第18話 自宅造り
「という訳で戻ってきましたわ!」
「お帰り~」
わたくしは手工業ギルドを出た後、お肉を『土小人のかまど亭』の人にお願いしてから来た。
出来るまで時間がかかると言われたので、お肉だけ預けたのだ。
「それにしても……かなりやって下さいましたわね……」
「軽くだよ~」
わたくしたちが購入した土地はマーレによって基礎がなされ、30cmほど下がっていた。
基礎……とは、建物を建てた後に、建物の重さで地面が沈まないようにするための作業のことだ。
現代でやろうとしたら、高い所から重たい物を落として地面を強く踏み固めることになる。
「ここまでやってくださるとは……ちょうどいいですわね! ロックゴリラの石も結構大きいですし、ちょうど見えるくらいになると思いますわ!」
「お、本当? それは良かった」
「ありがとうございますわ。ということで、早速家を建てて行きますわよ!」
「おー!」
「お~」
ということで、わたくしたちのお家作りが始まったのですわ。
と言っても、拡張性を出すために、本格的に作るということはしません。
まずは基礎の上に均等になるようにロックゴリラの石を並べていきます。
その上に家になるような物を作って行くのです。
まずは木を加工し、軸になる骨組みを作って石の上に置きます。
骨組みの外側の方に木の板を打ち付けていきます。
その全周を終えた後に、その外が壊れてもいいように、板壁という屋根のような斜めの木の板を打ち付けていきます。
後は家の中に戻り、梁をかけてその上に木の板を並べて行きます。
そして、その木が風で飛ばされないようにロープと石で固定して完成になりますわ。
「完成ですわ~!」
「すご……結構簡単だとしても、1日で作っちゃったよ」
「流石クレアだ! こんな簡単に家を作れるなんてな!」
「異世界の知識を使ったり、結構簡単な作り方をしたので。ちょっと寒さ対策に問題ありなのと、家の中の家具は何も作れていないのが問題ですわ」
「そんなのは後でいいぞ! 俺が居ればそれだけで温かいからな!」
「ありがとうございますわ。ティエラ」
そう言ってわたくしを励ましてくれるティエラを撫でる。
彼は彼でとても嬉しそうにしていた。
「さて、時間も遅いので、ご飯にしましょう」
「ほんとだ、結構一生懸命作っちゃったから、日も落ちてるからね」
「ですわ」
マーレの言葉に答えて、わたくしたちは『土小人のかまど亭』に向かう。
「お昼も食べてないから食べるぞー! あ、でもお金が……」
「それは大丈夫ですわ。多分、マーレが食べる分くらいはあると思います」
「何か狩ってきたの?」
「それはついてからのお楽しみですわ!」
「それは楽しみ」
わたくしたちが『土小人のかまど亭』に行くと、ほぼ満席だった。
「これは……入れるのでしょうか……」
わたくしたちが入り口で立ち尽くしていると、元気な方のドワーフ少女が来てくれた。
「お! アンタたちやっと来たんだね! さ! こっちにおいで! あんたが持ってきてくれた分を調理してあるんだからね!」
「本当ですの!?」
「当然だろう!? いいからこっち来な!」
「ありがとうございますわ!」
ということで、わたくしたちの席があったようなので、案内して貰って座る。
「メニューは……」
「ああ! それなら調理してあるから! それ食って足りなかったら言ってよ! それと、契約通り肉の4分の1はこっちで貰うけど、それで問題ないね?」
「はい。それで問題ありません」
「よし! じゃあちょっと待っといてくれ!」
そう豪快に笑った彼女は、キッチンに下がっていく。
それから少しして、元気な子が静かなドワーフの子と一緒にロックゴリラの丸焼きを持ってきた。
契約通り4分の1がないけれど、それでもその姿は壮観だ。
マーレは堪らず席から立ち上がっていた。
「すごい! これ本当に食べてもいいの!?」
「もちろんですわ! がんばってくれたので、美味しく食べれると思いますわ」
「ありがとう! クレア最高だよ! 早く早く!」
マーレが今にもかぶりつきそうな目で丸焼きを凝視している。
「それでは楽しんでいってね! 味付けは半分くらいで変えてるから、色々と食べてみてね!」
「ありがとうございますわ!」
「ありがとう!」
「助かる」
わたくしたちの言葉に、ドワーフの2人は頭を下げる。
「ごゆっくり~!」
「ごゆっくり」
そう言って、2人はキッチンへと下がっていく。
「それでは食べましょうか」
「うん!」
「ああ」
ということで、わたくしたちはロックゴリラの丸焼きを食べ始める。
味の種類は塩をメインにして、香辛料をほんのり使ったシンプルな味付けだ。
だけどこのシンプルさがとてもいい。
肉本来の味を引き立たせ、食べた側から次の肉を食べたくなってくる。
「から! 辛い! 辛いぞこれは!」
「ティエラ、水ですわ」
「助かる!」
わたくしは水の入ったジョッキをティエラに差し出すと、彼はジョッキの中に頭を入れて水を舐め始めた。
「それでは、わたくしもその辛い部分というのを……」
わたくしは見るからに辛そうな肉の部分を切り取って食べる。
「ンンンン! これは確かに辛いですわ! ですが、それが美味しいのですわ!」
ティエラが叫ぶほどに辛い。
それは間違いない。
けれど、この辛さが病みつきになる。
この辛みの中に、うま味が凝縮されていて、噛めば噛むほど
噛めば噛むほどうま味が出てくるが、それと同時に辛みも出てくる。
この辛みがうま味と交じり合い、食べる手が止まらなくなってしまう。
「美味しすぎますわ。ロックゴリラ……また狩りに行った方がいいかもしれませんわね……」
「うん! 僕も狩ってくるよ! これだけ美味しいなら養殖した方がいいかもしれない!」
「それは流石に問題だと思いますが」
そんなことを話しながら、わたくしたちはロックゴリラを食べ続けた。
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