第59話 完成した風呂とキッチン

 わたくしは家に戻ると、フィーネは振り返ってくれて、ララはじっと奥のキッチンを見ている。


「おかえりなさいませ」

「ただいまー。ってもうキッチン作ったの? すごいわね」

「お風呂も出来ていますわよ」

「まじ? 見てもいい?」

「ええ、構いませんわ」

「それじゃあ「ふおおおおおおおおお!!!!!」


 わたくしとフィーネは驚いて声の主であるララを見る。


 彼女はいつの間にかキッチンにいて徹底的に調べている。

 左から順番に調べて一つ一つについて叫んでいた。


「この火力は本当にヒートマグマプレート!? それが8個も!? どうしよう! 何作ろう! 作りたいものがいっぱいある! この火力ならドラゴンステーキだって焼けるし、急激な温度変化の料理だって作れる! ああ、このカウンターも広いし……手触りも最高だし、無敵すぎる。これに勝てるキッチンなどない……。ああ、シンクとか、このサイズ……なんでも洗える……水もこれ……どうなってるの? マーレがいなくても出るんだけど……? この収納は拡張の付与魔法が付与されてる!? すごい……しゅごいよぉ。このキッチンわたしが使っていいってほんと……?」


 ララがキッチンを抱きしめるように過去一饒舌じょうぜつに喋っている。


「ララ、もし使いにくいことがありましたらおっしゃってくださいまし。それと、使い方に関しては「分かる。分らなかったら聞く。でも、今はご飯を作りたい。いい?」


 ララの目がちょっとガンギまっているようで、ちょっと……怖い。

 でも、顔の周囲にはキラキラした何かが舞っているから嬉しいのだとは思うけど……。


「ええ、好きなだけ作ってくださいまし」

「ありがとうー!!!!」


 過去一元気な声を出して、調理器具を取り出し始めている。


「ララ、なんの食材を出せばいいー?」

「マーレ、まずは……」


 と、マーレはいつの間にか近くに来ていて、ララの食材を渡していた。


 わたくしはフィーネの元に戻る。


「それではお風呂を見に行きますか」

「そうね、今は近づかない方がよさそうだし」

「ええ」


 ということで、わたくしたちはお風呂場に行く。

 当然靴を脱いで素足でだ。


「すごーい! めっちゃ綺麗! っていうかこれ1日で作ったの!? 嘘でしょう!? すご……これ……大理石? よくこんなに集められたわね。こっちはアクアピュアウッド? すごーい。ありふれた素材だけど加工がいいのかな? 手触りとかやばいんだけど!?」

「ふふ、そう言っていただけるととても嬉しいですわ」

「でも、あの壁際にあるのはなに?」

「ああ、あれはシャワーですわ」

「シャワー?」


 フィーネが首をかしげながらなんだろうと近づいていく。


 それからホースを色々と触ったり、鉄パイプを触ろうとするので、止める。


「フィーネ。止めて下さい。温度は大丈夫だと思いますが、まだ確認していませんので」

「そうなの? ならやめておくわね」

「ええ、それから、ちょっとやってみますわね」


 ということで、わたくしは早速お湯を張るようにする。

 それから手袋を外し、お湯を手で触って確かめる。


「アッツいですわぁ!?」

「クレア!? 大丈夫!?」

「え、ええ、ちょっと……ビックリしてしまいました」

「ポーションある? とってくるわね」

「大丈夫ですわ。身体強化の魔法を使っていたので問題ありません。ただ……この温度は……普通に入れませんわよねぇ……」


 お湯がちゃんと浴槽に注がれてはいるが、その熱は触れないほどに熱い。


「これは……ちょっと修正をしないといけませんわね」


 皆が来てから風呂を入れようとしていたのだけれど、それが仇になってしまった。


「ちょっと待って」

「フィーネ?」

「多分だけど、今なら大丈夫そうよ」


 フィーネはそう言って手をお湯に伸ばす。


「フィーネ!?」

「うん。大丈夫」

「フィーネ?」


 彼女はお湯を触っていたけれど、手を引っ込めるようなことはない。


「多分だけど、最初のお湯だけはずっと温められていたから熱いとかあったんじゃない?」

「なるほど……」


 わたくしも触ってみたけれど、ちょっと熱い程度のお湯だった。


「ね?」


 と、フィーネは柔らかい笑顔で聞く。


「ええ、そうですわね……ありがとうございますわ」


 わたくしも彼女につられて笑顔になりそうになるけれど、フィーネがその笑顔のまま聞いてくる。


「ねえ、シャワーってさ。立ってするものなのよね?」

「いえ? イスに座ってやることの方が多いですわ」

「そのイスってどこ?」

「………………」


 わたくしは周囲を見回す。


 ここには浴場としての風呂場とシャワーの機器しかない。


「忘れていましたわ」

「まーそうでしょうね。でも良かった」

「良かった……ですか?」

「ええ、これだけしてくれたのに、あたしが何もしないのはちょっとね。イスのデザイン等は任せてよ。ララがご飯を作っている間にやろ」

「はい!」


 ということで、わたくしたちはテーブルに戻る。


「ふおおおおおお!!! すごい! この火力すごいよおおお!!!」

「ララ! すごいよ! 調理の神様が宿ってるよ!」


 と、なんだかテンションがやばい方は見ないようにしてテーブルについて設計をする。


「高さはどれくらいなの?」

「ほとんど座るくらい腰をかける程度ですわ」

「じゃああんまり大きくないのね。それなら……こういう感じで作るのはどう?」

「いいですわね。でも、こっちの方が実用的ではありませんこと?」

「えーでも、やっぱり見た目的にはさー」


 と、色々と話している間に、ララが来た。


「料理出来た! いっぱい作ったから食べて!」

「すごいよー! 今回のはもう匂いだけでたまらないんだよ!」


 2人は両手に料理の乗った大きな皿を持っていた。


「やっとか」


 自分の席で丸まっていたティエラが起きてきて、宴が……始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る