第55話 海底での採取
「マーレ。お待たせしましたわ」
「ん……んー。もうちょっとゆっくりでも良かったのに」
わたくしたちが元の場所に戻って来た時、マーレは砂浜でゴロンと転がっていた。
彼は仰向けでボリボリとお腹をかき、寝ぼけているようだった。
「あんまりお待たせするのも悪いですから。それでは行きましょうか」
「そうだねー。『
マーレは魔法で以前作ってくれた空気が入った水の球を作る。
その中にわたくしとマーレを取り込んだ。
「え? 俺は?」
「マーレ? ティエラが入っていませんが」
「んー。大きく作るの面倒だし、ティエラは少し山でも見て来なよー」
「何でだー!?」
ティエラは叫ぶけれど、マーレは気にせず魔法の球をそのまま浮かべて海中に沈めていく。
「いいんですの……?」
「いいんだよ。ティエラはちょっとクレアとくっつき過ぎだからね。時々は離しておかないと」
「そうですか……? そんなに一緒にいるでしょうか?」
「いるよー。王都にいた時は習い事で一緒にいないこととかあったけど、今は本当にずっと一緒でしょ?」
そう言われて思い起こすと、大抵ずっと一緒にいた気はする。
でも、
「それは……何かダメなのでしょうか?」
「うーん。クレアにとってはダメではないと思うよ。でも、ティエラにとっては……良くないかな」
「そうなんですの?」
「うん。ちょっと……色々とあってね。たまには離れることが必要なの。さ、何をとればいいんだっけ?」
「あ、ええ……と、図鑑によると……」
わたくしは大全を開き、マーレに見せる。
「まずは海底火山に行きたいですわ。海底火山にはヒートマグマプレートというのがあるので、それを採掘したいのですわ。これがあると、半端なく強い火力が長期間出せるとのことなので、ララから絶対に欲しいとお願いされているのです」
「場所は分かる?」
「それが……海底火山はこの辺りにある。ということは聞いているのですが、どこにあるかまでは分かりません」
「そっか、なら適当に探していこう。そのヒートマグマプレートっていうのは、ものによって品質が変わったりするの?」
「うーん。大全によると、火口に近い部分の方が質がいいらしいですが、危険なので端っこでもいいと思います」
「ううん。それくらいは僕の力でなんとかなるよ。ゲットするのはそれだけなの?」
ということで言われたけれど、わたくしは目を逸らしながら答える。
「実は……結構あるのですが、よろしいですか?」
「いいよー。美味しい物を食べるためならがんばるからね!」
「ありがとうございます。それでは、50種類ほどお願いします」
「50種類!? 待って!? 一体何を作る気なの!?」
マーレが驚いているけれど、わたくしとしても同じ気持ちだ。
「ララがあれが欲しい、これが欲しいとおっしゃられていて……。とても期待するような目で見られたので出来る……と」
「……まぁ、いいけどさ。悪い人から壺とか買っちゃダメだよ?」
「うぅ……すみません。でも、ララのお願いなら聞いてしまいそうです」
「まぁ、ちょっと分かるけど。胃袋捕まれてるってしょうがないよね」
「ですわ」
「と、あれでいいかな」
ということでやっていると、マーレのお陰で海底火山に到着する。
「流石マーレですわ。あれでいいと思います」
「取る算段とかある?」
「ギリギリまで降りて、端っこを掘るつもりですわ」
「うーん。じゃあ僕がやろうかな。『
スパパ!
水流が一瞬起きて、何かが海底火山に突き刺さった。
「『
ズボッ!
マーレが魔法で切り取った海底火山を持ち上げてこちらに持ってきてくれる。
火口に近いからか真っ赤に熱されていて、触ったらやばそうだ。
「これ……触っても問題ないのでしょうか?」
「うーん。一部分だけめっちゃ冷やすから、それで触って仕舞える?」
「わかりましたわ」
ということで、マーレが何かやったのか、真っ赤だった岩の塊は一部分だけ普通の土色になる。
それを触って収納したけれど、特に何もなかった。
「うん。取れて良かったですわ」
「よし、それなら残り50個だっけ? さくっととっていこうか」
「ええ、まずはシーサーペントからでいいですか?」
「気軽に言ってるけどそれ結構強い魔物だからね……? 結構強い水流ブレスとか危ないからね?」
「マーレなら行けるのでしょう?」
「ま、余裕だけど!」
ということで、マーレはシーサーペントを瞬殺した。
それを肉の部分はマーレが、それ以外の部分はわたくしが解体して【倉庫】に入れる。
そんなことをしていると、あっという間に素材は集まった。
「遅いぞ! 山を5周はしてしまった!」
「す、すみませんわ」
わたくしとマーレが元の場所に戻ってくると、ティエラの尻尾がしょんぼりと垂れていた。
でも、怒りつつも今は尻尾をブンブンと嬉しそうに振っている。
家に帰るまでの間、ティエラはわたくしに身体を擦り付けていた。
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