第54話 アクアピュアウッド
すみません。
まだ頭痛がひどいので、投稿は水曜日になります。
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「それでは早速素材を取りに行きましょうか」
わたくしたちは、カレドニアから北に5キロくらいの場所に来ていた。
周囲は海岸と森に挟まれた場所で、イメージとしては東南アジアの水と森が交じり合っている場所、というイメージだろうか。
ちなみにメンバーはわたくしとティエラ、そしてマーレである。
「まずはフィーネのお風呂の材料だっけ?」
「ええ、フィーネが木材にも詳しく、この近辺にあるアクアピュアウッドというのがあるそうです」
「それはどんな効果があるの? 美味しい?」
「マーレ、美味しくありませんわ。これは水分を多量に含むので水の耐性があり、自浄作用があるらしいのですわ」
「そっか……ならのんびり見つけようか」
と、食べ物の話でなくなると露骨にやる気がなくなった。
まぁ、それがマーレらしいと言えばマーレらしいけれど。
「マーレはここで待っていますか?」
「そうしてもいい?」
「ええ、ですが、その次は海の中に行くので、その時はお願いしますね」
「分かったよー」
わたくしはティエラの方を向いて話す。
「それではティエラ。一緒に探しにいきましょう」
「わかったが、なにか特徴はないのか?」
「もちろん! 買った図鑑にしっかりと書いてありますわ!」
わたくしは【倉庫】に入れてあった大全を取り出し、そのページを開く。
高さは5~10mほどで結構大きくなる。
アクア……というだけあって、マングローブのように水中に根をはり、その木材がかなり有用になるとのことだ。
見た目は白い大きなマングローブ、という感じだろうか。
「なるほど、それでは探すか」
「ええ、でも……濡れてしまうのは……よろしくありませんわね」
マングローブは海水に半分浸かっている。
そのためのドレスを持っていないので、どうしようか……。
「それに関しては俺がなんとかしよう」
「できますの?」
「任せろ。それくらいはやってみせる」
「よろしくお願いしますわ」
「『
ということで、ティエラが魔法を使い、森の方へと土の道を作ってくれる。
「これを歩いていくんですのね」
「ああ、問題はないだろう?」
「ええ、流石ティエラですわ」
「ふん。さっさと探すぞ」
「行きましょうか」
ということで、わたくしたちが足を出す部分だけ土が盛り上がる。
なので、それを進む。
道中はわたくしとティエラは適当な話をのんびりとする。
「それにしても、風呂とはそこまでいい物か? 屋敷にいた時にはあまりいい思い出がないが」
ティエラはわたくしたちが王都にいた時のことを言っているのだろう。
王都の屋敷の風呂は確かにそこまでいいものではなかった。
「あれは……確かにティエラが入るには小さいと思いますわ。ですが、今度作るのは満足させてみせます」
「本当か……?」
「ええ、毎日入って洗って欲しいとお願いしてくると思いますわ」
「……絶対に言わん。というか、そんなすごい物を作れるのか?」
「できますわ。【ハウスメーカー】様様ですの」
このスキルのおかげでこんなにも簡単に建物が作れるのは素晴らしい。
「それで、その目的のアクアピュアウッドは見つけたのか?」
そう言われてわたくしは周囲を見ると、白い木々が水中から立ち上がっていた。
「これですわね」
「何? 道中にいくらでもあったが……というか、これだと2mくらいしかないのではないか?」
わたくしたちの目の前には、水面から高さ2mくらいの白い木があった。
「水中も含めての長さになっていると思いますわ」
「ああ、なるほど、それもそうか。それで、どうやって採るんだ?」
「そうですわねぇ」
アクアピュアウッドはわたくしが抱えても手が回り切らないくらいに太い。
水中にある根っこもマングローブとは違って1本1本が結構太い。
木材に利用できそうな感じではあるが、その分、掘り起こすのも大変そうだ。
「こういう時は……よっと」
わたくしはティエラの魔法でせり上がった土とアクアピュアウッドにそれぞれ片足を乗せる。
そして、【倉庫】からティエラに作ってもらった鉄斧を取り出す。
「おっと、ちゃんと使っておきませんとね。『
身体を強化して斧を振りかぶって木に叩きつける」
「ですわ!」
スコン!
木を両断して、水中に落ちる前に手で触れて【倉庫】にしまう。
「力技じゃないか……」
「これが早いのですからいいのですわ。それに、次はもっと力技でしてよ」
「?」
わたくしは【倉庫】から頑丈なロープを取り出し、それを水中に埋まっている根っこに通した。
「それをどうするんだ?」
「これの両端を持って……」
わたくしはせり上がった土の上に戻り、全力で引く。
「ふんぬらばーですわ!」
ビン!
ロープが今にも千切れそうになるほど張られ、わたくしはそれを力の限り引っ張る。
「力技にもほどがあるだろ……」
「どっせい……ですわぁ!」
ズボボボボボボ!
と、水中の泥をかき分けて根っこが持ちあがってくる。
「きっかけさえ起きれば後は……簡単ですわ!」
更に引っ張り、土の上に出す。
それを【倉庫】に入れる。
「ふぅ、意外と簡単でしたわね。水中だからやりやすいのかしら?」
「いや……それは……ばかちか……まぁ、いい。何本いるのだ?」
「そうですねぇ。取り敢えずあと30本。引っこ抜いて起きましょうか」
「分かった」
ということで、わたくしたちは目の前に広がるアクアピュアウッドを30本ほど伐採した。
これでフィーネが求めるお風呂は作れるだろう。
わたくしたちはマーレの元に戻る。
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