第12話 手工業ギルド

「さて、それではここに住むのはいいのですが、色々と決めないといけないことですわね」


 わたくしの言葉に、ティエラが聞いてくる。


「服?」

「そんなシエロみたいな。服は後で構いません。まぁ……確かにこの服は目立つかもしれませんが、わたくしは優雅な令嬢ですから! この格好は譲れません!」

「そ、そうか……」

「なら、ご飯かな?」


 今度はマーレが聞いてくるので、わたくしは首を横に振る。


「それも大事ですが、先に宿と働き口を考えて行きませんと」

「それもそっか。でも、どうするの? 優雅な仕事なんてあるかな?」

「ですわよねぇ……まぁ、その辺りもギルドに行って相談してみましょう」

「ギルド?」


 ティエラ疑問に、わたくしは答える。


「ええ、こういう時は手工業ギルドに行って、相談をするのがいいらしいですわ」


 異世界の知識によると大抵商業ギルドだけれど、わたくしは家を建てるので少し違う。


「そうなんだ。でも確かにいいかもね。建築するにしても、誰かの下につくのか、それともクレア自身が商会を起こすのか。どうするの?」

「そうですわねぇ……」


 わたくしはそう言われて、一人考える。


 すると、異世界の知識……というか、異世界のとても暗い記憶が流れ込んでくる。

 ブラックな上司のせいで、日々すり減っていく……う、頭が。


「……自分で商会を起こすことにしたいですわ。誰かの下につくのはちょっと当たり外れが怖すぎます。一緒にやってくれる仲間が見つかればいいのですが」

「俺たちは?」

「最初から勘定に入っていますわよ」

「ならよし」


 当然だ。

 彼らは家族、最初から一緒にいると決まっている。


「では手工業ギルドに行ってみましょう」

「ああ」

「うん」


 ということで、わたくしたちは手工業ギルドに行くことになりました。



 手工業ギルドはとても大きな建物で、5階建てのレンガと木で作られた建物だった。

 1,2階はレンガ作りで3階以上は木で作られている。

 後から補強されたような感じだろうか?


 中はとても広く、受付が10人も並んでいるのに結構まだ空きがある。

 それに、それぞれに何人かが並んでいて、わたくしたちも一番空いている所に並ぶ。

 並んでいる人はぱっと見、料理人だったり、仕立て職人だったり、大工だったりといった見た目の人たちだ。


「すごく綺麗ですわね。手入れが行き届いていますわ」

「のびのびと出来そうだな」

「美味しいご飯とかないかな」


 そんなことを話して待っていると、わたくしたちの番になった。


「それでは、次の方どうぞー」


 わたくしたちが進むと、そこに居た受付のお姉さんは猫獣人のお姉さんだった。

 獣人の中でも獣成分が強い方で、顔もかなり猫よりのモフモフしたくなる人だ。

 制服をきっちりとしていて、とても優しい表情で笑いかけてくれる。


「あの、相談があるのですが」

「はい。どの様な内容でしょうか?」

「はい。新しい建築関係の商会を作りたいと思っているのですが、可能でしょうか?」

「それは……もちろん可能ですよ。カレドニアは多くの方を募集していますから。それでは商会を作る際の説明をさせていただきますね」

「よろしくお願いしますわ!」


 わたくしの返事に受付のお姉さんは頷いて紙をみせてくる。


 ティエラはわたくしの隣にきて、興味深そうに見始めた。

 代わりにマーレは座り込んでこっくりこっくりしている。


「それでは失礼して」


 それから、彼女の言う事の中で、わたくしに関係のあったことを自分の中でまとめる。


 手工業ギルドは大工だったり、仕立て職人だったり、料理人だったり、それぞれだけではとても弱い人たちの集まりである。

 なので、団結して強い組織を作ろうという目的で設立された。

 それらは職業ごとに貴賤きせんはなく、平等に扱われる。

 新しい商会を建てたりする際は支援をするけれど、当然対価は要求されるし、時にはお願いをされるかもしれないと。

 ランクに別れていて、下から五級、四級、三級、二級、一級、特級となっている。

 とりあえず、この手工業ギルドに加入するのに100レアードが必要だという。

 多少お金はかかるけれど、それだけで仕事の斡旋をしてくれたり、このギルドの施設を使える様になったりするので、結構お得ではあるそう。

 自分で店を開くには、その上の四級になる必要がある。

 これには1000レアードが必要なり、結構な金額を求められる。

 それ以上の級は金額だけでなく、貢献度やその他の要素もあるので一概には言えないらしい。


「では、とりあえず、1000レアードをお支払いする必要があるということですわね?」


 わたくしが聞くと、獣人のお姉さんは苦笑いをして答えてくれる。


「それでも結構なのですが、土地や……建物を建てる際の費用のことも考えておく必要もありますので、問題ないでしょうか?」

「土地……それも紹介していただけるのでしょうか?」

「はい。ではそちらのご案内もいたしますね。実際の土地や建物と金額などを見た方いいと思いますし」

「いいんですの?」

「ええ、私もちょっと出たかったので。それでは、一緒に見て回りましょうか」

「ありがとうございますわ!」


 わたくしたちはとても優しい受付さんに出会えたかもしれない。

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