女である"ひな"が、「ただ叩きのめされるだけに存在している悪役」じゃなかったからなのかなと思います。
 流行をふんだんに取り入れながらも、その部分だけは譲れないところだったので、ひなの登場のさせ方、言動には細心の注意を払って書いていました。また、『悪い奴を無条件に助けただけ』じゃきっと読者さんから不満が来るので、そうならないように頑張ったつもりです。それでも私の技量が足りなかったところはあるのですが、そこは読者さんから感想が来るので、反応を見ながら都度書き直していました
 おかげで、「ひなが好き」という感想もいただくことができてとても嬉しかったです。そこも私のオリジナリティに繋がったのかな、と思います。

▲2022年12月28日発売『広報部出身の悪役令嬢ですが、無表情な王子が「君を手放したくない」と言い出しました』のカバーイラスト(イラスト/黒埼 角川ビーンズ文庫)。

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。

 一番気に入っているポイントはやっぱり、主人公コーデリアの強さです。
 彼女は恋愛面でのコンプレックスもあるのですが、その弱点も認めた上で前に進もうとするんですよね。
 誰かを責めることなくありのままの自分を受け入れて、かつ自分にできることを全力で頑張る(これはヒーロー役であるアイザックも同じですね。彼らは似たもの同士です)。
 そういう、人間の強さやしなやかさが好きなので、多分どんなタイプの主人公を書いていても、最後はそこに行きつくんじゃないのかなという気がしています。
 そして世の中には本当に色々な人がいて、ままならないことも多いからこそ、物語の世界では楽しくいてほしいと思っています。腹が立つのも悲しいのも切ないのも、すべてエンターテインメントとして消費してもらって、最後は笑顔で終わる。
 それを体現してくれているのが、主人公コーデリアという女の子だと思っています。
 あと物理的に強い女の子も大好きなんですよ。物語の中で、コーデリアもデカブツを殴ります。もちろんグーで。

──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。

 自分で「ここは脇が甘いかもしれない……」と思っていた部分を、全部編集さんに指摘されたことですね。そして予想外の部分でも結構指摘が入りました……(笑)。
 つまりそれだけしっかり作品を見てくださったことでもあるので、原稿作業はとても楽しかったです。どうしても譲れないところだけは話し合いつつ、それ以外はおおむね編集部の意見に賛成だったので、うんうん唸りながら必死に改稿しました。
 あと角川ビーンズ文庫様は校正ゲラが紙だったのですが、初めて見た時は感動しました。大賞を受賞しても、他の書籍化が決まっても、正直あまり実感がなかったんです。でも校正ゲラの実物を見た時は「本当に小説家になるんだ……!」と震えました。しばらくゲラをすりすり撫でまわしていましたので、手あぶらがしみ込んでいるかもしれません……(ごめんなさい)。

──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。

 本作の要である「広報要素」と「恋愛部分」の濃度を、どっちもぐぐっと高めました。広報部分は改稿のため図書館にこもりましたし、恋愛部分もWEB版よりも読みごたえが出るよう、恋愛の切なさも楽しんでもらえるように頑張って書き直しました。
 あとは全体の流れを整理したりイベントをがらっと変えたり、とにかくWEB版の面白さを引き継ぎつつも、作品としての完成度を高められたんじゃないかなと思っています
 以前WEB版に対して「思ったより広報要素がなかった」という感想をもらったことがあるのですが(実際その通りだったなと思います)、そんな方にこそ、ぜひ書籍版を読んでみてほしいですね。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんななかで、自分の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

 とにかく読者ファーストで考えました。
 私が元々書いていた(好きな)作風はとにかく重くて暗くてシリアスなのですが、Web小説だったらもっと読みやすい方がいいかな?と思って、生まれて初めてコメディ要素を入れたんです。
 それからお友達に作品を読んでもらったら、「女性向けなのにイケメンがいない!」と言われて「それもそうだな」と思ったので、ヒーロー以外の男性を全員イケメンに変えました(ジャンは元々五十代の執事男性で、スフィーダもボサボサ髪のおじさんだったんです)。
 納得できない部分は意地でも変えないのですが、「こっちの方が、読んでいる人は楽しい気がする」と思えばぽんぽん変更を入れるので、それが工夫と言えば工夫かもしれません。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。

 これを読んでいるのは、小説家デビューを目指している人もいれば、趣味で楽しく書ければいいと思っている人など、本当に様々な人がいると思います。
 その中で私がひとつだけ言えることがあるとすれば、『書き続けた人は強い』です。

 私は年単位のブランクをあけつつも書き続けた結果、今回の大賞をいただくことができました。書いていなかったら当然ですが、受賞できていません。
 また、Webで処女作が伸びなくても投稿を続けているうちにファンが増え、ある日突然開花する方もたくさん見ました。
 書いていればいつか望む結果がでる、なんて無責任なことを言うつもりはありませんが、書かなければ何も始まりません。世の中には処女作で才能開花できる幸運な人もいれば、思うようにうまくいかずに落ち込む人もいるでしょう。それでもめげずに、自分を信じて書き続けた人がチャンスをものにするのだと思います
 とは言え、気負うことは何もありません。もし疲れたり飽きたりしたら、その時は休めばいいんですよ。その間に得た人生経験もまた糧になります。それくらいのラフさで、ぜひ小説そのものを楽しんでほしいなと思います。

──ありがとうございました。


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