第33話 テーブル作り
「それで……なんの家具を作ったらいいと思いますか?」
ベッド以外なにもないこの部屋をいかに素晴らしいものにしていくのか。
正直異世界の知識があるのでテレビとかパソコンとかゲームとか欲しい。
まぁ……使えないので意味はないんだけれども。
いや、そもそも家具ではないかもしれない。
フィーネさんは上を向いて考え、部屋の中を見回す。
「とりあえず、テーブルとイスでいいんじゃない?」
「テーブルとイスですか?」
「そう。っていうか、ご飯ってどうやって食べてるの?」
「こうやってですわ」
わたくしは【倉庫】から綺麗な一枚板を取り出すと、床にドンと置く。
「え……床に座って食べてるの……?」
フィーネさんがちょっと引いたような目を向けてくる。
わたくしは慌てて説明する。
「これはティエラがこの方が食べやすいからなんですの! 決して、決してわざとやっている訳ではないんですわ!」
「ああ……そっか。確かに食べやすさとか考えてなかったわね。ごめんなさい」
フィーネさんはそう言って申し訳なさそうにする。
「いえ、気にしないでください。わたくしとマーレは上なので、ティエラのために合わせているんですの」
「む、それは違うと何度も言っているだろう!」
「ではこれからはテーブルがあってもいいですか? フィーネさんがまたきた時も一緒に食べたいですし」
「むぅ……いいだろう。俺は歳上で寛容だからな!」
わたくしたちがそう話していると、フィーネが聞いてくる。
「マーレが一番上っていうのは共通認識なんだ」
「そうですわね。マーレとは張り合う気がおきませんわ」
「俺もマーレ相手には言えない」
ということで、わたくしたちはテーブルとイスを作ることになった。
そのためには、まずは設計をするところからだ。
でも、それはかなり難航する。
「わたくし、こっちの高さにしていただきたいのですけど」
「だから、あんまり高すぎると食べにくいんでしょう? なら、ティエラが食べやすいように少し低くして、座イス的な感じので作ったらいいんじゃない?」
「でも、それだと遠くのご飯をとる時にとりにくいと思うのです」
「あーマーレが結構食べるんだっけ?」
「そうなのです。だからイスに座って、必要になった時に立ち上がって食べやすいようにした方がいいと思いますわ」
「それだと、ティエラが他のご飯をとりにくくなるんじゃない? それはいいの?」
わたくしたちは、まずテーブルの高さで問題に直面していた。
わたくしは70㎝くらいで話をしていて、フィーネさんは低い40㎝くらいを主張するのだ。
「ティエラはそのままテーブルの上に乗って食べたいものを食べますわ」
「そうなの?」
フィーネは確認するようにティエラに視線を向けると、彼は一瞬わたくしを見た後、首を横に振る。
「俺は低い方がいいな。やはりフィーネの意見がいいと思う」
「な!」
こんな時に! と思うけれど、ティエラはティエラでこの状況を楽しんでいるみたいだ。
「ほらー。やっぱり低い方がいいって」
「ではマーレ! あなたはどちらがいいですか!?」
「僕ー? 僕は普通に高い方がいいなぁ。というか、ローテーブルだと地面とほとんど変わらないんだよねー」
わたくしはマーレに話を向けると、そう答えてくれた。
「ということですわ。なので、やはり高い方がいいと思いますわ!」
「むぅ……そっか。それなら高くても……いいかな? あたしはずっと使う訳じゃないし」
「別に一緒に住んでもかまいませんよ?」
「え? ほんと? 魅力的かも……」
友達になった数が3、その後家族になったのが3なので、ついそう言ってしまった。
でも、世間的にはそうでないことは流石に分かる。
フィーネさんは少し悩んだ後、首を横に振る。
「って、違う違う。今はテーブルのデザインをしないと。ティエラは高くてもいいの?」
「……仕方ない。いいぞ」
「そっか。それなら高さはそれで……後は、デザインは任せてよ。これでもデザインはエルフの国の大会で優勝したこともあるんだ」
「そうなんですのね! とても素晴らしいですわ!」
「ふふ! 任せて!」
わたくしは彼女と話し合い、デザインの案を詰めていく。
彼女の案はわたくしでは思いつかないほど素晴らしいもので、ほとんど「なるほど」と「素晴らしいですわ!」しかデザインについては言葉を発していない。
「では作りますわね」
「ええ、よろしく」
「では【設計】!」
わたくしはスキルで作ったけれど、フィーネさんは呆然とわたくしを見ていた。
「すご……そのスキルすごいわね」
「最初はよくわからなかったのですが、使ってみたらとってもいいスキルでしたわ」
「神様に感謝しないとね」
「ええ、選んでくださって感謝感激ですわ」
それから、高さ等の設計をして、頑丈な作りのテーブルを作る。
この後シエロが合流することを考えて、少し大きめに作った。
「大きめって……これ……何十人でご飯食べる気なの? 10人以上は同時に食べれそうだけど……」
「大は小を兼ねる! ですわ!」
「限度ってもんがあると思うけど……でも、マーレがいるならテーブルを動かすのも楽かな」
「ですわ。ということで、模様をお願いしてもよろしいですか?」
「分かった」
と、その模様を描くことになったのだけれど、フィーネさんの模様を描くのは丁寧すぎた。
のそり。
さきほどまで部屋の中央で寝ていたマーレが起き上がる音がする。
「ねぇ……そろそろお腹減ったんだけど……食べに行かない?」
「ですが、まだテーブルが……」
「クレア。僕はもうお腹が減り過ぎてやばいんだ。だから……ね?」
そう言われてしまうと、わたくしとしても断りづらい。
というか、マーレをおいてご飯を食べてしまったことは確かな訳で。
それに外も日が落ちかけている。
「フィーネさん。その模様を書き終わったら、食べに行きませんか?」
「ん、んー。そうね……じゃああたしはここで描いてるから、買ってきてくれない?」
「なるほど、分かりましたわ。マーレ。行きますわよ」
「分かったー」
わたくしはマーレを連れて外に出ようとすると、ティエラに止められた。
「俺は?」
「フィーネさんについていてあげてください。ないとは思いますが、もし魔物がきたら大変ですわ」
「分かった」
ということで、わたくしたちはいつもの『土小人のかまど亭』に到着した。
「あれ……なんだか明かりがついていないような……」
「いやいや……そんなこと……そんなこと……ある訳……」
マーレが今までに聞いたこともないくらい絶望的な声を出しているけれど、とりあえず進む。
「本当に……しまっていますわね」
わたくしたちが『土小人のかまど亭』の前に来ると、「しばらく休業」の張り紙がしてあった。
「神は……死んだ」
「大げさ過ぎませんか!?」
マーレは地面にorzとなっていた。
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