第31話 フィーネと遊びに行こう
フィーネさんから素晴らしいドレスをいただいた翌日。
わたくしは再び『森妖精の羽衣』に来ていた。
「昨日きたばかりじゃないのか?」
そう言ってくるのは、隣を歩いているティエラだ。
ちなみに、マーレは家でゴロンとしている。
「ええ、ですが、フィーネさんが今日は休みらしく、一緒に遊びたいと言ってくださったのですわ!」
「ほう」
「これはもう行くしかありません!」
実はあの後、帰る途中にチラッと寄ったのだ。
どうしているかなーと軽い気持ちで覗いたら見つかり先ほどの話をされた。
というわけで、『森妖精の羽衣』を通りすぎて、少し歩く。
そこから5分ほどした所にある宿が、フィーネさんが指定した場所だ。
近づくと、フィーネさんが宿の前に立っているのが見えた。
「フィーネさん!」
わたくしは遠くから声をかけると、彼女も気づいたのか走ってくる。
「クレア! 遅いわよ!」
「申し訳ありませんわ」
「ううん。本当は遅れてないんだけどね。それで、行きたいところあるんだけどいい?」
「もちろんです。というか、この街のことを知らないので、少し教えて欲しいですわ」
「いいわよ! カレドニアを楽しませてあげるんだから! ……と、その前に」
フィーネさんはそう言ってから、ティエラに向きなおる。
「初めまして……っていう訳ではないけど、話すのは初めてよね? あたしはフィーネ。よろしく」
「ほう。意外と礼儀正しいな。俺はティエラ。クレアの従魔……だが、お前にならいいだろう。家族のようなものだ」
「なるほど、確かに距離感とか家族っぽいよね。いつも一緒にいるし」
「ああ、俺はクレアの兄のようなものだ」
そういうティエラをわたくしは止める。
「何を言ってるんですの? わたくしが姉ですわ」
「何? 寝る時は俺の側でないと寝られない小娘が何を言う」
「わたくしが隠れただけで泣きそうな声でわたくしを探していた子犬様はどの口が言うのですか?」
「……」
「……」
わたくしとティエラはお互いに黙ったまま向き合う。
そんなわたくしたちを、フィーネさんは笑った。
「あはは、二人ってそんな関係だったのね。とても仲がいい」
「「仲良くない(ですわ)!」」
「ほら、タイミングまでバッチリじゃない。ふふ」
フィーネさんは身を屈めて、細い指で目元を拭っている。
「……それで、フィーネさん。どこに行くんですの?」
「だな、この街のことをもうちょっと知りたいと思っていたところだ」
利害の一致……ということだ。
どちらが上かという話はよくない。
「そう。それはそれでいいかしらね。じゃあ、早速行こう?」
フィーネさんはそう言って歩きだすので、わたくしは彼女の隣に並び、その隣にティエラが並ぶ。
「それでね。今日は……中央通りに行こうかなって」
「中央広場?」
「そう、そこには色んな服飾店があって、クレアに似合う装飾品もあるんじゃないかなって」
「なるほど。フィーネさんは結構行くんですか?」
「え? いや、実はあんまり行ったことないんだけどね」
「そうなんですの?」
わたくしがそう言うと、フィーネさんは少し恥ずかしそうに頬をかく。
「いやー実はあたしが最高の服を作るんだーって家にこもってて、あんまり他の服の勉強とかしてなかったのよね」
「こんな素敵な服を作っていらっしゃるのにですか!?」
わたくしは昨日もらったドレスを着ている。
すれ違う人は結構な確立でわたくしのドレスを見ていた。
「ありがとう……でも、あたしはもっと勉強をしないといけないなって思ったの」
「素晴らしいですわ。フィーネさんはそれ以上の腕になろうとは……」
「あなたほどすごくはないわよ。と、ついた!」
到着した場所は服飾店ばかりが並んでいる店通りだった。
「とっても素敵ですわ! すごいですわ! 帽子専門店とか初めて見ました! あっちはアクセサリー専門店! あっちは銀製品専門店! これは楽しみですわ!」
王都にもあったのかもしれないが、わたくしはそういう所にいくことはなかった。
というか、そんなお金はなかった。
でも、
「今なら……今なら色んなアクセサリーを買うお金がありますわ……」
何を買ってやろうか。
そう楽しみな気持ちを持ったまま、フィーネさんとティエラと一緒に、店を色々と見て回った。
お昼ご飯を食べながら、わたくしたちは先ほどの成果を話す。
といっても……。
「クレア……あなた、なんで何も買わなかった訳?」
「値段が……値段が高くて買えなかったのですわ……」
「もうお金使っちゃったの? 仕事終わったばかりじゃないの?」
「いえ……お金を使う生活をあんまりしてこなかったので……」
ティエラやマーレがお腹減ったということであれば、支払うことにためらいはない。
でも、自分を着飾るためのアクセサリーなどはどうしても手が止まってしまう。
このお金があれば没落しなかったのではないかと、心のどこかで思ってしまう。
それに、なにかあった時のために、お金を貯めておいた方がいいのでは……と。
「そっか……それなら、もっと一緒に遊びに出て、買っても問題ないって思わせてあげるわ」
「……ありがとうございます」
「いいのよ。だけど今日は……ちょっと……行きたい所があるんだけど、いい?」
「もちろんですわ。どこですの?」
「あたし、クレアの家に行ってみたいな」
「わたくしの家ですの!?」
突然すぎて、驚きで跳び上がるところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます